蚊の口器を3Dプリンター用の極細ノズルに再利用することに成功、移植用臓器の製造に期待

3Dプリンターのノズルは、材料を押し出して立体物を造形する重要な部品で、ノズルの内径が細いほど精密な構造物を製造できます。カナダの研究チームが、蚊の口器を3Dプリンター用の極細ノズルとして活用する技術を開発しました。
Science Advances DOI: 10.1126/sciadv.adw9953
https://doi.org/10.1126/sciadv.adw9953
Mosquito proboscis repurposed as ultra-precise 3D printer nozzle
https://www.newscientist.com/article/2461196-mosquito-proboscis-repurposed-as-ultra-precise-3d-printer-nozzle/
カナダのマギル大学のチャンホン・カオ教授ら研究チームは、極めて微細な構造物を製造するため、切断したメスの蚊の口器>を3Dプリンター用ノズルとして再利用する独自技術を開発しました。この手法は「3Dネクロプリンティング」と呼ばれています。研究チームが開発に取り組んだきっかけは、市販されている3Dプリンター用ノズルの限界でした。最も細い市販ノズルの内径は35マイクロメートルで、価格は80ドル(約1万2000円)と高額です。研究チームはガラス引きなどの手法を試しましたが、これらのノズルは高価で非常に脆いという問題がありました。
研究チームは大学院生のジャスティン・プーマ氏に、サソリの毒針からヘビの牙に至るまで、あらゆる自然の器官を調査するよう指示しました。最終的に、ネッタイシマカのメスの口器が、20マイクロメートルという極細の構造物を印刷するのに最適であることを発見しました。チャンホン・カオ氏によると、顕微鏡下でのメスの蚊の口器の正確な切断・抽出を会得した作業員であれば蚊の口器から1時間に6本のノズルを1ドル未満(約155円)のコストで製造でき容易に規模拡大が可能で、しかも既存の3Dプリンターに簡単に取り付けられます。生物学的起源を考慮すると比較的長寿命で、2週間後には約30%が故障し始めますが、最大1年間凍結保存できます。

小型生物の器官を機械部品として利用する事例として、蛾の触角を応用した匂いを感知するドローンや、クモの死体をロボットハンドに改造したネクロボットなどが挙げられます。研究チームは、血管を含む生体組織の足場構造を構築可能なバイオインク「プルロニックF-127」を使っての3Dプリンター印刷は、人工臓器の製造に向けた有望な手法として期待されています。
英国スウォンジー大学のクリスチャン・グリフィス氏は「この研究は人間の技術者が自然が生み出した道具に追いつこうと奮闘している好例だ。蚊の進化には200万年という歳月が費やされている。おそらく自然界の方が私たちよりも優れた技術を持っているのだろう」と述べています。
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in ハードウェア, サイエンス, Posted by darkhorse_logmk
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