まったく新しいアルファベット「ITA」の提唱により何千人もの子どもが正しいスペルを書けなくなった

スペルをより音声的・直感的に理解できるようにすることで、子どもたちがより速く文章を読めるようにするために、1960年代にイギリスで「ITA(イニシャル・ティーチング・アルファベット)」という教育法が導入されました。数万人の子どもを対象に行われたプログラムは、1970年代には廃れて撤回されましたが、ITAで書き方を習った人々の中には、今も現代英語の正しいつづりができない人がいるそうです。
The radical 1960s schools experiment that created a whole new alphabet – and left thousands of children unable to spell | Education | The Guardian
https://www.theguardian.com/education/2025/jul/06/1960s-schools-experiment-created-new-alphabet-thousands-children-unable-to-spell
編集者のエマ・ロフハーゲン氏は、子どものころから母親の文章の校正を手伝っていました。ロフハーゲン氏の母親は、週に何冊も本を読み、文章にシェイクスピアの引用をするような教養ある人物ですが、なぜか「me」のことを「mee」とつづるなど、子どもだったロフハーゲン氏が見ても分かるような間違いを犯していたとのこと。
その原因となったのは、1960年代から1970年代にかけてイギリスや英語圏の国々で行われた教育プログラム「ITA」でした。
英語は、たとえば「i」という音に対して「eye」など20通りのスペルがあったり、同じスペルを含む単語でも「through」「though」「thought」のようにそれぞれ音が違ったりと、世界でも読み書きを学ぶのが難しい言語として知られています。
このために導入されたITAは、44個の文字がそれぞれ異なる音を表し、子どもたちに速く読むことを教えるよう設計されていました。1966年までに、イギリスでは158ある教育当局のうち140で「少なくとも1つの学校でITAを教えている」状態になっていたとのこと。

あくまで、ITAは「速く読めるように」と考えられたものであり、既存のアルファベットを置き換えようとしたわけではないので、7~8歳ぐらいまでにはシームレスに標準的なアルファベットでの教育に切り替えられるはずでした。
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ところが実際には「シームレス」とはいかず、ロフハーゲン氏の母親の場合、ITA以外があることは教わらなかったそうです。このように、ロフハーゲン氏の母親のようにアルファベットを正しく用いることができない人は数千人の単位でいるとみられます。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで幼児教育学が専門のドミニク・ワイス教授によると、ITAから標準的なアルファベットへの移行は、結局「英語の仕組みをほとんど1から学び直す」ようなものだったとのこと。
識字能力開発を専門とする、レディング大学のローナ・スタインソープ教授は、ITAを提案した保守党のジェームズ・ピットマン議員が教育学者ではなかったと指摘し、ITAを「ひどい試みだった」と述べています。その一方、ITAで学んでもスペリングに問題がない人がいたり、ITAを学ばなかった人でもスペリングが下手な人がいたりすることから、「ITAがスペリングに悪影響を与えたことを証明する証拠はない」とも語っています。
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in メモ, Posted by logc_nt
You can read the machine translated English article Proposal for a completely new alphabet, ….