TSMCがIntelに転職した元幹部を機密漏えいの疑いで告訴

by 李 季霖

世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCが、元幹部である羅唯仁氏を、競業避止契約違反および営業秘密の漏えいの疑いで提訴したと2025年11月25日に発表しました。TSMCは、羅氏がIntelの幹部に就任したことで、TSMCの極めて重要な技術情報が競合他社に渡る可能性が高いと主張しており、台湾の知的財産および商事裁判所に訴状を提出しました。

TSMC Sues Ex-Executive Who Joined Intel Over Trade Secrets - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-11-25/tsmc-files-trade-secret-suit-against-ex-executive-at-intel

TSMC files lawsuit against former executive on security concerns | Reuters
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/tsmc-files-lawsuit-against-former-executive-security-concerns-2025-11-25/

Options Corner: Taiwan Semiconductor's Trade Secret Dispute With Intel Presents A Contrarian Opportunity - Taiwan Semiconductor (NYSE:TSM) - Benzinga
https://www.benzinga.com/markets/options/25/11/49073379/tsmc-tsm-stock-trade-secret-dispute-intel-contrarian-bull-spread

TSMC sues Lo following trade secret probe - Taipei Times
https://www.taipeitimes.com/News/biz/archives/2025/11/26/2003847825

羅氏はかつてTSMCの研究開発部門を統括し、AI(人工知能)アクセラレータなどに使われる最先端チップの量産化に中心的な役割を果たした人物です。

羅氏は2025年7月にTSMCを退職した際、TSMCの法務担当者に対して「学術機関に行く」と虚偽の説明をし、転職計画を隠していたとされています。しかし実際には、羅氏はIntelの幹部に就任していました。

by Nicolas Vigier

TSMC側は、羅氏が在職中に2ナノメートル、A16、A14といった次世代の微細化製造プロセスに関する機密情報を不正に持ち出し、それをIntelに提供している疑いが強いとしています。

これに対し、Intelのリップ・ブー・タンCEOはBloombergとのインタビューの中で不正行為の憶測を否定し、知的財産権を尊重する姿勢を示していました。

この問題には台湾の捜査当局も関心を寄せており、台湾高等検察署はTSMCからの告訴に先立ち、羅氏に対する営業秘密窃盗の疑いで捜査を開始したと発表しています。

また、台湾経済部は声明で、「TSMCの法的措置を尊重し、業界への影響を注視する」と表明し、中核技術の侵害や台湾の国家安全法への違反に該当するかを判断するために協力すると述べています。

市場への影響について、金融メディアのBenzingaは、今回の訴訟報道を受けてTSMCの株価が一時的に下落したものの、これはデータ上の「ノイズ(雑音)」に過ぎないと分析しています。BenzingaはTSMCの株価は依然として強気相場にあるとし、今回の下落を「逆張りの好機」と捉える見方を示しました。