サイエンス

国家が数千年前に初めて出現した本当の理由


約5000年前に初めて「国家」が成立した理由については長らく、「農耕による食料余剰が社会の階層化を促したため」という説明が定説とされてきました。しかし、2025年11月25日に発表された論文では、むしろ国家が先に生まれ、国家が農耕や記録制度の発達を引き起こした可能性が示されました。

State formation across cultures and the role of grain, intensive agriculture, taxation and writing | Nature Human Behaviour
https://www.nature.com/articles/s41562-025-02365-5


The real reason states first emerged thousands of years ago – new research
https://theconversation.com/the-real-reason-states-first-emerged-thousands-of-years-ago-new-research-268539

最古の国家は古代メソポタミアで成立したと考えられており、その後エジプト、インダス川流域、中国、メソアメリカまで広がりました。それ以前の小規模な社会から大規模な国家に発展したきっかけとしては、農耕の発明が強く関連しているという考えが有力です。一方で、農耕の拡大は約9000年前であり、国家が成立した約5000年前とは4000年の隔たりがあり、「農耕が拡大して国家ができた」と考えるには疑問も残っていました。

有力説では、肥料や灌漑(かんがい)によって農業が発展したことで、生産物に余剰が生まれ、エリート層がそれらを搾取した結果として身分の階層化が進み、国家が誕生したと考えられています。また、アメリカの人類学者であるジェームズ・スコットは、一般的な農業ではなく穀物を栽培する社会が国家の誕生につながったという見解を提唱しました。小麦や米、トウモロコシなどの穀物は予測可能な時期に実り、貯蔵も容易であるため、国家形成の原動力になった課税制度などに最適です。


ブリストル大学進化人類学上級講師のクリストファー・オピー氏と、オークランド大学心理学教授のクエンティン・ダグラス・アトキンソン氏による研究チームは、国家が成立したきっかけに関する説を検証するため、世界中の868の社会データと「世界言語系統樹」を組み合わせることで、「社会における特定の特徴がどの順番で出現したか」を数理モデルを用いて推定しました。

研究の結果、肥料や灌漑を使った集約農業が、「国家形成の原因」ではなく、「国家形成の結果」である可能性が示されました。農業の余剰生産が国家を生むという従来の説明とは逆で、国家という組織が生まれたことで、労働力や土地の管理、大規模なプロジェクトが可能になり、分散した農地をまとめて農作業の効率を高める「農業の集約化」が進んだという発展のシナリオです。


さらに、研究チームは穀物農業が国家の発達と強く結び付くスコットの説について分析しました。その結果、穀物は安定供給や保存がしやすく、課税の対象に適していることが再確認され、「穀物農業が採用されている文化ほど、国家の発生確率が高い」という明確な傾向が示されました。ただし、「穀物以外に基づく社会では国家は出現しない」というスコットの説に反して、アフリカの文化圏など穀物に依存しない国家も存在していることが分かりました。

この研究は、数理モデルを使って文化間の関係性を単なる相関ではなく順序も想定できる分析として画期的なものです。ただし、因果関係の推定には限界があるため、不確実性が付きまとうものであることには注意が必要です。

研究者によると、今回の調査結果は、社会システムと情報の広範なつながりを浮き彫りにしているとのこと。現代では、デジタル技術とAIの発展が情報の生成、保存、発信に大きな変化と混乱をもたらしており、グローバリゼーションと暗号通貨は税制に混乱をもたらしています。また、気候変動によって農業生産も大きな危機に直面しています。「今日の国家が直面している課題と選択は、数千年前の初期の国家誕生以来、繰り返されてきたものなのです」とオピー氏は述べています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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