サイエンス

「ローマ帝国の道」の新たなデータセットが作られてマッピングされた道の総延長が10万km以上も増加


すべての道はローマに通ず」ということわざがあるように、ローマ帝国はヨーロッパから北アフリカ、中東に至る広大な領域の隅々まで道を建設しました。国際的な研究チームが、ローマ帝国の道をマッピングした新たなデータセット「Itiner-e」を公開し、確認されている道路網の総延長がこれまでの約19万kmから約30万kmに増加しました。

Itiner-e: A high-resolution dataset of roads of the Roman Empire | Scientific Data
https://www.nature.com/articles/s41597-025-06140-z


Massive New Map Reveals 300,000 Km of Ancient Roman Roads : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/massive-new-map-reveals-300000-km-of-ancient-roman-roads

Roman road network was twice as large as previously thought, new mapping project finds | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/romans/roman-road-network-was-twice-as-large-as-previously-thought-new-mapping-project-finds

ローマ帝国は最盛期には500万平方kmに及ぶ領土を支配し、文化や芸術、建築などさまざまな分野に現代に至るまで影響を及ぼしています。また、ローマ帝国は全土に道路を建設したことでも知られており、その網目状の道路が帝国の維持と繁栄に大きな役割を果たしたとされています。


領土内にどのように道路が張り巡らされていたのかを知ることは、ローマ人がどのように移動して互いに交易を行ったのか、帝国の支配範囲が時代と共にどのように変化したのか、どういうルートで病気が蔓延したのかといったことを知る上で重要です。しかし、これまで入手可能だったローマ帝国の道路網のデータは古く、断片的なものだったとのこと。

そこで、デンマーク・オーフス大学の考古学者であるトム・ブルグマンス准教授らの研究チームは、ローマ帝国の道に関する断片化されたデータを一カ所に集約し、その情報を誰もが利用可能にする「Itiner-e」プロジェクトに着手しました。


研究チームは、2000年に作成されたローマ帝国の道のデータセット「Digital Atlas of Roman and Medieval Civilizations(DARMC)」をベースとして、歴史的な旅程記録やローマ帝国のマイルストーン、遺跡データ、1800年~1900年代に作成された歴史地図、リモートセンシングデータから得られたローマ街道の高解像度空間データなどを統合したとのこと。

ブルグマンス氏は、「私たちは発掘調査や文献からの証拠を衛星写真と比較し、古代の道路の痕跡や、ローマ街道の名残が現在よりも残っていたと考えられる都市化以前の時代を示す歴史的な地形図を特定しました。ダム建設計画以前に撮影された過去の衛星画像を使用することで、現在のダム湖の下に隠れた道路を見つけることさえできます」と述べています。

作業の結果、現代の40カ国にまたがるデータセットが作成され、DARMCでは18万8554kmだった既知のローマ街道の総延長は、29万9171kmへと増えました。ブルグマンス氏は、「これは地球の円周の7倍以上です。この時期には19世紀の産業革命まで見られなかった規模で、この地域の交通インフラが根本的に再構築されました。そして今、私たちは2000年間で陸上の移動がどのように変化したかを研究できるデータセットを手に入れました」とコメントしました。

研究チームが作成した「Itiner-e」は、以下のウェブサイトからアクセスできます。

itiner-e
https://itiner-e.org/

アクセスすると、調査によって判明したローマ帝国の道を見ることが可能。


ヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡付近の道はこんな感じ。大陸の端まで道が張り巡らされていることがわかります。


また、地図上の道をクリックすると、その道の詳細情報やデータソースを確認することができます。ブルグマンス氏は、「このプロジェクトの主な貢献は、ローマ街道の位置についての研究をすべて、オープンかつ説明責任のある形でまとめたことです。1万4769個の道路区間それぞれに、その位置を特定するために使用された情報源と、その場所の確実性を示す表現が含まれています」と述べました。


「Itiner-e」で確認できるローマの道は膨大な距離ですが、それでもローマ帝国時代の道路網全体のわずか3%程度だとみられます。ブルグマンス氏は、「これは大きな驚きであり、同時に身の引き締まる思いでした」「30万kmというのはほんの氷山の一角に過ぎません。ローマ街道の位置に関する公開情報をさらに充実させるため、今後の研究を促進したいと考えています」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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