優れた創作に「苦しみ」は欠かせないのか?

作家や芸術家の来歴や伝記などを読んでいると、過去に壮絶な苦しみを味わっていた経験があったり、人生のどん底にあった時に優れた作品を作っていたりすることがあります。そのため、「優れた創作には苦しみが必要」と考える人もいるかもしれません。実際に創作に苦しみは必要なのかどうかについて、精神分析医のグラント・ブレンナー氏が解説しました。
Must Creativity Necessarily Come at the Price of Misery? | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/experimentations/202601/must-creativity-necessarily-come-at-the-price-of-misery
ブレンナー氏は、確かに一部のクリエイターは困難な時期に創作活動に取り組み、平穏な時期にはわからなかった創作の本質的な意義を感じることがあると認めています。しかし、この経験を元に「優れた創作をするには苦しむべきだ」と一般化するべきかどうかは問い直す必要があるとしています。
まず重要な点として、ブレンナー氏は「苦しみへの反応としての創作」と、「創造性の源泉としての苦しみ」は異なるものだと指摘。たとえば、うつ病などに苦しむ人には創作活動が生き延びるための命綱となり、創作によって耐えがたい苦しみを消化することができるかもしれません。
こうした創作活動で生み出された作品は「うつ病や苦しみの副産物」ではなく、「うつ病に抵抗するためのもの」だと見なすべきです。これらを混同すると、人々が生き延びるために創作活動を行ったという事実が隠されてしまいます。

人々は「Aというクリエイターは苦しみや苦難を乗り越えて偉大な作品を作り上げた」という話を好みますが、「苦しみを感じながらも創作活動をしなかった人」や、「喜びや静かな没頭の中で創作活動をした人」についてはあまり語られません。ブレンナー氏は、ここでは自分にとって都合がいい証拠や情報ばかり集めたがる確証バイアスが働いていると主張しています。
ブレンナー氏は、人々は物事を理想化してしまうと因果関係を誤って解釈しがちだと指摘。「苦しみは神話化され、必要不可欠なものへと昇華されます。そして、『苦しみは単なる苦しみであり、創造性は苦しみと並行して、あるいは苦しみにもかかわらず生じた』というより単純な解釈を受け入れられず、苦しみが創造的成果を生み出したと結論付けてしまうのです」と述べました。
精神分析の分野では刺激的な快楽や苦痛について注目されがちですが、日常の小さな喜びや静かな没頭、ゆっくりと積み重なる満足感といったものが見過ごされやすいとブレンナー氏は指摘しています。その結果、クリエイターである患者とセラピストの両方が「苦痛は創作に必要なものだ」と暗黙のうちに了解している場合に、患者の気分を高揚させるような治療が避けられてしまうリスクがあるとのこと。
ブレンナー氏は「双方は無意識のうちに、あるいは意識的に苦しみへ価値を見いだしている可能性があり、サド・マゾ的な形でそれを楽しんでいることさえあります」「どちらもその前提に意義を唱えず、治療によって患者が創造的な才能を失ってしまうのではという懸念が生じます。その結果、健康を疑わしいものと見なし、苦しみを神聖なものとして扱う枠組みの中で、治療法の方向性が限定されてしまいます」と述べています。

苦しみをインスピレーションの源と見なすことには注意が必要であり、実は苦痛がない時の方が創造性や遊び心を発揮できることもあります。ブレンナー氏は、「苦しみが和らぐことで創造性を失うのではないかという恐れは、非常に強いものです。ありきたりな解決策や万能薬には賢明に警戒しつつ、慎重に自信を持って進みましょう」とアドバイスしました。
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in 創作, Posted by log1h_ik
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