セキュリティ特化型OS「GrapheneOS」が「国家による脅迫を受けた」としてフランスから撤退

GrapheneOSは、オープンソースで開発されているセキュリティとプライバシー保護に特化したAndroid系OSで、Google Pixelなどを安全に使うために利用されています。GrapheneOSはそのセキュリティの高さから麻薬密売人などに使用されることがあり、フランス政府は以前から「GrapheneOSは犯罪者向けのもの」と表現するなど敵対視していました。そのようなフランス政府やメディアの姿勢から、GrapheneOSはフランスに置いていたサーバーを移転することを発表しました。
GrapheneOS migrates server infrastructure from France amid police intimidation claims
https://www.privacyguides.org/news/2025/11/22/grapheneos-migrates-server-infrastructure-from-france-amid-police-intimidation-claims/

GrapheneOSはプライバシー保護に焦点を当てたAndroidベースのOSであり、「プライバシーを保護する機能が強力」ということは「悪事を働いても露見しにくい」ということにもなるため、過去にはフランスの治安当局が「隠れて生きる意思を裏付けるもの」として使用することが罪であるかのような調査報告を出したことがあります。GrapheneOSはこうしたフランス当局の姿勢に反発し、「ヨーロッパの独裁政権や、政権を支持するメディアで、GrapheneOSやPixelを犯罪者向け製品であるかのような誤った表現が使われていますが、GrapheneOSはこれらの勢力が全員に強要しようとしている『大規模監視警察国家』に反対しています」と非難しました。
Google Pixelとセキュリティ特化型OS「GrapheneOS」を警察が安直に犯罪者に結び付けているとOS公式が猛反論 - GIGAZINE
そんな中、2025年11月19日に、フランスのメディア・Le Parisienで「Google PixelとGrapheneOS:麻薬密売人が警察からデータを守るための秘密兵器」というニュースが報道されました。GrapheneOSはこの報道について、メディアおよびジャーナリストに対し「GrapheneOSについて、根拠のない、そして明らかに虚偽の主張をするためのプラットフォームを提供しながら、それらの主張を確認し反論する機会をまったく提供していません」と憤りを示しました。
特に、Le Parisienの報道では、検察当局者の発言として「GrapheneOSは犯罪組織とのつながりがあり、捜査に協力しないのであれば法的措置に出る」とコメントが掲載されており、GrapheneOSはこれを「事実無根であり、国家による法的脅迫だ」と問題視しています。GrapheneOSによると、フランス当局は「GrapheneOSがアクセス時にデータを消去する機能や偽アプリを含む犯罪者向けのOS」と主張していますが、それらの機能は公式版には存在せず、オープンソースとして公開しているGrapheneOSの「悪質なクローン」や「非公式版」と混同されているとのこと。
こうしたフランス当局の動きを受け、GrapheneOSはフランスでの事業を終了すると発表しました。GrapheneOSは、「フランスはオープンソースのプライバシープロジェクトにとってもはや安全ではない国であると判断しました。プロジェクトとユーザーを守るため、今後はフランスへの進出を完全に避けるつもりです。フランスの政府機関と法執行機関の行動と発言が極めて懸念すべき点です。彼らはGrapheneOSについて極めて不正確で中傷的な主張をしながら、明らかに私たちに対する措置を正当化しようとしています。彼らは手の内を見せたので、何か悪いことが起こる前に、私たちはフランスから撤退します」と述べています。
Here's another French journalist participating in fearmongering about GrapheneOS. That article is not measured. It provided a platform to make both unsubstantiated and provably false claims about GrapheneOS while providing no opportunity to see and respond to those claims.…
— GrapheneOS (@GrapheneOS) November 20, 2025
従来、GrapheneOSは公式サイトやソーシャルメディアなどの主要インフラをフランスに本社を置くヨーロッパ最大のクラウドコンピューティングサービスであるOVHに依存していました。今回の移行計画により、MastodonやオンラインコミュニティプラットフォームのDiscourseなどをカナダのローカルサーバーと共有サーバーの組み合わせに移行し、重要なウェブサイトインフラはドイツに拠点を置くウェブホスティングサービスのNetcupに移行するなど、OVHから脱却することを明らかにしています。また、安全上の懸念から、GrapheneOSの開発者たちはフランス国内での作業を禁止しているとのこと。
今回の件を受け、GrapheneOSは法執行機関やフォレンジック企業が捜査においてAndroid端末を突破するために使用している脆弱(ぜいじゃく)性を、GrapheneOSで修正することを目指し、AOSP(Android Open Source Project)に貢献していくと表明した上で、「Googleからのご連絡をお待ちしております」と述べています。
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