アンデス山脈の謎の穴「モンテ・シエルペ(穴の帯)」は古代の市場だった可能性があると研究が示唆

南米大陸を縦断する世界最長の山脈であるアンデス山脈には、「モンテ・シエルペ」と呼ばれる5000個以上の整列した穴ぼこがあります。謎に包まれていたモンテ・シエルペをドローン技術などを用いて調べたシドニー大学の研究チームは、それらの穴が何のために存在しているのかという新しい仮説について発表しました。
Mysterious holes in the Andes may have been an ancient marketplace, study suggests
https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2025/11/10/mysterious-holes-in-the-andes-may-have-been-an-ancient-marketplace-new-research-suggests.html
New study suggests accounting, not aliens, explains Peru’s mysterious ‘Band of Holes’
https://www.usf.edu/news/2025/new-study-suggests-accounting-not-aliens-explains-perus-mysterious-band-of-holes.aspx
モンテ・シエルペはスペイン語で「蛇の山」という意味で、英語圏では「Band of Holes(穴の帯)」とも呼ばれています。モンテ・シエルペはペルー南部に位置するピスコ渓谷を横切って1.5kmにわたって広がっており、セクションまたはブロックに分かれて、幅1~2m、深さ0.5~1mの穴が約5200個整列しています。以下は、シドニー大学の研究チームが論文で示したモンテ・シエルペの写真。

研究チームは、ドローン技術を用いてモンテ・シエルペ全体の地図を作成しました。地図を分析した結果、穴が意図して構成されたものであることを示唆する数学的パターンを発見したそうです。
また、穴の土壌分析により、アンデス山脈で採取される重要な主食であるトウモロコシの古代の花粉と、伝統的に籠作りに使用されてきた葦(あし)が発見されました。これは、人々が籠や植物を運搬に使用し、アンデス山脈に掘られた穴に埋蔵していたことを示唆しています。さらに、モンテ・シエルペの配置は、同じ谷から発見された「インカのキープ(古代の結び紐を使った会計装置)」の構造と類似していることも発見されました。
キープとは、長さ2mほどのヒモに10~20の結び目が連なっているもので、市場における物資の在庫などを管理しています。モンテ・シエルペでも同様に、穴に物々交換する物資などを収め、穴の数や配置によって、物資の種類や数、産出地域などを管理していたものだと考えられます。

シドニー大学でドローンマッピングを専門とするデジタル考古学者のジェイコブ・ボンガーズ氏は、発見した内容について「おそらくインカ以前の時代、モンテ・シエルペはノミの市のような市場だったのだと考えられます。航海商人やラマ隊商などの移動商人、農民や漁民などの専門家、その他多くの人々が、トウモロコシや綿花といった地元の品物を交換するために、モンテ・シエルペに集まっていたのでしょう。モンテ・シエルペは、人々を結びつけた市場であり、後にインカ帝国下で大規模な会計システムへと発展した一種の社会技術だと考えています」と説明しています。ボンガーズ氏によると、モンテ・シエルペが古代の市場だったという仮説が正しいとしたら、「なぜアンデス山脈全域ではなくピスコ渓谷付近のみに残っているのか」というのがさらなる疑問として残るとのこと。
また、論文の共著者で南フロリダ大学の人類学者であるチャールズ・スタニッシュ氏は「モンテ・シエルペは長年、疑似考古学の世界で目立っており、現地のデータは憶測や誤解が横行しています。モンテ・シエルペは、地域全体が常にかすみに覆われているため、山の上からでもその地形の全体像を見ることはできず、地表から測量するのが極めて困難です。そのため考古学者たちは正確な年代測定や解釈を行うことができませんでしたが、ドローン技術により高精度の低高度画像を入手でき、詳細な分析をすることができました」と研究の意義について語っています。
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in サイエンス, Posted by log1e_dh
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