サイエンス

ブラックホールの内部には素数の謎が隠れているのかもしれない


最近の研究で、素数に基づく数式がブラックホール内部の振る舞いを記述できる可能性が示されており、長く数学者たちが研究してきた素数やリーマン・ゼータ関数によって量子重力や特異点の謎に迫れるかもしれないと、科学系メディアのLive Scienceが解説しています。

Exotic prime numbers could be hiding inside black holes | Live Science
https://www.livescience.com/space/black-holes/exotic-prime-numbers-could-be-hiding-inside-black-holes

素数は自分自身と1でしか割り切れない自然数です。素数に関する重要な未解決問題が1859年にベルンハルト・リーマンが提唱したリーマン予想で、100万ドル(約1億5900万円)の懸賞金がかけられているミレニアム懸賞問題の1つです。

証明されれば素数の謎を解明する鍵となる懸賞金100万ドルの難問「リーマン予想」とはどういう問題なのか? - GIGAZINE


ブラックホールの中心には、一般相対性理論では重力が無限大になるとされる特異点があります。そこでは空間や時間についての通常の理解が成り立たなくなると考えられていますが、1960年代には特異点のすぐ外側で一種のカオス理論的な振る舞いが現れることが知られるようになりました。

そして近年、このカオスが、素数の研究で見つかっていた別種のカオスと驚くほど似ていることが注目されています。ブラックホールの奥で起きる複雑な乱れと、素数やゼータ関数に現れる揺らぎが、同じ数学的骨格を持っている可能性が出てきたためです。

by European Southern Observatory

1990年、フランスの物理学者ベルナール・ジュリア氏は素数の対数をエネルギー準位に持つ仮想的な粒子を考え、これを「プライモン」と名付けました。さらに、そうした粒子の集団である「プライモン気体」を考えた時、その分配関数がリーマン・ゼータ関数に一致するとジュリア氏は論じました。もっとも、当時は実在する粒子の話というより、あくまで理論上の構想として受け止められていました。

しかし、キングス・カレッジ・ロンドンのヤン・フィヨドロフ氏やオハイオ州立大学のガイス・ヒアリー氏、オックスフォード大学のジョン・キーティング氏らは、リーマン・ゼータ関数が0になる点そのものをただ並べるのではなく、その並び方の細かなズレや不規則さを調べていくと、そこに単なるバラバラな乱雑さではない自己相似的な複雑構造が見えてくると主張しました。この予想は2025年に証明されました。

2025年2月には、ケンブリッジ大学のショーン・ハートノル氏と大学院生のミン・ヤン氏が、このプライモンの理論をブラックホール内部へ持ち込み、特異点近くのカオスの中では同じ模様が拡大や縮小を超えて繰り返される「共形対称性」が現れ、同じ構造が異なるスケールで繰り返されるような性質が見えてくると主張しました。この共形対称性から、特異点近傍の量子系のスペクトルが素数に従って並ぶことが導かれました。

by European Southern Observatory

要するに、素数やゼータ関数の世界に現れる複雑な乱れ方はただのランダムな乱れではなく、拡大縮小しても似た形が現れるような深い構造を持っていること、そしてその構造はブラックホール特異点近傍のカオスと同じ型かもしれないということがわかったというわけです。研究チームはこの乱れ方を「共形プライモン気体雲」と呼びました。

さらに2025年7月に解析を通常の4次元時空から5次元宇宙へ拡張すると、通常の素数だけでは不十分になるという研究結果が報告されました。そこで必要になったのが、虚数成分を含む「ガウス素数」です。ガウス素数は複素数の世界でこれ以上分解できない数で、研究チームはこの系を「複素プライモン気体」と名付けました。

そして、サクレー理論物理研究所のエリック・パールマッター氏が新たな枠組みを提案し、ゼータ関数を整数だけでなく無理数を含むすべての実数にまで広げて扱えるようにしました。これによって、量子重力を理解するためにさらに強力なゼータ関数の手法が使える可能性が開けたとのこと。オックスフォード大学の物理学者であるジョン・キーティング氏は「こうした広い視点が長年解けなかった問題に新しい攻略法を与えることがあります」と評価しており、遠くから山全体を見渡すことでよりよい登り道が見つかるというイメージでその意義を語りました。

パールマッター氏は「私たちが理解しようとしているもの、例えば量子重力におけるブラックホールなどは、確かに何らかの美しい構造によって支配されているはずです。そして、数論は自然言語であるかのように思えます」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
MacBook Neoはわずか10分以内で分解可能、接着剤なしでネジ留めのみのモジュール設計なので他のMacBookよりも修理が簡単 - GIGAZINE

2つのブラックホールが合体して太陽の225倍の質量を持つ巨大ブラックホールが誕生 - GIGAZINE

「ビッグバン」は万物の始まりではなく重力崩壊で形成された巨大ブラックホール内の跳ね返りの結果という新説 - GIGAZINE

史上初の「連星ではない単独のブラックホール」の存在を天文学者が確認 - GIGAZINE

銀河の自転方向に偏りがあることをジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見、「宇宙はより大きなブラックホールの内部」との理論が強化される - GIGAZINE

史上最大の素数「M136279841」が発見される、4102万4320桁で数字を羅列するだけで39.9MB - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article The mystery of prime numbers may be hidd….