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AIと会話するとちょっと前向きな思考になる


責任あるAIの使用を企業理念としているAnthropicは、AIの安全や倫理についてさまざまな研究を公開しています。2025年6月27日にAnthropicが公開した調査結果では、AIが人々の感情体験や幸福感にどのような影響を与えるのかを分析しており、AIに感情的な相談やアドバイスを求める人の感情はAIとやりとりすることでポジティブになる傾向があると示されました。

How People Use Claude for Support, Advice, and Companionship \ Anthropic
https://www.anthropic.com/news/how-people-use-claude-for-support-advice-and-companionship


Anthropicは自社のAIモデルである「Claude」について、ユーザーのプライバシーを保護しながら使用状況に関する洞察を提供する分析ツール「Clio」を使用して、広範なパターンを分析しています。

「みんなのAIの使い方トップ10」がClaudeの分析ツール「Clio」で判明、日本人のAI使用法は「アニメとマンガ」制作 - GIGAZINE


2025年6月27日に公開された論文では、Claudeの無料アカウントとProアカウントから約450万件の会話を収集し、主に感情的なやりとりに焦点を当てて分析しています。感情的なやりとりとは、アドバイスやコーチングを求めたり、悩みを相談して解決やカウンセリングを求めたり、恋人や性的パートナーとしてロールプレイを求めたりする、感情的ないし心理的なニーズを動機とする会話を指しています。なお、Claudeの使用は18歳以上に限られているため、調査結果は成人のAIの使用パターンを反映しています。

調査結果として、まず、ほとんどの人は主に仕事のタスクやコンテンツの作成にAIを使用しており、感情的なやりとりはClaudeの使用の内2.9%程度であるそうです。その中でも対人関係に関するアドバイスやコーチングが中心で、恋愛や性的関係のロールプレイを含む会話は全体の0.1%未満。これは、Claudeがそのようなやり取りを積極的に阻止するよう訓練されていることを反映しているとのこと。この集計結果は、OpenAIとMITメディアラボが2025年3月に公開した共同研究の傾向と一致しています。


感情的なやりとりの中で割合が最も高かった「対人関係のアドバイス」にカテゴライズされた代表的なトピックは、文書および対人コミュニケーションスキルをさまざまな文脈で改善する方法が3.8%、恋愛関係の課題を乗り越え改善する方法が3.5%、心理的パターンや人間関係のダイナミクスを分析する話題が2.2%。また、具体的なアドバイスを求めるようなトピックとしては、「子育て期における親子のコミュニケーションに苦労している」「職業的な転換期や雇用不安に直面している」「恋愛関係における不安定さに悩んでいる」などが代表的でした。


「コーチング」の代表的なトピックは、自己成長フレームワークや成長戦略を構築するためのアドバイスが4.5%と最も多く、哲学的概念を探求する話題が2.5%、就職活動戦略を最適化するための戦略が2.5%でした。また、具体的な悩みや問題として頻繁に出ていたものとして、「人生の大きな転換期や不確実な意思決定」「職場での燃え尽きや職業的な疲弊」「親密な関係に問題が生じた場合の感情的・コミュニケーション的課題」が挙げられています。


全体の0.3%程度あった「心理療法・カウンセリング」としてのAIの使用では、メンタルヘルスの課題と感情的な健康のための戦略を開発するというトピックや、メンタルヘルス実践における専門スキルと知識を向上させるための学習、臨床心理の文書作成と評価資料を作成、管理するタスクが代表的でした。具体的な課題としては、原因不明の身体症状や健康不安や、「生きる意味の喪失」などの実存的危機、職場のストレスやメンタルヘルス問題に関する悩みが多く相談されています。


AIに「精神的なつながり」を求めたユーザーは、恋愛関係に関するトピックが7.2%と多くなっていました。そのほか、個人のアイデンティティや実存的な問いに向き合う話題が4.7%、感情的苦痛を経験している人に対してどのような言葉をかけるべきかというトピックが3.2%。具体的な課題の項目では、「人生の困難な時期に圧倒的な感情的苦痛を感じている」「慢性的な孤独や人との深いつながりを築けないことに悩んでいる」「実存的不安に直面している」という相談が多くなっていました。


分析結果から、Claudeは主に「メンタルヘルススキルの向上や具体的な文書の作成まで含む、実用的なツール」と「個人的な心理的課題に取り組むためのリソース」という2つの目的で利用されているとAnthropicは結論付けました。特に、より深い感情的課題に直面している人々は、Claudeに寄り添いを求めている事が明確であったとAnthropicは述べています。

さらに、全体的な分析を通して、「Claudeと感情的なやりとりをしているユーザーのメンタルはどのように変化するのか」ということも分析されています。研究では、感情的課題に関する会話について最初の3つのメッセージと最後の3つのメッセージを比較し、感情を「非常に否定的」「否定的」「どちらでもない」「肯定的」「非常に肯定的」という尺度で測定した上で、Claudeとの会話前と後で感情がどのように変化したかを算出しています。

Claudeとの会話で感情がどのように変化したのかという分析結果が以下のグラフ。トピックが「心理療法・カウンセリング」「精神的なつながり」「コーチング」「対人関係のアドバイス」の順に感情の変化が大きく、いずれの場合でも、「Claudeとやりとりすることで、始まったときよりも少しだけ前向きな結果に終わることがわかりました」とAnthropicは指摘しています。


研究結果の注意点として、感情の変化に関する分析は単一の会話における言語表現のみを基準としているため、実際の感情状態を捉えていない可能性があります。また、Claudeとのやりとりで肯定的な相互作用が生まれていたとした場合、それが感情的なデジタル依存につながる懸念があり、安全のためにより詳細な研究を必要とします。Anthropicは「この研究はほんの始まりに過ぎません。AIの能力が拡大し、やりとりが洗練されるにつれて、AIの感情的側面の重要性はますます高まっていくでしょう。目標は、より優れたAIを構築することだけでなく、真の人間同士のつながりと成長を支えるような方法で機能することを確実にすることです」と語っています。

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in 有料メンバー,   ソフトウェア, Posted by log1e_dh

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