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スクウェア・エニックス元幹部が「Z世代はAIスロップが大好き」「絵にだけ文句を言うのは感情的」と主張


近年ではゲーム制作にAIを使用する開発者が増加しています。生成AIモデルは学習時に既存コンテンツの著作権を侵害しているとの声が多く上がり、AIを使用すること自体の是非にまで議論が発展することもある中、スクウェア・エニックスでディレクターを務めた経験があるジェイコブ・ナヴォック氏がゲーム業界とAIの関係性について語りました。

'Gen Z Loves AI Slop' — Former Square Enix Exec Claims 'A Lot of AI Sentiment Is Driven by Emotion Rather Than Logic' - IGN
https://www.ign.com/articles/gen-z-loves-ai-slop-former-square-enix-exec-claims-a-lot-of-ai-sentiment-is-driven-by-emotion-rather-than-logic

"Gen Z loves AI slop," says former Square Enix exec, which means that Arc Raiders' controversial AI usage is just "the tip of the spear" | GamesRadar+
https://www.gamesradar.com/games/most-gamers-arent-actually-bothered-by-gen-ai-in-games-says-former-square-enix-exec-many-studios-i-know-are-relying-on-it-and-art-or-voices-like-arc-raiders-are-the-tip-of-the-spear/

ナヴォック氏は、視聴者の介入で物語が変化するインタラクティブドラマ「SILENT HILL: Ascension」を手がけたテクノロジー企業、GenvidのCEOです。

2025年11月、ナヴォック氏は10月に正式リリースされたゲーム「ARC Raiders」の人気の高まりに触れ、「さまざまな記事で目にする反AI感情にもかかわらず、消費者は一般的には気にしていないようだ」と発言しました。ナヴォック氏がこう発言したのはそれなりの理由がありました。

ARC Raidersは、リリースからしばらく経過した後、「キャラクターの声に生成AIを使用しているのではないか」という疑惑が生じ、声優をAIに置き換えてコストを削減しようとしているのではないかと批判されました。この件に対し、開発者は「合成音声を使用しているが、生成AIではない」と反論しました。

ARC Raidersは2つの異なるAI技術を採用しています。1つは敵キャラクターの強化学習で、キャラクターに動きのパターンを学習させることでリアルな動きを追求するもの。もう1つはテキスト読み上げ(TTS)機能で、人間の声を合成して新しい音声を作成するというものです。

後者について、開発元は「人間に適切な報酬を支払っている」とし、「実際の俳優の録音とTTSを組み合わせて使用​​している」「俳優を置き換えるという意図はない」と反論。こうした機能以外に、AIは使用していないと明言しました。しかしながら、開発元の親会社であるNexonのCEOが「『すべてのゲーム企業がAIを使っている』『すべてのゲーム企業が同じか、類似する技術を使っている』と考えることが必要」と語ったことも併せて、ゲーム開発にAIを導入することの是非について賛否が問われることとなりました。

ナヴォック氏は、ARC Raidersの約80倍の同接者数を稼いだゲーム「Steal a Brainrot」を例に挙げ、「このゲームに登場するキャラクターはすべてAI製だ。Z世代はこのようなAIの粗悪品(AIスロップ)が大好きで、気にしていない。ActivisionはAI導入をためらっていないし、ARC Raidersも同様だ」と指摘。ゲーム開発という分野は生成AI導入反対派の思惑通りには動いておらず、むしろ生成AIが積極的に活用されていると指摘しました。


また、「ゲーム内のアートやボイスはほんの一端に過ぎないことを付け加えておく。私が知る多くのスタジオは、コンセプト段階でAI生成を活用しており、さらに多くのスタジオがコード作成にAIのClaudeを使用している。コードにClaudeを使用していない非インディー作品を見つけるのは難しいだろう」とも発言。


さらに、「コードについては疑惑の目を向けず、純粋に絵だけに焦点を当てているということは、AIに対する批判の多くが論理ではなく感情によって動かされていることを示している」とも付け加えました。

実際に、生成AIを批判する人の中には、絵を生成するAIだけを批判し、文章を生成するチャットAIや翻訳ツールには一切文句を言わず、むしろ積極的に利用しているという人も存在します。こうした矛盾をナヴォック氏は指摘したわけです。


なお、日本におけるAIと著作権に関する考え方については、以下の資料などにまとめられています。

AI と著作権に関する考え方について(令和6年3月15日).pdf
(PDFファイル)https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf

生成AIコンテンツの使用を批判されるのはARC Raidersだけではありません。2025年11月、Activisionが開発する「Call of Duty: Black Ops 7」にジブリ風のイラストが使われているとして、生成AIで生み出したものではないかと指摘されました。2025年6月には、「Jurassic World Evolution 3に生成AIコンテンツを登場させる」と発言した開発元のFrontier Developmentsが、批判を受けて生成AIの使用を撤回しました。また、Ubisoftは「アノ 117:パックスロマーナ」というゲームに生成AIのコンテンツを使っていると批判されたため、当該コンテンツを削除しています。


ただ、少なくとも他の大手開発者やパブリッシャーの間では、AIの導入が積極的に進められているところもあります。EAのアンドリュー・ウィルソンCEOは2024年の時点で「AIは我々のビジネスの中核だ」と述べており、スクウェア・エニックスは大規模な人員削減と組織再編を実施し、QA業務の70%が生成AIによって処理される予定であることを明かしました。

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in AI,   メモ,   ゲーム, Posted by log1p_kr

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