「なるほど!」と思う瞬間「ひらめき」を生み出す脳の仕組みとひらめきが記憶に残る理由とは

分からないことに頭を悩ませていると、まるで突然答えが降ってきたかのように感じる「ひらめき」を覚えることがあります。このひらめきが一体どういう仕組みで生じるのかを、デューク大学の認知神経科学者たちが解明しました。
Insight predicts subsequent memory via cortical representational change and hippocampal activity | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-025-59355-4
How Your Brain Creates ‘Aha’ Moments and Why They Stick | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/how-your-brain-creates-aha-moments-and-why-they-stick-20251105/
ひらめきは、頭の中で光がはじけるがごとく一瞬で生じたように感じられます。こうした急激な情報理解は「表象変化」として知られていますが、脳が表象変化をどのように支えているのかは解明されていませんでした。
デューク大学の認知神経科学者、マキシ・ベッカー氏らは、人間にひらめきを与えるための課題を作り出し、答えをひらめいた人の脳を核磁気共鳴画像法(MRI)で撮影して脳機能を解明しようと試みました。
課題を作成するためにベッカー氏らが注目したのは、ムーニー画像と呼ばれる白黒写真でした。ムーニー画像は写真のコントラストを極限まで上げて白黒にしたもので、被写体が何なのか一目見ただけでは分からないようになっています。しかし、じっくり時間をかけて見ると、人によっては元の画像を推測することができ、強烈なひらめきを得られます。
以下がムーニー画像の例。クリックすると元の画像を確認できます。

ベッカー氏らは被験者をスキャナーに横たわらせ、合計120枚のムーニー画像を閲覧させました。被験者は各画像を10秒間閲覧した後、写っている物体を認識できたかどうかを回答。認識できた場合、認識したときにひらめきがあったか、ポジティブな感情を得られたか、認識はどの程度確信があったかといった一連の質問に回答しました。
ベッカー氏とそのチームは次に、ニューラルネットワークを用いて脳画像データを解析し、被験者がムーニー画像を正しく認識した際にどのような脳活動が発生するかを特定しようとしました。すると、被験者が物体を認識した瞬間、視覚パターン認識を担う腹側後頭側頭皮質(VOTC)、ポジティブ・ネガティブ両方の感情を処理する扁桃体、記憶処理に関わる海馬で、脳活動が増加することが観察されたとのことです。こうした一連の活動は、確信度が高く、ポジティブな体験をした際に強く反応していました。

ベッカー氏によれば、「海馬」がひらめきに関与しているとのことです。海馬は「脳の不一致検出器」とも呼ばれており、脳の予測と現実世界の出来事が一致しない際に反応します。今回の実験では、無意味に思えた画像に海馬が意味を与え、脳の予測に反する結果をもたらしたとのことです。
さらに、ベッカー氏らはひらめきが永続的な記憶を形成している可能性を探りました。先行研究では、ひらめきはアイデアを瞬間的に感じるだけのものではなく、そのアイデアを長期的に保持するのにも役立つということが指摘されていたとのこと。特に、課題を徐々に解決した場合と比べて、ひらめきは解決策をより強く記憶できる傾向がありました。ベッカー氏らは、その理由を理解したいと考えていました。
被験者にムーニー画像を見せた実験の数日後、研究チームはオンラインで追加のムーニー画像を見てもらいました。追加の画像には最初に見せた画像も含まれており、被験者がどれほど過去の画像を覚えているのかをチェックしようとしたのです。
その結果、被験者が「ひらめきがあった」「ポジティブな感情を得た」「確信度が高かった」という3つの尺度全てで高い評価をした画像ほど、よりよく記憶されていたことが分かりました。この結果から、ひらめきが記憶力の強化に役立つことが示唆されました。
また、VOTCと海馬の両方で活動が大きく増加した被験者ほど、ムーニー画像を強く記憶していることも分かりました。このことからベッカー氏らは、「脳活動の大幅な変化が体験を強くし、長期記憶の定着を促進したのではないか」と推測しています。

ただし、ひらめきは確かに記憶の定着を強めるものの、その記憶が正しいかどうかまで保証するものではありませんでした。今回の実験では、被験者が「ひらめいた」と思ったとしてもその推測が間違っているということが多々あり、「ひらめき」「ポジティブな感情」「確信度」の全てを高く評価した画像でさえ、勘違いしているということがあったそうです。
ベッカー氏らは「これらの知見は記憶形成のメカニズムを明らかにするもので、教育的意義を持つ可能性があります。問題解決と知識の保持のための効果的な手段として、ひらめき主導型の学習環境を育成することの重要性を浮き彫りにしています」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1p_kr
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