犬の多様性は品種改良が進んだ時期の数千年前から増え始めていたことが明らかに

現代では柴犬やポメラニアン、ダックスフント、パグ、ゴールデンレトリーバーなど多種多様な犬種が存在し、その多くは18~19世紀の品種改良によって生み出されたと考えられてきました。ところが、過去5万年間にわたる犬やその祖先のオオカミの頭蓋骨を調べた新たな研究で、犬の多様化は想定よりはるかに昔から始まっていたことがわかりました。
The emergence and diversification of dog morphology | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adt0995

Extensive dog diversity millennia before modern breeding practices - University of Exeter News
https://news.exeter.ac.uk/faculty-of-humanities-arts-and-social-sciences/archaeology-and-history/extensive-dog-diversity-millennia-before-modern-breeding-practices/
Doggie diversity in size and shape began at least 11,000 years ago | Reuters
https://www.reuters.com/lifestyle/doggie-diversity-size-shape-began-least-11000-years-ago-2025-11-13/
犬はもともと、オオカミが人間によって家畜化されて誕生した動物ですが、現代では形態学的に大きく異なる多様な犬種に分かれています。古くから、犬には幅広い労働やペットとしての役割が与えられていましたが、18世紀にはヨーロッパの富裕層の間で犬の品評会が始まり、19世紀にはこのブームが庶民にも拡大。これに伴って品種改良が加速したことで、現代における犬の多様性の大部分が生まれたといわれています。しかし、実際のところ犬の形態学的多様性がいつから拡大し始めたのかは、よくわかっていませんでした。
そこで、フランス国立科学研究センター(CNRS)やイギリスのエクセター大学などの国際研究チームは、過去5万年間にわたる犬やオオカミの頭蓋骨643点を分析し、頭蓋骨の大きさや形状がどのように変化していったのかを調べる研究を行いました。
分析の対象となった頭蓋骨643点の内訳は、現代の犬が158頭、現代のオオカミが86頭、古代の犬が281頭、古代のオオカミが118頭でした。40以上の機関から集まった考古学者や学芸員、生物学者からなる国際研究チームは頭蓋骨の3Dモデルを作成し、geometric morphometrics(幾何学的形態計測法)という手法を用いて大きさと形状について調べました。
以下は、今回の研究に用いられたイヌ科動物の頭蓋骨の写真です。

by C. Ameen(University of Exeter)
分析の結果、ロシアの遺跡から出土した約1万1000年前の頭蓋骨が、「明らかに家畜犬の形態」を示していることがわかりました。また、アメリカ大陸では約8500年前、アジアでは約7500年前に、飼い犬と同様の頭蓋骨形状を持つ初期の犬が存在していたことも判明しました。論文の共同共著者で、エクセター大学の生物考古学者であるカーリー・アミーン博士は、「家畜化の過程で、犬の頭蓋骨はオオカミに比べて短く、幅広くなりました」と述べています。
さらに、飼い犬に特有の頭蓋骨形状を持つ初期の個体が出現して以降、比較的急速にさまざまな形態学的変化が現れたことも示されました。犬の頭蓋骨におけるサイズの縮小は9700~8700年前に初めて確認され、サイズのばらつきの増大は7700年前からみられるとのこと。頭蓋骨の形状におけるばらつきが大きくなったのは、約8200年前からだそうです。
論文の共同筆頭著者であるCNRSのアロウェン・エヴィン博士は、「現代の犬は単頭種のブルドッグや長頭種のボルゾイなど、より極端な形態を呈していますが、これらは初期の考古学的標本には確認されません。しかし、新石器時代という早い時期から、犬種の間には大きな多様性がみられました。その多様性は更新世の標本の2倍であり、今日の犬種に見られる多様性の半分にも達していました」と述べています。
今回の研究結果は、犬の多様性が想定よりもはるかに昔から生じていたことを示しています。しかし、後期更新世の標本のどれにもオオカミから犬への家畜化の過程にある頭蓋骨の証拠は見つからず、最古の犬の起源をたどる難しさも示しています。
論文の共著者であるオックスフォード大学のグレガー・ラーソン教授は、「犬の家畜化の初期段階はいまだに解明されておらず、最初の犬は今もなお私たちの目を逃れ続けています。しかし、今や確信を持って示せるのは、犬は一度現れると急速に多様化したということです。その初期の変異は、自然の生態学的圧力と、人間と共に生きることで生じた深い影響の両方を反映しています」と述べました。

アミーン氏は、「これらの研究結果は、私たちと犬の関係の奥深い歴史を浮き彫りにしています。犬の多様性は、ヴィクトリア朝時代のブリーダーの産物というだけでなく、人間社会との数千年にわたる共進化の遺産なのです」とコメントしました。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1h_ik
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