メーカーが運航停止を要請したエアバスA320の「強い太陽放射による不具合」の懸念とは?

by Bernal Saborio
2025年11月28日、ヨーロッパの航空機メーカーであるエアバスはジェット旅客機のA320で「強い太陽放射によって飛行制御の機能に重要なデータが破損する可能性がある」として、各航空会社にA320の運航停止を要請しました。
A320 Family precautionary fleet action | Airbus
https://www.airbus.com/en/newsroom/press-releases/2025-11-airbus-update-on-a320-family-precautionary-fleet-action
6,000 Airbus Jets Grounded, Because Nobody Tested for the Sun | flyingpenguin
https://www.flyingpenguin.com/?p=74567
エアバスのプレスリリースによれば、「A320で最近発生した事象の分析により、強い太陽放射によって飛行制御の機能に重要なデータが破損する可能性があることが明らかになりました。その結果、エアバスは、現在運航中のA320の相当数が影響を受ける可能性があると特定しました」と述べています。この「最近発生した事象」とは、2025年10月30日にアメリカの格安航空会社(LCC)であるジェットブルーのA320がパイロットの操作なしに機首を急激に下げ、これにより乗客12名が負傷した事案とされています。
エアバスがThe Guradianに語ったところによれば、影響を受ける6000機のA320のうち、一部の機体ではソフトウェアの修正ではなく時間のかかるハードウェアの修正が必要となったものの、より広範な修正が必要となるのは当初の推定1000機よりは少なかったとのこと。エアバスによる運行停止要請で一部路線が欠航となり、日本でも全日空(ANA)が2025年11月29日に国内線95便を欠航すると発表しており、約1万3200人に影響が出たと報じられました。

by Alan Wilson
セキュリティ企業のダヴィ・オッテンハイマーCEOは自身のブログで、エアバスの述べる「強い太陽放射」による不具合とは、太陽から降り注ぐ宇宙線の影響であると指摘しています。
旅客機が通常巡航する高度1万メートル~1万3000メートルでは、航空機は地上のおよそ100~300倍の宇宙線を浴びることになります。そして、太陽の活動が活発化してフレアが発生すると、照射される宇宙線がさらに爆発的に増加します。この宇宙線が半導体を通過すると、粒子の電荷でメモリや論理回路のビットが反転してしまうことがあります。これがシングルイベントアップセット(SEU)と呼ばれる現象で、半導体デバイスに大きな影響を及ぼします。

by NASA/GSFC/TRACE
SEUによる航空機の不具合は過去にも発生しており、2008年10月にはカンタス航空72便で、西オーストラリア州上空約1万1200メートルを巡航していたエアバスA330が意図しない機首下げを2回行い、乗客119人が負傷しています。オーストラリア運輸安全局(ATSB)の調査により、この事故は宇宙線が航空データ慣性装置(AIDRS)の1つでSEUによるビット反転が原因の1つである可能性が指摘されています。
また、ボーイング737MAXの飛行制御システムをチェックする地上訓練試験では、SEUをシミュレートした結果、ビット反転によって模擬機の制御が失われたと報じられています。
エアバスのアドバイザリーによれば、今回の問題を引き起こした原因は飛行制御コンピューターである「ELAC B」にあるとのこと。ELAC Bは、センサー入力を処理し、操縦翼面の位置を1秒間に何度も計算します。エレベーター偏向コマンドなど、計算の途中でビット反転によって値が破損すると、誤ったまま出力される可能性があります。制御ソフトウェアの最新バージョンであるL104ではこのエラーチェックが行われなかった可能性があると、オッテンハイマーCEOは指摘しています。
欧州航空安全機関(EASA)は2025年11月29日に緊急耐空性改善命令(PDFファイル)を発行し、記事作成時点でELAC BL104をL103+にダウングレードするよう指示しています。
オッテンハイマーCEOは「トランジスタの微細化に伴い、物理学は私たちにとって不利に働いています。IBMの研究者が宇宙線による障害のメカニズムを最初に発表した1979年当時、トランジスタの大きさはマイクロメートル単位で測定されていました。しかし現在、その大きさはナノメートル単位であり、当時の1000分の1のサイズになっています。トランジスタが小さくなればなるほど、ビットを反転させるために必要な電荷量は少なくなります。つまり、1979年当時には無害であった粒子でも、現代のチップではデータを破損させる原因となり得るのです」と述べています。

堅牢性が求められる安全重視のシステムではSEUへの対策として、冗長化や複数のコンピュータによる相互チェック、誤り訂正メモリ、計算値の範囲チェック、そして異常な状態を検知する監視タイマーなどが採用されています。しかし、ソフトウェアの更新によって意図せず防御機能が弱まってしまうなど、これらの防御策に隙が生じた場合、物理的な環境要因が設計者の予期せぬ形で影響を及ぼすことになります。
オッテンハイマーCEOは「今回のエアバスの指令は不便に思えるかもしれませんが、脆弱性を特定し、別の破滅的な結果が起こる前に対処するという点で、安全システムが正常に機能していることを表しています」と述べ、エアバスの対応を肯定的に評価しています。
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