サイエンス

fMRIで用いられている信号増加の約40%は実際の脳活動と一致していないとの研究結果


機能的磁気共鳴画像法(fMRI)は、脳の神経活動を直接測定するのではなく、血中酸素化レベルに依存した信号(blood oxygenation level-dependent信号、BOLD信号)を検出することで、神経活動が活発な部位を特定する方法です。fMRIはさまざまな研究で活用されていますが、新たな研究では、fMRIのBOLD信号の約40%は実際の脳活動と一致していないとの結果が報告されました。

BOLD signal changes can oppose oxygen metabolism across the human cortex | Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-025-02132-9


40 percent of MRI signals misinterpreted - TUM
https://www.tum.de/en/news-and-events/all-news/press-releases/details/40-percent-of-mri-signals-do-not-correspond-to-actual-brain-activity

BOLD信号に基づいて神経活動を測定するfMRIは、「神経細胞が活発化すると酸素の需要が増加し、それに対応するため局所的に血流が増加する」という仮定に基づいています。しかし、この仮定が人間の大脳皮質全体で一貫しているかどうかはよくわかっていないとのこと。


そこで、ドイツのミュンヘン工科大学(TUM)フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(FAU)の研究チームは、40人以上の健康な被験者を対象に実験を行いました。

被験者らは暗算や自伝的記憶の想起など、脳のさまざまな領域で予測可能なBOLD信号の変化を引き起こすことが知られているタスクを行いました。その間に研究チームは新しい定量的fMRI技術を用いて、被験者の脳における実際の酸素消費量を測定しました。


実験では、タスクと脳の領域によってさまざまな結果が出たそうで、たとえば計算に関わる脳領域における酸素消費量の増加は、期待される血流の増加とは一致しませんでした。全体的には約40%のケースで、BOLD信号の増加が脳活動の低下と関連しており、同様に脳活動が高まった部位でBOLD信号の低下がみられたと報告されています。

BOLD信号と脳活動の不一致がみられた領域では、血液供給量は変化していませんでした。しかし、血液からより多くの酸素を取り出すことで、追加のエネルギー需要を満たしていたとのことです。

論文の筆頭著者であるFAUのサミラ・エップ博士は、「これは、『脳活動の高まりは常に酸素需要の増加に対応するために、血流の増加を伴う』という長年の仮説に反するものです。世界中で数万件ものfMRI研究がこの仮説に基づいているため、私たちの結果は多くの研究において逆の解釈につながる可能性があります」とコメントしています。

論文の共著者であるFAUのヴァレンティン・リードル教授は、「うつ病からアルツハイマー病に至るまで、精神疾患や神経疾患に関する多くのfMRI研究では、血流の変化を神経細胞の過小活性化または過剰活性化の信頼できる指標として解釈しています。こうした測定法の有効性が限定的であることを踏まえ、これらの研究は再評価される必要があります。特に、加齢や血管疾患などによる血管の変化を有する患者群においては、測定値は神経細胞の機能障害ではなく、むしろ血管系の差異を反映しているかもしれません」と述べました。


この研究はソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも話題となっています。前職でブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の研究を行っていたというユーザーは、神経信号の測定分野においては信号雑音比(SN比)がひどく、多くの論文の結果は再現不可能だったと述べています。

My previous job was at a startup doing BMI, for research. For the first time I h... | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=46289089

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
脳活動をfMRIによって測定する従来の方法に問題があるとの指摘 - GIGAZINE

MRI(核磁気共鳴画像法)のソフトウェアにバグ、直近1年の研究結果などが全て無効に - GIGAZINE

画像生成AI「Stable Diffusion」でfMRIによる脳活動のデータから画像を生成する研究を阪大の研究者が発表 - GIGAZINE

AIチャットボットを使っている人間は脳活動が大幅に低下することが判明 - GIGAZINE

「なるほど!」と思う瞬間「ひらめき」を生み出す脳の仕組みとひらめきが記憶に残る理由とは - GIGAZINE

思春期の脳は「破壊モード」により大人の脳へと変化する - GIGAZINE

脳で神経信号がどのように流れているのかを世界に3台しかないMRIスキャナーで撮影するとこうなる - GIGAZINE

「セックスする男女をMRIで撮影する」という偉業はどのようにして成し遂げられたのか? - GIGAZINE

世界で初めて医療現場で使われたMRIスキャナー「Mark-1」 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article Research results show that about 40% of ….