サイエンス

子どもは「相手をだましてもいい」と言われると逆に正直になるとの研究結果


相手にうそをついたり、だましたり、知っている情報を隠したりすることは日常生活のさまざまな場面で見られ、子どもであってもうそをついて親や友達をだますことがあります。3~7歳の子どもを対象に行われた実験では、戦略的なゲームで「相手をだましてもいい」と子どもに伝えると、逆に子どもは正直になることが明らかになりました。

The Permission Paradox: Condoning Deception Can Promote Honesty in Young Children - Tan - 2026 - Developmental Science - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/desc.70168

Children are less likely to use deception after being given permission to deceive, study finds
https://www.psypost.org/children-are-less-likely-to-use-deception-after-being-given-permission-to-deceive-study-finds/

人は罰されるのを逃れたり、他人よりも有利な立場を築いたり、時には相手の心を守ったりするためにうそをつきます。状況によってはうそをつくことがコミュニケーションを円滑にし、自分と相手の双方にメリットをもたらしますが、時にはうそによって信頼を失ったり人間関係が壊れたりすることもあります。


うそをついたりだましたりする行為には、他者を欺くための高度な認知能力が必要なことに加え、欺くことの倫理的な意味合いを理解する道徳的な意識の両方が絡み合います。そのため、ある状況でうそをつかなかった人を研究する場合、その人は倫理的な問題を懸念したのか、あるいは他人を欺くための認知能力に欠けていたのかという点を区別するのが難しいとのこと。

今回、シンガポール国立大学の心理学部准教授であるディン・シャオパン氏らの研究チームは、正直であることを求める規範が強いシンガポールの子どもたちが、「うそをつくことが道徳的に許容される戦略的ゲーム」でどのように振る舞うのかを実験しました。


実験には3~7歳の子どもが合計で約280人参加し、実験群と対照群にランダムで割り当てられました。子どもは1人の研究者を相手に、ステッカーをゲットできるかどうかを競う戦略的なゲームに取り組みました。ゲームの流れは以下の通り。

1:子どもがポケモンやトランスフォーマー、サンリオなどのキャラクターが描かれたステッカー10枚を選ぶ。
2:研究者が目を閉じている間に、子どもが2つあるカップのうち1つの下にステッカーを隠す。
3:研究者が目を開けて、子どもに「ステッカーはどっち?」と尋ねる。
4:子どもは2つあるカップのうち1つを指さす。
5:研究者は子どもが指さしたカップを必ず持ち上げる。
6:持ち上げたカップの下にステッカーがあったら、ステッカーは研究者が没収する。カップの下にステッカーがなかったら、子どもはステッカーをゲットする。

ゲームにおいて研究者は、必ず子どもが指さしたカップを持ち上げました。つまり、子どもたちは研究者から「ステッカーはどっち?」と尋ねられた際にうそをつけば、必ずステッカーをゲットできたというわけです。

子どもたちはゲームのルールを学ぶための練習セッションを何回かこなした後、本当にステッカーのやり取りをするメインゲームに移行しました。そして、実験群の子どもにはメインゲーム開始前に、「通常は間違った答えを言うのはよくないことだけど、このゲームでは正しい答えでも間違った答えでも言っていいことになってるよ。このゲームで勝つためには何でも好きなことを言っていいんだ」と伝えられ、対照群の子どもにはそのような指示が与えられませんでした。


実験の結果、両グループの子どもたちは60~80%の確率でうそをつき、研究者をだまそうとしたことが判明しました。さらに、うそをついていいと明示的に指示された実験群の子どもたちは、指示を与えられなかった対照群の子どもと比較して、うそをつく可能性が低いことも明らかになりました。

これは、研究チームが実験前に立てていた「子どもたちはゲームの中でうそをついていいと教えられたら、うそをついて研究者をだまそうとする頻度が高くなるだろう」という仮説に反するものです。なお、3歳までの子どもは事前の指示による影響を受けないことも確認されたとのことです。

研究チームは子どもにうそを許すことが逆に正直さを高めた理由について、いくつかの説明を試みています。1つ目は、指示の際に「通常は間違った答えを言うのはよくないこと」と言ったため、意図せず「うそをつくのは悪いこと」という意識が高まったというもの。2つ目は、子どもは大人が何を望んでいるのかを見抜く能力に優れているため、「このゲームは自分の正直さを試しているのだ」と気付き、普段よりも正直に振る舞ったというものです。

そして3つ目は、「戦略的なゲームで勝利するためにあえて正直に振る舞った」というものです。大人が子どもたちにうそをついていいと教えたことで、子どもたちが「相手は自分がうそをついてステッカーを手に入れようとすると思うだろうから、あえて正直なことを言えば混乱して間違うだろう」と考えた可能性もあります。

研究チームは今後の研究の課題として、今回の結果が文化を超えても維持されるのかどうかを検証する必要があると指摘。シンガポールのように規範の厳格化が進んだ社会では、子どもたちが非道徳的な選択を抑制しようとする可能性があるとのこと。また、同様の指示がゲーム以外の文脈でどのように機能するのかや、指示の内容によってどのように変化するのかといった点も今後の課題です。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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