ハードウェア

CASIOの伝説的デジタルウォッチ「F-91W」の交換用オープンソース基盤「Sensor Watch」


CASIOのデジタルウォッチ「F-91W」は、型番を聞いてピンとこない人でも画像を見ると一発で「あれか!」と理解できるぐらいのロングセラーモデルであり、また数々の伝説的逸話を持つベストセラーでもあります。そんなF-91Wのオープンソースな交換用基板が発売されました。

Sensor Watch
https://www.sensorwatch.net/


◆CASIO「F-91W」
CASIOの「F-91W」は1989年に発売されて以来、記事作成時点に至るまでデザインはデビュー時からほぼそのまま受け継がれており、圧倒的なコストパフォーマンスも相まって「チープカシオ」などと呼ばれているモデルです。さらに、以下の例のような数々の伝説を持っていることでも知られています。

・必要にして十分な機能を備え、液晶表示もシンプルで見やすく装着感も良好である
・電池寿命は7年のはずなのに、20年動作した上に7分しか誤差を生じなかった
・海外ではG-SHOCKなど最新の機種と対比され、「CASIO VINTAGE」として人気を博している
・あまりの人気ゆえにコピー品が大量に出回ったが、CASIOがオリジナルを作り続けたためコピー品に負けていない
バラク・オバマ元アメリカ大統領が愛用していた
オサマ・ビンラディンも愛用していた

◆交換用基板「Sensor Watch」
F-91Wはロングセラー商品なので、残念ながら本体部分が寿命を迎えて動作しなくなったものもあり、オーナーの中にはなんとかして復活させたいと考える人もいるだろうと予想できます。また、ガジェット好きな一部の愛好家には「F-91Wの見た目や雰囲気はそのままに中身をパワーアップさせたい」という要件もありそうです。そんなニーズに応えてか、F-91Wの基盤を交換することを目的としたオープンソースな基盤「Sensor Watch」が登場しました。交換作業自体は簡単そうですが当然ながら改造行為に該当し、「メーカー保証を受けられなくなる」「防水性能が落ちる」などといった相応のリスクがあるため交換作業は完全に自己責任となります。

なお、Sensor Watchの主な仕様は以下の通りです。

・ARM Cortex M0+マイクロコントローラ
・アラーム機能付きリアルタイムクロック用32KHzクォーツ
・10桁セグメントLCDと5つのインジケータセグメント
・3つの割り込み対応ボタン
・赤/緑のPWM調光機能付きLEDバックライト
・圧電ブザー(※オプション)
・オンボードUSBマイクロBコネクター
・ダブルタップでリセットボタンとなるUF2ブートローダー
・9ピンフレックスPCBコネクター

◆Sensor Watchの交換手順
Sensor Watchのサイトに交換手順を解説した動画がありましたので、動画の内容に沿って手順を説明します。

Sensor Watch Assembly - YouTube


作業に必要なツールは以下の通りです。

・精密ドライバー
・ピンセット
・はんだごて(精密作業用のもの)
・はんだ・フラックス

・分解手順
基板交換対象のF-91W。


裏蓋の四隅にあるネジを精密ドライバーで外します。


ネジ4本を外し終わった状態。


本体と裏蓋の間にあったゴム製のガスケットを、ピンセットを用いて丁寧に剥がします。


ガスケットを取り除いた状態。


ムーブメントはすぐに外れます。


取り出したムーブメントを分解していきます。


ムーブメントの裏蓋は4箇所で金属の爪により筐体に固定されており、すべての爪を持ち上げることでムーブメントから外すことができます。


ムーブメントの裏蓋を外した状態。ボタン電池が完全に露出しています。


ムーブメント筐体からボタン電池と基板はすぐに外れます。


基板の中央にあるバッテリー端子を外します。基板には引っ掛けてあるだけなのでピンセットで簡単に外すことができます。


基板以外のムーブメントから外したもの。この先の作業ではんだごてが必要となるため少しだけ難度が上がります。


基板から飛び出して見えるのがブザーコネクター。これをはんだごてで外します。


ブザーコネクターをピンセットで保持しながら取り付け箇所にはんだごてを当てると、簡単にブザーコネクターが外れます。


ブザーコネクターを外した状態。分解作業はここまでです。


・組み立て手順
組み立て作業は分解の工程を逆に行いますので、まずは基板にブザーコネクターをはんだ付けしていきます。ここからは基板が「Sensor Watch」となります。


ピンセットを用いてブザーコネクターを慎重に位置調整します。


基板にブザーコネクターをはんだ付けします。外すときと異なり、はんだごてとはんだを持つと両手がふさがりブザーコネクターを保持できないため、おそらく全工程で最も難しい作業です。


無事にブザーコネクターをはんだ付けしたところ。


ムーブメントを組み立てていきます。


ムーブメント筐体に基板をセット。


基板の中央にバッテリー端子を取り付けます。


ボタン電池をセットします。


ムーブメントの裏蓋をセットしていきます。


ムーブメントの組み立て完了。ボタン電池から給電されているため時計が表示されています。


本体にムーブメントをセットしていきます。


ガスケットを元の位置にセットします。使い回したガスケットには元の防水性能を期待できないため注意が必要です。


裏蓋をネジで止めます。


完成。


◆Sensor Watchの操作手順
Sensor Watchのウォッチフェイスは2つのリストで構成されています。通常時に表示されているのは「プライマリーリスト」と呼ばれ、日常的に使用する一般的な情報・機能を表示する画面から構成されています。もう一つは「セカンダリーリスト」と呼ばれ、普段は必要のない診断情報・設定の画面で構成されています。


CASIO F-91Wには「MODEボタン」「ALARMボタン」「LIGHTボタン」の3つのボタンがあり、各ボタンを押すことにより操作することができます。

・MODEボタン
MODEボタンを短く押すと、現在選択されているリスト内の次のウォッチフェイスに遷移します。リストの最後にあるウォッチフェイスでさらにMODEボタンを短く押すと、プライマリーリストを表示している場合はリストの先頭に戻ります。


MODEボタンを長押しした場合、現在どのウォッチフェイスを表示しているかによって挙動が変化します。現在のウォッチフェイスが「時計」である場合は、MODEボタンを長押しするとセカンダリーリストの先頭にある「温度表示」に遷移します。以降、MODEボタンの短押しを繰り返すとセカンダリーリストを進める形でウォッチフェイスが遷移し、セカンダリーリストの終端でさらに短押しするとプライマリーリスト先頭の「時計」に戻ります。


現在のウォッチフェイスが「時計」である状態でMODEボタンを長押しすると、どのウォッチフェイスからでも「時計」に戻ります。


・ALARMボタン
ALARMボタンは汎用のボタンであり、例えばウォッチフェイスが「ストップウォッチ」や「カウントダウン」の場合は「開始」と「停止」を切り換えます。


設定可能なオプションのあるウォッチフェイスでは、ALARMボタンを長押しすることで、それらのオプションを直接変更するか、ウォッチフェイスを設定するためのセカンダリモードに入ることができます。

・時計:毎時チャイムの切り替え
・温度:メートル法とヤードポンド法(摂氏または華氏)の切り替え
・日の出・日の入り:緯度/経度の設定画面を表示
・世界時計:名前の追加やタイムゾーンの設定

ALARMボタンを短押しすると、特定のウォッチフェイスでは数値を進める挙動となります。


・時刻設定:月の設定の場合は月を1つ進める。最大値(月なら12月)では設定が最小値にループする。

・LIGHTボタン
LIGHTボタンを別機能に割り当てていない限り、大抵のウォッチフェイスではLIGHTボタンを押すとLEDバックライトが点灯します。「時刻設定」のような一部のウォッチフェイスでは、ALARMボタンと組み合わせることで機能する場合があります。すなわち、ALARMボタンが値を切り換えるのに対してLIGHTボタンはフィールドを切り換えます。


◆まとめ
「Sensor Watch」の導入には相応のリスクを伴いますが、「もう動かなくなってしまったF-91Wを何としても復活させたい」といった思い入れのある方は導入を検討してみるのもいいかも知れません。

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in 動画,   ハードウェア, Posted by log1c_sh

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