サイエンス

超音波を人間に発射して「匂い」を感じさせられることが判明


匂いは「嗅球(きゅうきゅう)」と呼ばれる脳の領域で処理されます。この嗅球を超音波で刺激することで、人間にさまざまな匂いを感じさせられることが分かりました。

We Induced Smells With Ultrasound
https://writetobrain.com/olfactory


モスクワ物理工科大学出身のレフ・チゾフ氏らは、超音波を人間に照射してさまざまな感覚を生み出すという実験を行いました。

チゾフ氏らが目を付けたのは嗅覚です。匂いを処理する嗅球に向けて超音波を照射するため、チゾフ氏らは専用のヘッドパッドを開発し、額の真下にある嗅球に向けて正確に超音波を収束させるため試行錯誤を行いました。

安全性を確保するため、医療分野で用いられる経頭蓋集束超音波(tFUS)の強度よりも1桁低い出力に調整し、視神経への照射を避けるために照射角度を狭く設定しました。結果として、頭蓋骨を十分に透過できる周波数300kHz、額下で超音波エネルギーが収束する焦点深度約39mm、焦点部を嗅球に限定できる指向角50~55°に設定し、1200Hzの周波数で5サイクル短く高速に繰り返す処理を行うことになりました。


この装置を2人の被験者で試したところ、「酸素豊富で新鮮な空気の感覚」「数日放置した果物の皮のような生ゴミの匂い」「空気イオン発生器のそばで感じるようなオゾンの感覚」「燃える木のキャンプファイヤーの匂い」という4つの異なる感覚を誘発することに成功したそうです。

チゾフ氏らいわく、ここで「匂い」と「感覚」を区別するのは主観的に異なる体験だったからだそうです。被験者が感じた「匂い」は強く局所的で、まるで嗅ぎ回って発生源を見つけられるかのようなものだったとのこと。一方、「感覚」はより拡散的で、弱くゆっくりと現れる印象で、しばしば顔の軽いチクチク感など他の感覚と結びついていました。チクチク感といった感覚は、おそらくプラセボ効果だろうとチゾフ氏らは推測しています。

被験者は額に装置を当てて軽く周囲の匂いを嗅ぎました。匂いと感覚はどちらも軽く息を吸い込んだ時に最も強くなり、数回の呼吸でほのかに漂ってくる匂いもあれば、突然襲ってくるようなこともありました。被験者の1人がゴミの匂いを嗅いだ時、「ゴミ収集車が来た」と思い込んで目をぱちりと開けたとのこと。このとき被験者は屋内にいたため、ゴミ収集車の匂いが香ることはあり得ませんでした。


4つの異なる匂いは、超音波を照射する位置に関係していました。チゾフ氏らが照射角度をわずかに動かすことで、被験者に別の匂いを感じさせることができたそうです。

成人の嗅球の長さは約6~14mmなのに対し、超音波の波長は5mmであることから、微小な角度で異なる香りを誘発できたことは注目に値するとチゾフ氏らは主張しています。鼻には400種類の受容体があるため、照射する超音波を調整することで受容体を細かく活性化させ、さまざまな感覚を与えることが可能になるかもしれないとのこと。

チゾフ氏らは「数日間で4つの香りを特定できました。もう少し技術を進化させれば、嗅覚刺激を大幅に高められるはずです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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