サイエンス

「孫の世話」は高齢者の脳に良い影響をもたらす可能性がある


祖父母が孫の世話をすることは子育て世代を支える役割として珍しくなく、特に共働き家庭などでは祖父母が育児において大きな存在となることもあります。オランダのティルブルフ大学などの研究チームは「孫の世話をしている祖父母は、孫の世話をしていない祖父母よりも記憶や言語に関わる検査成績が高い傾向がある」と報告しました。

Grandparents’ Cognition and Caregiving for Grandchildren: Frequency, Type, and Variety of Activities
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpag0000958

ティルブルフ大学の発達心理学部門に所属するフラビア・S・ケレチェシュ氏と、ドイツのシャルロッテ・フレゼニウス大学の差異心理学・心理アセスメント部門に所属するガブリエル・オラル氏らの研究チームは、イングランドの中高年を追跡する調査である「English Longitudinal Study of Ageing(ELSA)」のデータを用いて、孫の世話と認知機能の関係を分析しました。

The English Longitudinal Study of Ageing (ELSA)
https://www.elsa-project.ac.uk/


分析ではELSAの参加者のうち50歳以上の祖父母に当たる人を抽出し、調査データは2016年〜2017年頃/2018年〜2019年頃/2021年〜2022年頃の3回分の回答と認知機能検査を使用したとのことです。

孫の世話をする祖父母は人によって健康状態や家族状況などの背景が異なり、その差が認知機能の違いとして現れる可能性があります。そこで研究チームは年齢・学歴・就労・パートナーの有無・子や孫の人数・健康指標など複数の要因が似るように調整した上で、「孫の世話をする群」と「孫の世話をしない群」を比較しました。


また研究チームは、祖父母が孫の「親代わり」に近い役割を担う可能性がある三世代同居世帯ではなく、親を主な養育者としたまま家族の支援として孫の世話をする祖父母に焦点を当てて分析しています。

認知機能は主に「言葉を引き出す力をみる課題」と「言葉のリストを思い出す課題」の2つの課題で評価されました。前者は1分間に動物の名前をできるだけ多く挙げるという言語流暢性の課題です。そして、後者は10個の単語を聞いた後にすぐ思い出す/少し時間を置いて思い出すという形式のエピソード記憶課題で、即時と遅延をまとめた指標として扱われました。

分析の結果、「孫の世話をしている祖父母は、孫の世話をしていない祖父母に比べて言語流暢性とエピソード記憶の成績が高い」と研究チームは報告しています。また、追跡期間中の変化に注目すると「祖母に限り、孫の世話をしている群の方が言語流暢性とエピソード記憶の機能低下が緩やかだった」とのこと。一方の祖父側では「孫の世話をしている群」と「孫の世話をしていない群」で成績水準の差は見られたものの、追跡期間中の言語流暢性やエピソード記憶の成績の低下との関連は明らかではなかったそうです。

研究では孫の世話の頻度は年あたりの世話日数に換算し、さらに「一晩預かる」など活動ごとの関与頻度も別に評価しています。研究チームは孫の世話をする回数や日数は認知機能の高さや追跡期間中の成績の低下と結びつかなかったとしており、「孫の世話に関わること自体が重要なのかもしれない」と整理しています。


なお、ELSAで孫との関わり方については以下のように区別されています。

・一晩預かる
・病気のときに世話をする
・一緒に遊ぶ・余暇を過ごす
・宿題を手伝う
・送迎する
・食事を作る
・必要なときにそばにいる

この中で、余暇を一緒に過ごすことや宿題の手伝いは、エピソード記憶と言語流暢性のどちらの成績とも関連していたと研究チームは報告しています。しかし、活動の頻度や活動の種類は追跡期間中の「成績の低下の度合い」とは結びつかなかったとのこと。また、開始時点で認知機能が高い祖父母ほど、孫と余暇を一緒に過ごしたり宿題を手伝ったりという活動に関わりやすく活動の種類も多い傾向が示されています。

今回の研究は観察データの分析であり、孫の世話が認知機能を高めたのか「もともと健康で認知機能が保たれている人」が孫の世話を担いやすいのかを完全には切り分けられません。また、孫の世話をどれだけ負担に感じているかや孫の世話への自発性、家族からの支援の有無など同じ孫の世話でも文脈の違いが影響する可能性があり、既存の大規模調査ではその情報が限られるという点を研究チームは課題として挙げています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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