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日本アニメの海外配信を担当するCrunchyrollで字幕の品質が著しく低下している理由とは?


ソニーグループが所有するアニメのストリーミングサービスであるCrunchyrollは、日本アニメを日本での放送とほぼ同時に配信することで違法ダウンロードを減少させてきた動画配信サイトです。一時期は高品質な字幕が人気を集めましたが、記事作成時点では字幕の質が悪化しているという指摘があります。特に、2025年秋シーズンからCrunchyrollの字幕の品質が低下しているとして、なぜそのようなことが起こっているのかをDaiz.moeが解説しました。

Crunchyroll is destroying its subtitles for no good reason | Daiz.moe
https://daiz.moe/crunchyroll-is-destroying-its-subtitles-for-no-good-reason/

2025年の秋アニメから、Crunchyrollで配信されているアニメの字幕で「字幕がまったく表示されない」「字幕が極めてシンプルになる」「文字が小さく背景と被って読みにくい」「画面上のテキスト(看板やUI、メールなど)と複数キャラクターの発話が並んで表示されて区別が困難になる」といった視聴性・可読性の低下が報告されています。重要なメッセージや情報も1行ずつしか映らない場合がほとんどであるため、「ユーザーは内容把握のために一時停止を多用せざるを得なくなっている」とDaiz.moeは指摘しています。


これに対して、字幕の品質低下が指摘される前の字幕が以下。画面上のテキストの字幕はテキストの直下に、キャラクターのセリフの字幕は画面下部に表示されており、視聴性および可読性が2025年秋アニメの字幕よりも高いことは明らかです。


他にも、字幕を色分けするなどして複数話者の発語を区別するなどの工夫が行われていました。


このような、字幕を画面上の適切な位置に配置したり、色分けしたり、場合によってはフォントを変えたりする行為は「Typesetting(タイプセッティング)」と呼ばれています。

これまで日本アニメの字幕でまともなタイプセッティングを行っているのはCrunchyrollのみで、他のアニメ配信サイトは書体の設定すらまともに行っていないケースがほとんどだったそうです。実際、2025年秋アニメ以前のCrunchyrollの字幕(下)とNetflixの字幕(上)を比較した画像が以下で、比較するとNetflixの字幕が非常に読みづらく簡素なものであることは明らかです。


NetflixやAmazonプライム・ビデオといった大手ストリーミングサービスの配信ラインナップにおいてアニメが占める割合はほんの一部に過ぎません。しかし、世界中のアニメ視聴者の多くがこれらのサービスを使ってアニメを視聴していることは明らかです。

Crunchyrollは明らかにこのことを認識しており、それ故にこれまで何年もの間、Amazonプライム・ビデオとNetflixにアニメ作品をサブライセンスしてきました。しかし、こういったサブライセンスには「一般的なストリーミングサービスの字幕基準に対応しなければいけない」という問題が伴います。


例えばNetflixの場合、「画面に表示されるテキストの量は最大2行」といった制限が存在しており、これについてDaiz.moeは「アニメの字幕としては最悪の制限」と指摘しました。

そのため、NetflixやAmazonプライム・ビデオへのサブライセンスを維持しながら従来通りの優れたタイプセッティングを実現するには、Crunchyrollは「字幕ファイル形式のTTMLを採用し、サブライセンス先で利用していないさまざまな機能について利用許可を得るべく交渉する」あるいは「一般的なストリーミングサービスのひどい字幕規格に準拠し、タイプセッティングを諦める」のいずれかを選択する必要がありました。そして、Daiz.moeは「Crunchyrollが前者を試したかどうかは分かりませんが、最終的に後者を実行したと断言できます」と指摘。さらに、Daiz.moeは「この情報は匿名を希望した複数のCrunchyroll従業員から提供されたものです」と記しています。

Crunchyrollがこれまで字幕の作成に採用してきたファイル形式は「Advanced SubStation Alpha(ASS)」です。ASSは画面演出と一体化したタイプセッティングが可能という点で優れていました。Daiz.moeはASSからTTMLへの移行について、「おそらくCrunchyrollの最終目標は、独自のASSベースの字幕レンダリングを完全に廃止し、より『業界標準』的なTTMLベースの字幕レンダリングを採用することです。これは、ASSからTTMLへの手動変換に人件費を費やす必要がなくなるだけでなく、ASSレンダリングが不可能な(ただし、何らかのTTMLレンダリングは通常可能です)限定的な再生環境向けの、比較的高価な完全ハードサブエンコードを廃止できることを意味します」と指摘しました。


Crunchyrollの広報担当者は海外アニメメディアのAnime News Networkに対して、「ここ数日、一部ユーザーから希望のコンテンツへのアクセスに遅延が生じているとの報告や、特定の作品で字幕が表示されなかったりする問題が報告されています。これは字幕作成方法の変更、新しいベンダーの導入、AIの導入によるものではなく、システム内部の問題によるものです。この内部問題は現在、完全に解決されています。Crunchyrollでアニメを視聴する上で、質の高い字幕は欠かせません。字幕は世界中のファンを物語の核心に繋ぐためのものであり、我々はその責任を真摯に受け止めています」という声明を出しました。

これについて、Daiz.moeは「この声明を受けて、2025年秋アニメの一部で字幕がASSからTTML、さらにTTMLからASSへの変換などが行われており、Crunchyrollのタイプセッティングの未来は非常に不透明です」と指摘。加えて、「Crunchyrollに加入している方は、解約しましょう。理由を聞かれたら、字幕の品質の悪さと文字の不備について説明しましょう。さらに、Crunchyrollの字幕の悪さを拡散することも有効です。そうすることで、Crunchyrollの幹部が字幕問題を無視することができなくなれば、字幕の改善につながる可能性があります」と述べました。

ソーシャル掲示板のReddit上では「CrunchyrollはNetflixとどちらの字幕の品質がより悪いか競争することにしたようです」や「Crunchyrollは、合法に読みやすくて見やすい字幕を提供していた最後の会社でした。翻訳文化がなく、学術界やアジア系メディアのファンダム以外にほとんど関心のないアメリカが、字幕の見た目を決めているというのは本当に残念です。字幕のルールを作る人たちにとって、字幕は主に視覚や聴覚に障害のある人のために存在するもので、目立つのは当然であり、位置調整はできません。目は動かないはずです。画面上のテキストを翻訳することなど、彼らにとって思いつくことではなく、考慮する要素にもなりません」といった指摘が挙がっています。

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in ネットサービス,   アニメ, Posted by logu_ii

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