超音波でがんを液状化する治療が登場、切らずに腫瘍を破壊可能

がん治療には外科手術・放射線治療・薬物療法といった治療が一般的に用いられていますが、体を切らずに腫瘍のみを狙う非侵襲的な技術の研究も進行中です。そうした取り組みの1つとして、集束超音波を用いて腫瘍組織を機械的に破壊する治療法「ヒストトリプシー」が工学・医療・科学技術分野を扱う専門メディアであるIEEE Spectrumで紹介されています。
Ultrasound Cancer Treatment: Sound Waves Fight Tumors - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/ultrasound-cancer-treatment
ヒストトリプシーは体外から超音波を集束させて照射し、腫瘍内部で気泡を急速に生成・崩壊させることで機械的な力を発生させてがん細胞を破壊する治療法です。腫瘍組織は細かく砕かれて液状化し体内の自然なプロセスで除去されるそうで、熱によって組織を焼く従来の焼灼治療とは異なりヒストトリプシーでは熱の蓄積を抑えることが前提となっているとのこと。
この考え方の背景には、医療用超音波で長年避けられてきたキャビテーションがあります。キャビテーションは圧力変化によって気泡が発生し崩壊する現象で、発生位置や規模の制御が難しく周囲の健康な組織に影響を与える恐れがあるとされてきました。2000年代初頭、アメリカ・ミシガン大学の研究者たちはこのキャビテーションを制御できれば腫瘍の破壊に利用できるのではないかと考え研究を開始。

ミシガン大学で研究を行っていたゼン・シュウ氏らは非常に短い時間だけ高出力の超音波をパルス状に照射し、パルス間隔を長く取ることで気泡の生成と崩壊を起こしながらも熱の蓄積を抑えられる条件を示しました。この条件下ではキャビテーションによる機械的な力が標的とした組織に集中し、周囲の組織への影響を最小限に抑えられると報告されています。
この技術を医療機器として実用化したのがヒストソニクスという企業。ヒストソニクス社が開発したEdisonシステムは、水で満たされた膜を体表に当ててそこから集束超音波を体内へ伝えるという仕組みを採用しています。Edisonシステムは肝臓腫瘍の治療装置としてアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けており、現在はアメリカの医療機関で臨床使用が行われています。

ヒストソニクスの技術についてアメリカ国立衛生研究所(NIH)の介入放射線科医であるブラッドフォード・ウッド氏は「物理学や生物学、生体医工学といった複数分野を統合したシステムだ」と述べています。また、調整次第では腫瘍内部を通る血管や線維性組織を残したまま処置できる可能性があるとのこと。
ヒストトリプシーは肝臓腫瘍だけでなく、腎臓がんや診断時点で既に進行していることが多く外科的切除の難しいすい臓がんへの応用も検討されています。ワシントン大学の超音波研究者であるタチアナ・コクロヴァ氏は「すい臓深部の腫瘍を集束超音波で破壊でき、患者が処置に耐えられることを示した初期試験の結果は重要」だとし、「ヒストトリプシーを最大限に活用するには、すい臓の原発腫瘍の焼灼と他の治療法を組み合わせることが鍵になる」と指摘しています。
ヒストトリプシーの特徴は腫瘍を熱ではなく機械的に破壊する点。腫瘍が物理的に崩されることでがんタンパク質の断片が体内に残り、免疫系がそれらを認識する可能性があると研究者は考えています。このため、ヒストトリプシーと免疫療法を組み合わせた場合にどのような免疫反応が生じるのかを調べる研究も進められているとのことです。
ヒストソニクスのCEOであるマイク・ブルー氏は「現在の装置に加えて新たな技術開発にも取り組んでいる」と述べています。その中には、X線の一形態を用いた新しいガイダンスシステムや、治療用超音波の反射を解析し組織破壊の進行状況を検出してその情報をリアルタイムで表示に反映するフィードバックシステムが含まれているそうです。
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in サイエンス, Posted by log1b_ok
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