サイエンス

マヤ文明がどのように「日食を予測する表」を運用していたのかが明らかに


中央アメリカに紀元前から16世紀にかけて存在していたマヤ文明は、高度に発達した数学や天文学を持っており、日食や月食を予測していたこともわかっています。そんなマヤ文明の人々が「日食を予測する表」をどのように運用していたのかについて、新たな研究結果が学術誌のScience Advancesに発表されました。

The design and reconstructible history of the Mayan eclipse table of the Dresden Codex | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adt9039


Scientists Reveal How The Maya Predicted Eclipses For Centuries : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-reveal-how-the-maya-predicted-eclipses-for-centuries

現代のメキシコ南東部やグアテマラ付近に存在したマヤ文明は、ヨーロッパ人がアメリカ大陸を征服する以前から2000年以上にわたり、重要な天文学的イベントを予測する暦を使ってきました。しかし、これらの知識を記した文献の多くはスペイン異端審問によって破棄されてしまい、現存するものはごくわずかです。

そんなマヤ文明が残した数少ない書物のひとつが、13~14世紀のものとされているドレスデン絵文書です。ドレスデン絵文書は合計78ページにおよぶ蛇腹折りの文書で、11~12世紀に書かれた文書を写したものと推測されています。

ドレスデン絵文書の各ページには鮮やかな色彩のイラストが描かれ、天文学や占星術、季節、医学、儀式などに関する詳しい知識がマヤ文字で記されています。この中には日食を予測するための表(日食表)も含まれています。

天文現象を中心に構築および運営されていたマヤ文明において、日食を予測することは重要な仕事でした。テキサス大学の歴史家であるキンバリー・ブロイアー氏は、「特定の天体現象の時に何が起こったかを記録しておけば、周期が繰り返される際に事前に警告を受け、適切な予防策を講じることができました。司祭や統治者は破壊・復活・新生のサイクルを確実に継続させるため、どのように行動し、どのような儀式を行い、神々にどのような犠牲を捧げるべきかを知っていたのでしょう」と述べています

by Wikimedia Commons

ドレスデン絵文書に含まれる日食表の基準日から最終日が太陰暦にして405カ月、およそ1万1960日に及びますが、これが実際にはどのように機能するのかは解明されていませんでした。ドレスデン絵文書の日食表における問題が、「表の最後でリセットして、405カ月目に達したら1カ月目に戻る」という仕組みで運用した場合、うまく機能しないという点です。

アメリカのニューヨーク州立大学オールバニ校の言語学者であるジョン・ジュステソン氏と、ニューヨーク州立大学プラッツバーグ校の考古学者であるジャスティン・ローリー氏は、「表の最後を起点として次の表を作成した場合、次の表の適用時に予期せぬ日食が生じる可能性があります。再設定を繰り返すごとにその頻度は増加していきます」と指摘しています。

そこでジュステソン氏らは、表の最終月まで達したら最初に戻るという仕組みの代わりに、「表の358カ月目または223カ月目から新しい表を開始する」というアプローチを提案しています。この方法で表を運用すると、かなり高い精度で日食予測を行うことができるそうです。

現代の日食周期とこの運用方法を照合したところ、マヤの人々が西暦350~1150年の間に自分たちの領土で観測可能だったすべての日食を、正確に予測できることが確かめられました。ジュステソン氏らは、「この改訂によって表の有効性は無期限に維持され、134年間でわずか51分未満の誤差に収まります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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