バッテリーを特殊な溶液に浸すだけで容量が95%回復、電極を「修理」する新技術が登場

電気自動車などで使われたリチウムイオンバッテリーの電極を特殊な溶液に浸すだけで最大95%の容量を回復させる手法を、コーネル大学などの研究チームが開発しました。バッテリーを溶かしたり粉砕したりせず、電極の形を保ったまま再生できるため、従来のリサイクル工程と比べて再生セルの製造コストを56%削減できる可能性があるとのことです。
Direct electrode-to-electrode regeneration of end-of-life batteries via electrode–electrolyte interphase dissolution - Energy & Environmental Science (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2026/ee/d6ee01118g
Battery 'bath' restores spent lithium-ion cells to 95% power, cuts recycling costs 56%
https://techxplore.com/news/2026-06-battery-spent-lithium-ion-cells.html
スマートフォンを何年も使うと充電の減りが早くなり、電気自動車も長く使うほど1回の充電で走れる距離が短くなります。リチウムイオンバッテリーは充放電を繰り返すうちに性能が低下し、やがて交換や廃棄が必要になりますが、バッテリーにはリチウム、ニッケル、コバルトといった重要な鉱物資源が使われているため、使い終わったバッテリーをどう再利用するかが大きな課題になっています。
従来のリサイクルでは、バッテリーを高温で溶かしたり、粉砕してから薬品で金属を取り出したりする方法が一般的でした。貴重な金属を回収できる一方で、電極という部品の形は失われます。つまり再利用するには材料を取り出し、精製し、電極として作り直す必要があり、時間もコストもかかるというわけです。
研究チームが開発した「Direct Electrode-to-Electrode Regeneration(DEER)」は、使い終わったバッテリーから電極を取り出し、集電体と呼ばれる金属箔に付いた状態のまま特殊な電気化学溶液に入れて再生する方法です。バッテリーを材料まで戻すのではなく、劣化した電極を部品として直す点が特徴です。

リチウムイオンバッテリーの充放電を繰り返すと、電極と電解液の境目にSEIと呼ばれる膜が形成され、このSEIが厚くなるとリチウムイオンの動きが妨げられて容量や出力が低下します。そこで、DEERでは1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)という溶媒を使い、厚くなったSEIを取り除きます。
DEERで処理した電極を使った再生セルは最大95%の容量を回復し、充放電を繰り返した際の安定性も改善されたとのこと。さらに研究チームは分析ツールを使って経済性を調べ、従来型のリサイクル工程と比べて再生セルの製造コストを56%削減できる可能性があると示しました。
ただし、DEERがすべての古いバッテリーを新品同然によみがえらせるわけではありません。研究チームが対象にしているのは、主に電気自動車用途で一般的な70%から80%程度の健全性を保った使用済みバッテリーです。今後は産業用バッテリーでの実証や、リチウム損失など別の劣化要因への対応が課題になるとのこと。使い終わったバッテリーを材料まで戻すのではなく、部品のまま直して再び使うリサイクルが実用化に近づいていると研究チームは述べています。
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