半導体の放熱素材としてダイヤモンドコーティングすることでピーク温度の抑制に成功

熱伝導率の高いダイヤモンドは半導体の理想の素材の1つであり、様々な困難を乗り越えて、日本の福島県大熊町に世界初のダイヤモンド半導体工場の建設が進められています。スタンフォード大学の研究チームもダイヤモンド半導体の研究を進めていたのですが、「この道のりは難しい」ということで、ダイヤモンドを冷却用の放熱素材に使う研究に切り替えています。
Diamond Thermal Conductivity: A New Era in Chip Cooling - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/diamond-thermal-conductivity

単結晶ダイヤモンドの熱伝導率は銅の約6倍に相当する、あらゆる材料の中でも高い値であり、製造が容易な多結晶ダイヤモンドでも厚く成長させることで近い値に近づけることができます。このためダイヤモンド半導体は魅力的ですが、窒化ガリウムデバイス研究に取り組んできたスタンフォード大学のスラバンティ・チョードリー教授は、かなり難航しそうだという見通しがあったとのこと。たとえば、複数の企業が高純度ダイヤモンド基板を50mmや75mm、100mmの厚みにすることに取り組む中で、チョードリー教授のチームが入手できた基板はわずか3mmのものでした。
このため、チョードリー教授は方針を転換。商用スケールのダイヤモンド基板に挑む代わりに、大きなシリコンウェハー上にダイヤモンド膜を育てる試みを開始しました。
一般的に、メタンと水素を900℃以上の高温で反応させると、単結晶ではなく大量の細い結晶柱が形成されます。高さが増すと1つに合体して均一な膜になるのですが、高品質な多結晶ダイヤモンド膜が形成されるころには膜は分厚くなり、しばしば亀裂などが生まれます。
チョードリー教授は、この多結晶コーティングを他のデバイスの放熱素材として使うことを考えました。ダイヤモンドは電気絶縁性があるため「熱誘電体」として作用する可能性があるとして、勝機を見いだしていたとのこと。
ただし、チップ内部にダイヤモンド膜を成長させるだけのスペースはなく、成長初期に生まれるトゲのある結晶柱は熱を横方向に伝えないため最初から大きな結晶粒を生成する必要があります。また、ダイヤモンド膜を成長させるときに必要な高温はチップを損傷させるおそれがあるため、少なくとも温度を半分まで下げる必要がありました。
研究チームは試行錯誤の末、混合物に酸素を加えることで、ダイヤモンドではない炭素堆積物を継続的に除去してくれることを発見。また、CMOS回路やその他のデバイスが耐えられる400℃で全体に粗粒多結晶ダイヤモンドの被膜を形成する配合を見つけ出しました。
しかし、その先で直面したのは界面熱抵抗(TBR:Thermal Boundary Resistance)という課題でした。TBRとは、異なる結晶が接する境界面で熱が伝わりにくくなる現象で、境界部に異なる材料を用いることで乗り越えているケースが多いとのこと。半導体の場合、材料が限られるため選択肢が制限されることになります。
チョードリー教授の研究チームは、窒化ケイ素で覆われた窒素ガリウム上でダイヤモンド膜を育てていたときに偶然、TBRがこれまで報告されていたよりも低い値であることを観測。テキサス大学ダラス校のK・J・チョー氏との共同研究によって、ダイヤモンドと窒化ケイ素の界面に形成された炭化ケイ素が熱伝導の橋渡し役となり、TBRが低下したことを突き止めました。

by Mohamadali Malakoutian
研究チームは窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(HEMT)で、低TBRダイヤモンドコーティングの試験を実施しました。HEMTがテストケースとして選ばれた理由は、電流を制御するゲートがトランジスタから数nmの距離にあって、デバイスの表面に非常に近い位置で熱が発生するため、ダイヤモンドコーティングの影響がすぐに確認できるためです。実際、HEMTの側面まで完全に囲むようにダイヤモンドコーティングを行ったところ、高周波性能にある程度の低下が見られた一方、温度は70度も低下しました。
チョードリー教授は取り組みの中で「熱足場(thermal scaffolding)」という概念を取り入れています。この方式は、nm単位の多結晶ダイヤモンド層をトランジスタ上部の誘電体層内に組み込み、熱を拡散させるもので、層同士は銅またはダイヤモンド製の垂直熱伝導体(サーマルピラー)で接続されます。ピラーは別の放熱板に接続されて、3D積層構造内の次のチップのサーマルピラーへと連なり、熱がヒートシンクやその他の冷却装置に到達するまでプロセスが続くようになっています。

by Srabanti Chowdhury
以下はAIアクセラレーター(丸印)とCPU(三角印)に「熱足場」を導入した場合と導入しなかった場合の熱の変化を示しています。赤い線が熱足場なし、青い線が熱足場ありで、熱足場ありの構造だとピーク温度が125℃までに抑え込まれています。

by Srabanti Chowdhury
ダイヤモンドコーティングの上部を原子的に平坦にする方法を考える必要があるなど、まだ課題はあるとのことですが、チョードリー教授はこの研究が熱管理に「破壊的」な新しい道を示し、ハイパフォーマンスコンピューティングの未来への重要な一歩になる可能性があると述べています。
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in ハードウェア, サイエンス, Posted by logc_nt
You can read the machine translated English article Diamond coating as a heat dissipation ma….







