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テスラの家庭用蓄電池「Powerwall」のバッテリーはどのように劣化していくのか?


電気自動車メーカーのテスラが販売する家庭用蓄電池の「Powerwall」は、太陽光発電システムなどから得た余剰電力を蓄電し、停電を検知すると自動的に家庭内へ電気を供給することが可能です。そんなPowerwallのバッテリー状態を管理するアプリ「Netzero for Powerwall」の開発チームが、Powerwallのバッテリーが時間と共にどのように劣化していのかを分析しています。

Analysis of Powerwall Battery Retention
https://www.netzero.energy/content/2025-02/powerwall-analysis


Powerwallはテスラが開発する充電式のリチウムイオン家庭用バッテリーであり、2017年からは「Powerwall 2」が増産体制に入り、2023年には次世代バージョンの「Powerwall 3」が登場しました。日本でも展開されていて、GIGAZINE編集部でも導入済み。以下の記事では実際にGIGAZINE編集部にPowerwallを設置した際の様子を確認できます。

あのテスラが販売する家庭用蓄電池「Powerwall」を設置してみたよレポート - GIGAZINE


他のリチウムイオンバッテリーと同様に、Powerwallの容量は経年劣化や使用によって徐々に減少していきます。一般にPowerwall 2では、最初の設置から10年間にわたり、13.5kWhの定格容量の70%が保証されているそうです。

Powerwallの実際のバッテリー容量や劣化状況に関する状況は、テスラの公式アプリからは入手できません。しかし、Netzero for Powerwallはデバイスに直接接続して診断を行うことで、これらの情報にアクセス可能となっています。開発チームは、Netzero for Powerwallを通じてユーザーから匿名で収集したPowerwallのバッテリーデータを基に、バッテリーの劣化に関する統計データを公開しました。データは2025年初頭までに収集されたもので、2015年に製造が始まったPowerwall 1は統計に含まれていません。


Netzero for Powerwallで収集できるデータは以下の通り。

Powerwallの製造日:バッテリーのシリアル番号から推測可能とのことです。
部品番号:Powerwallのハードウェアリビジョンを示したもの。Powerwall 2には30種類以上の部品番号がありますが、統計データではより大まかなグループに分類しています。
公称フルパックエネルギー:バッテリー管理システムによる現在のフル容量の推定値で、統計データではkWh単位で記載されています。
生涯にわたる充電および充電エネルギー量:バッテリー使用率を示す指標であり、統計データではkWh単位で報告されています。分析では放電データを使用しているとのことです。

今回の分析では、ランダムに選択された2000台のPowerwall 2から収集したデータが用いられました。なお、個々のバッテリーの識別を防ぐために、測定値に対して結論に影響を与えない程度のランダムノイズを挿入しているとのこと。

以下のグラフは、X軸が製造日(左が古く、右が新しい)、Y軸が公称フルパックエネルギー(バッテリーのフル容量)を示しています。Powerwall 2の初期容量は公称の13.5kWhよりも多めであることや、最初の4年間に劣化して以降は比較的安定していること、多くのPowerwall 2は7年経過時点で13.5kWhの90%以内に収まっていることなどがわかります。また、2018年後半から2019年にかけて、劣化が著しい明確な外れ値のクラスターが存在していることもうかがえます。


部品番号ごとに色分けしたものが以下。2018年後半から2019年にかけての外れ値クラスターは、いずれも部品番号が「2012170」で始まっていることが確認できました。


X軸の製造日とY軸の公称フルパックエネルギーに加え、生涯にわたる放電エネルギーを色で示したグラフが以下。色が紫色に近いほど放電エネルギーが少なく、黄色に近いほど放電エネルギーが多いことを表しています。開発チームが予想していた通り、放電エネルギーが多いほど劣化率も高いことがうかがえます。たとえば2017年末に製造されたPowerwall 2では、利用率が低いユニットと利用率が高いユニットで約2kWhの容量差が生じていることがわかります。


放電エネルギーはサイクル数と各放電深度によって異なります。たとえば、停電などに備えてバッテリーのほぼ100%を維持し続けている場合、生涯放電エネルギーは少なくなりますが、太陽光発電の自家消費などの目的でバッテリーのほぼ100%を毎日使用していると、生涯放電エネルギーは多くなります。サンプルセットにおける最大放電値は約35MWhで、これは公称容量13.5kWhのPowerwall 2で100%の放電深度を想定した場合、実に2590サイクル(約7年間に相当)以上放電していることを意味しています。

また、開発チームは2025年初頭におけるPowerwall 3のバッテリー劣化についても報告しています。以下のグラフはX軸が製造日、Y軸が公称フルパックエネルギーを表したもので、サンプル数は500台です。全体的に、Powerwall 3の初期容量はPowerwall 2よりわずかに低いものの、劣化率は控えめであることがうかがえます。


開発チームは、上記のデータを公開してから約8カ月後の2025年10月に、追加データを含めたパート2を公開しています。

Analysis of Powerwall Battery Retention - Part 2
https://www.netzero.energy/content/2025-10/powerwall-analysis-2

以下はX軸が製造日、Y軸が公称フルパックエネルギー、色が部品番号を示したグラフです。サンプル数は4000台に増加したほか、前回の報告以降に収集されたデータも含まれています。全体的な傾向は以前と変わっていないことや、Powerwall 2の製造が2024年11月頃にほぼ終了したことなどがわかります。


以下のグラフは、Powerwall 2の経時的なバッテリー容量変化を示したグラフで、少なくとも6カ月以上の履歴を持つユニットが含まれています。初期に製造されたユニット(青色)はほとんど劣化が見られず、経時的に安定していることがわかります。また、一部のユニットではバッテリー容量が回復しているケースがみられますが、これは気温の変化やセルバランス機能の影響を反映している可能性があるとのこと。


また、Powerwall 3のデータセットも大幅に増加しました。合計4000台のサンプルから収集したデータを見ると、やはりPowerwall 3の初期容量はやや低いものの、製造後1年間の劣化はより緩やかであることがわかります。

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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