サイエンス

ADHDの女性は月経前にイライラしたり不安になったりする「月経前不快気分障害(PMDD)」になる可能性が3倍も高い


注意欠如多動症(ADHD)と女性に関する研究は歴史的に不足しており、女性に特有の症状があるのかどうかや、月々のホルモンバランスの変化がADHDの女性にもたらす影響などは十分に理解されていません。新たな研究では、ADHDの女性は月経の前に抑うつ的な気分になったり、イライラしたり、不安になったり、強い不安や怒りを覚えたりする月経前不快気分障害(PMDD)になる可能性が著しく高いことが示されました。

Increased risk of provisional premenstrual dysphoric disorder (PMDD) among females with attention-deficit hyperactivity disorder (ADHD): cross-sectional survey study | The British Journal of Psychiatry | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/the-british-journal-of-psychiatry/article/increased-risk-of-provisional-premenstrual-dysphoric-disorder-pmdd-among-females-with-attentiondeficit-hyperactivity-disorder-adhd-crosssectional-survey-study/CD1DC6B31D4B009AB04F580C1189BC86


Women with ADHD three times more likely to experience premenstrual dysphoric disorder – new research
https://theconversation.com/women-with-adhd-three-times-more-likely-to-experience-premenstrual-dysphoric-disorder-new-research-260222

PMDDは世界中で女性の約3%が罹患(りかん)していると推定されており、月経の前に気分の変動やイライラ、抑うつ的な気分、不安といった精神症状が引き起こされ、日常生活に深刻な支障を来すこともあります。月経の数日前に現れ、月経が始まると治まる症状ではあるものの、自殺未遂のリスクが高まるなど深刻な結果につながる危険性もあるとのこと。

研究チームはADHDとPMDDの関連性を調べるため、イギリスに住む18歳~34歳の女性715人を対象にオンライン調査を実施しました。質問には「ADHDまたはPMDDに関する症状を経験したことがあるか」「医師からADHDの診断を受けたことがあるか」「症状が日常生活にどのような問題を引き起こしているのか」といったものが含まれました。


分析の結果、医師からADHDだと診断された女性の約31%がPMDDを併発していることや、ADHDの症状スコアが高い女性の約41%がPMDDを併発していることがわかりました。一方、ADHDの症状がない女性でPMDDの基準を満たしていた女性は約9%に過ぎないことが示されました。また、ADHDがある上に医師からうつ病または不安症だと診断された女性は、さらにPMDDのリスクが高かったとのことです。

女性が経験するPMDDの症状として最も多かったのは、「イライラ」「精神的に参ってしまう感覚」「抑うつ症状」でした。さらに、ADHDの女性にPMDDの症状が出ている間は、不眠症を経験する可能性も高くなったと報告されています。

今回の研究は、ADHDとPMDDの関連性を示した初の研究というわけではないものの、医師の診断を受けた女性だけでなく、ADHDの症状がある女性もPMDDのリスクが高いことを示した初の研究です。


これまでの研究では、ADHDの女性はホルモンバランスの変化がみられるその他の時期にも、精神疾患のリスクが高まることが示されています。たとえば、ADHDの女性は経口ホルモン避妊薬を服用し始めるとうつ病や不安症を発症する可能性が高いという研究結果や、非ADHDの女性よりも出産後にうつ病を発症する割合が高いという研究結果が報告されています。

ADHDの女性がなぜPMDDを発症しやすいのか、またどのような治療法が効果的なのかを知るにはさらなる研究が必要です。また、調査では被験者の自己申告に頼っていたため、PMDDの有病率が過大評価あるいは過小評価されている可能性もあるとのこと。

論文の共著者であり、ロンドン大学クイーン・メアリーで心理学上級講師を務めるジェシカ・アグニュー・ブライス氏は、「私たちの新たな研究によると、ADHDの女性はPMDDのリスクが高いグループであり、特にうつ病や不安症を併発している場合はその傾向が顕著です。これは、ADHDの女性におけるPMDDのスクリーニングを医師が検討し、この疾患に伴う苦痛や予後不良を軽減する必要があることを示唆しています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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