「地球の熱と宇宙の冷たさ」を利用して発電するシステムが開発される

アメリカのカリフォルニア大学デービス校の研究チームが、地球の温かさと宇宙の冷たさの温度差を利用して発電するシステムを開発しました。このシステムは温室やその他の建物の換気などに利用できる可能性もあるとのことです。
Mechanical power generation using Earth’s ambient radiation | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adw6833

Mechanical Power by Linking Earth’s Warmth to Space | College of Engineering
https://engineering.ucdavis.edu/news/mechanical-power-linking-earths-warmth-space
研究チームが考案した地球の温かさと宇宙の冷たさを利用した発電システムは、スターリングエンジンの機構を用いたものとなっています。スターリングエンジンはシリンダー内のガスを外部から加熱/冷却し、その体積変化によってエネルギーを得る外燃機関です。
自動車に積載されるエンジンなどの内燃機関は、ガソリンなどの燃料を燃やすことで非常に大きな熱勾配を生み出し、これをエネルギーとして取り出しています。一方、スターリングエンジンは「熱くなったコーヒーカップとその周囲の温度差」といった、非常に小さな熱勾配を利用して動作します。
今回、カリフォルニア大学デービス校の電気コンピューター工学教授であるジェレミー・マンデー氏らの研究チームは、「地球の地表付近の温かさと宇宙の冷たさ」を熱勾配として利用するシステムを考案しました。マンデー氏らのシステムがどのようなものになっているのかは、以下の動画で解説されています。
Ambient Energy Harvesting: UC Davis Engine Uses Earth’s Warmth and Space’s Cold to Make Power - YouTube

人間が普段暮らしている環境では、さまざまな物体がほぼ同じ温度になっているため、スターリングエンジンを使用してエネルギーを生み出すのは困難です。

スターリングエンジンに限らず、エンジンを使って熱を取り出すには、熱い物体と冷たい物体が必要となります。

マンデー氏は、「私たちの周囲には温かいものがあるかもしれませんが、冷たい場所も必要なのです。この温度差がなければなりません」と語ります。

そこで研究チームは、宇宙につながる「夜空」を非常に冷たい場所として活用するシステムを考案しました。

研究チームが考案したシステムは、ピストンで駆動するシンプルなスターリングエンジンを、熱放射アンテナとして機能するパネルの上に設置するというものです。

パネルの底にあるアルミニウム製のマウントを土壌に埋め込むことで、パネルを地面と熱的に結合します。そして、赤外線放射塗料が塗られたパネルの上面からは、放射冷却と同様に電磁波が空に向かって放射されます。

これにより、パネルの上面と下面に温度差が生じ、スターリングエンジンでエネルギーを取り出すことができるというわけです。

マンデー氏は、他の多くのエンジンは「熱いもの」と「冷たいもの」が隣り合っているのに対し、新たなシステムは「地表」と「宇宙」という非常に離れたものをリンクさせている点が異なっていると主張しています。

マンデー氏は、「私たちが取った飛躍は、これらのものが遠く離れていても、それらを放射的に結合できるということです」と述べました。

研究チームがカリフォルニア州の農地で新たなシステムをテストしたところ、夜間は一貫してパネル上面が冷たく、底面が温かい状態が保たれ、熱勾配によってエネルギーを得られることが確認されました。1年にわたる実験では、ほとんどの月でセ氏10度を超える温度差が維持され、1平方メートルあたり400mWを超える機械的動力が生成されたとのことです。

研究チームはこのシステムを用いてファンを動かし、温室や建物内の空気を循環させるといった応用方法を考案しています。

・関連記事
「宇宙の寒さ」から直接エネルギーを生み出す技術が開発される - GIGAZINE
「宇宙に巨大な太陽光発電所を置いて地球に送電する」というアイデアの望みが薄い理由を宇宙産業のエキスパートが解説 - GIGAZINE
従来の5倍もの効率で熱を電気エネルギーに変換する物質が発見される - GIGAZINE
なぜ地熱発電の普及は遅々として進まないのか? - GIGAZINE
スマホの充電が飲み物の熱エネルギーを使っていつでもどこでも可能になる「Epiphany onE Puck」 - GIGAZINE
「スターリングエンジン」とは別の珍しい機構を持つ卓上ミニチュアエンジン「Nano Disc Manson engine」 - GIGAZINE
ロータリー・4ストローク・蒸気機関など21種類のエンジンのGIFアニメーションが見られる「Animated Engines」 - GIGAZINE
最も効率がよく理想的なエンジン「カルノーサイクル」とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in 動画, サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article A system that generates electricity usin….







