父親が2週間以上の育児休暇を取ることが子どもの発達の改善につながるとの研究結果

近年は母親だけでなく父親も育児休暇を取りやすくなっています。シンガポールで行われた研究により、「父親が2週間以上の育児休暇を取ること」が、子どもの発達の改善につながることがわかりました。
Paternity leave‐taking and early childhood development: A longitudinal analysis in Singapore - Li - 2025 - Journal of Marriage and Family - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jomf.13100

Two weeks of paternity leave linked to improved child development
https://www.psypost.org/two-weeks-of-paternity-leave-linked-to-improved-child-development/
これまでの研究では、父親が育児休暇を取得することが育児参加の促進や、家族の絆の強化と関連性があることがわかっています。しかし、父親の育児休暇が子どもの長期的発達に及ぼす影響については、よく理解されていないとのこと。
また、アジア諸国では多くの地域で父親の育児休暇が近年導入されたばかりか、そもそも導入されておらず、一部の国では数日間しか取得できないとのこと。なお、日本や韓国では子どもが満1歳になるまでの育児休暇が父親にも認められています。
シンガポール国立大学のWei-Jun Jean Yeung教授は、「シンガポールを含む多くのアジア社会は、出生率の上昇や、家庭内における男女不平等という課題に直面しています。一部の西側諸国(特に北欧諸国)では、親のワークライフバランスを改善して父親の育児参加を促進するため、数十年前からより長い育児休暇を導入してきました」と述べています。
今回Yeung教授らの研究チームは、「家族システム論」と「ソーシャル・キャピタル理論」という2つの理論的観点に基づき、父親の育児休暇がもたらす影響を調べました。
家族システム論とは、家族はつながりのある単位として機能し、父親の育児への関与といった家族の行動や経験が、子どもの発達や両親の関係などに影響するという理論です。またソーシャル・キャピタル理論は、親と子のような家族内の強い関係性と絆が、子どもの発達にプラスの影響を与えると提唱しています。

研究チームは、シンガポールの大規模なサンプルを対象に行われたシンガポール早期発達長期研究(SG-LEADS)のデータを用いました。被験者は、シンガポールで父親の育児休暇制度が始まった2013年5月1日以降に生まれた子どもとその親に限定され、最終的なサンプルには主な養育者が母親である3895人の子どもが含まれていました。
子どもの発達測定には、3歳以上の子どもを対象とした問題行動評価尺度(BPI)が用いられ、攻撃性などの外的行動と、不安などの内的行動の両方が評価されました。学業成績の評価には、文字と単語の識別テストと、ウッドコック・ジョンソン達成度テストの数的思考力を測る応用問題が用いられました。
重要な独立変数は「父親の育児休暇取得」であり、母親の報告に基づいて「父親がまったく育児休暇を取得していない」「父親が育児休暇を1週間取得した」「父親が育児休暇を2週間以上取得した」のいずれかに分類されました。さらに、父親が子どもの入浴やオムツ交換、遊びといった育児にどれほど参加しているのかや、父親と子どもの親密度といった情報についても母親を通じて収集したとのこと。
分析の結果、父親が2週間以上の育児休暇を取得することは、子どもの3~6歳および5~8歳時点における、文字と単語の識別能力スコアの向上に関連していることが示されました。数的思考力を測る応用問題についても、父親の2週間以上の育児休暇取得と、子どもの3~6歳時点のスコア向上と正の相関関係が確認されました。また、父親の1週間の育児休暇取得は、5~8歳時点における子どもの応用問題のスコア向上と関連していたと報告されています。これらの結果は、父親の育児休暇取得が、子どもの言語および数的思考力の発達に関連していることを示しています。

父親の育児休暇取得とさまざまな中間要因の間にも、さまざまな関連があることもわかっています。具体的には、2週間以上の育児休暇を取得することは、父親による育児への関与や父子間の親密度の高さ、良好な家庭環境といったものとの関連性がみられました。父親と子どもの親密度の高さは、3~6歳の子どもにおける数的思考力を測る応用問題のスコアとも関連していたとのことです。
一方、子どもの行動に対しては、父親の育児休暇取得は直接的な影響を与えませんでしたが、中間要因を介した影響が確認されました。父親による2週間以上の育児休暇取得は、3~6歳および5~8歳の子どもにおける行動上の問題の減少と関連していましたが、これは主に「家族関係の改善」によるものでした。つまり、父親の育児休暇取得が良好な家族環境を育み、それによって子どもの行動上の問題が軽減されるというわけです。
父親の育児休暇取得に関する研究については、「育児休暇を取得する父親は社会経済的地位が高い傾向にあり、それが子供の認知能力や行動に影響するのではないか」という指摘もあります。今回の研究チームはこの問題に対処するため、親の教育や収入、年齢、家庭環境といったさまざまな要因を考慮したとのこと。
Yeung氏は心理学系メディアのPsyPostに対し、「父親の育児休暇は家族関係と子どもの発達にいい影響を与えます」「家族と子どもの幸福に潜在的な利益をもたらすことから、少なくとも2週間の政府補助付きの育児休暇を提供し、父親が育児休暇を取得できるように各国に奨励すべきです」と述べました。
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