サイエンス

「ストレス」はもともと一体何のための仕組みなのか?そしてなぜ有害になってしまったのか?


人間はストレスを感じると体や心の状態が変化し、ストレスの原因になるものに対処しようと試みます。ストレスは一体どういう仕組みで生じるのか、どうすればストレスを感じにくくなるのかといった点について、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しています。

You're More Stressed Than Ever - Let's Change That - YouTube


全ての生物は、体のバランスが保たれた状態を維持しようと努めています。体のバランスが保たれた状態を恒常性と言い、生物は恒常性を保つために日光を浴びたり栄養素を摂取したりするなどの調整を行います。


しかし現実世界は厳しく、害敵や環境要因によって恒常性は一瞬にして阻害されることがあります。こうした緊急事態に対応するための反応が、ストレスです。


ストレスの例として、人類の祖先がサーベルタイガーに襲われたと想定してみます。祖先の脳は虎を重大なストレス要因と見なし、ストレス反応を引き起こして体にさまざまな変化をもたらします。


例えば、副腎からアドレナリンを分泌し、交感神経を興奮させ、体に戦うか逃げるかの選択を迫る闘争・逃走反応を引き起こします。心臓の鼓動が早くなり、脈拍は上昇。アドレナリンにより全ての重要な臓器に緊急の栄養分と酸素が供給され、筋肉が他の器官よりも優先的にエネルギーを消費しはじめます。痛みや疲労の信号は弱まり、脅威に対処しようと試みるのです。


ところが、ストレス反応が長引くとやはり疲労はたまるものです。そこで新たなホルモン、コルチゾールが戦いに加わります。


コルチゾールは、より長いストレス反応を管理するホルモンです。消化など、ストレス対処に必須ではない体の機能を全て抑制しながら、燃料供給を増加させます。


複数のホルモンのおかげで敵との戦いに打ち勝った祖先の体は、闘争・逃走反応を停止させ、体の回復を促す休息と消化反応を活性化させます。眠ったり、食べたりして体を休め、元の恒常性を取り戻すのです。


現代では、人類がサーベルタイガーに襲われることはありません。ところが、人類の世界はあまりにも急速に変化したため、他の多くのストレスを感じるようになってしまい、人類の体はそれに追いつくことができませんでした。


現代の人類が遭遇するストレス要因のほとんどは抽象的かつ深刻で、数が多く、たいていの場合長続きします。サーベルタイガーと戦う時のように、その場ですぐ対処できるようなものでもありません。


こうしたストレス要因に、人間の体は容易に反応してしまいます。ストレスを感じることで競争に打ち勝ったり、自分のパフォーマンスを高めたりすることももちろん可能ですが、短期間や危機的な状況でのみ使用されるべきストレス反応が何カ月も続くと慢性的なストレスとなり、人間にとって致命的な状態をもたらしてしまいます。


慢性的なストレスを感じると、アドレナリンとコルチゾールが体内にあふれ続け、闘争・逃走反応が過剰に活性化され、休息と消化反応が抑制されます。これにより、緊張した筋肉が激しい痛みを感じるようになったり、消化器系に異常を来したり、脂肪の代謝が妨げられて脂肪の分解が遅くなったりします。加えて心臓発作や脳卒中のリスクが高まり、免疫システムも破壊されることになります。


また、迅速に考え対処する能力が活性化されるため、じっくり考える能力が低下し、認知機能が低下し、ジャンクフードを食べたり薬物を使用したりする衝動的な欲求が高まります。この状態が続くと不安やうつ状態になり、死期を早めてしまう可能性すらあります。


Kurzgesagtは「ストレスは決して悪いものではありませんが、ストレスを感じた後は闘争・逃走反応を適切に鎮めてリラックスすることが重要です。積極的にリラックスすれば、体や心に負担をかけることを防ぎ、ストレスの力を利用することさえできます。ストレスを多く感じてしまう環境にいるならば、ストレスの原因となるものを取り除いてください」と話しました。

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in 動画,   サイエンス, Posted by log1p_kr

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