2つの表面間の摩擦が事実上ゼロになる「超潤滑」状態を肉眼スケールで実現することに成功

互いに接している2つの固体表面ではそれらの相対運動を妨げる摩擦力が働きますが、この摩擦がほぼゼロになることを構造的超潤滑(structural superlubricity)と呼びます。これまで、構造的超潤滑は肉眼で見えないマイクロスケールおよびナノスケールでしか確認されていませんでしたが、中国の研究チームが肉眼スケールで構造的超潤滑を実現することに成功しました。
Physical Review Letters - Accepted Paper: Observation of robust macroscale structural superlubricity
https://journals.aps.org/prl/accepted/10.1103/bv6j-q22p

Physicists achieve near-zero friction on macroscopic scales
https://phys.org/news/2026-02-physicists-friction-macroscopic-scales.html
2つの物体が接していたりこすり合わせたりした時、物体表面の粗さによって必然的に摩擦力が生じます。しかし2004年、2つのグラファイトの表面における分子構造を回転させることで、摩擦を事実上除去できるとの研究結果が発表されました。
構造的超潤滑は物質同士がこすれ合う時の摩擦を排除するため、廃熱として失われるエネルギーを削減でき、機械部品の摩耗を抑えることが可能です。そのため、工学分野では構造的超潤滑の実現が待望されていますが、長らく構造的超潤滑は肉眼で見えないスケールでしか確認されてきませんでした。
肉眼スケールで構造的超潤滑を実現するのが難しい理由としては、物体表面の弾性や分子構造における欠陥などに加え、「実際のグラファイトの表面が単結晶構造になっていない」という点が挙げられます。
グラファイトの表面は細かな粒子に分割されており、個々の粒子内部には整然とした構造を有しているものの、粒子同士の相対的な方向はランダムです。個々の粒子サイズは数十μmに制限されているため、それより大きなスケールでの構造的超潤滑を観測するのは難しいというわけです。

by James St. John
今回、中国の清花大学で工学教授を務めるクァンシュイ・チェン氏が率いる研究チームは、連続エピタキシー法という手法でmmサイズの粒子を含む単結晶グラファイト膜を形成してこの問題に取り組みました。
研究チームは連続エピタキシー法と慎重な積層手法を組み合わせることで、グラファイト膜の方向をより正確に制御したとのこと。論文共著者のデリ・ペン氏は、「このアプローチにより、マクロスケールの領域において原子間の密接な接触を維持する、1mm未満のスケールでほぼ欠陥のない界面の構築が可能になりました。その結果、構造的超潤滑を観察するための従来の実験システムを制約していたスケーリングの障壁を克服することができました」と述べています。
実験の結果、研究チームは初めて肉眼スケールで構造的超潤滑を観察することに成功しました。構造的超潤滑状態では、上面にさまざまな重量物を乗せても実質的に摩擦はゼロのままであり、いくつかのケースでは加重が増えるにつれて抵抗力が減少する「負の摩擦」さえ観察できたと報告されています。
研究チームが想定した最も極端な条件では、表面上に立つ「成体のゾウ」でさえ卵2個分の重さ、あるいは微風程度の力で動く可能性があると推定されるとのことです。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Successfully achieves 'super-lubricity' ….







