約3000万円もの請求書が病院から届いたがAIを使って交渉して約560万円まで減額できたという体験談

「病院から19万5000ドル(約2970万円)もの法外な額の請求書が届いたが、AnthropicのチャットAIであるClaudeやChatGPTを使って交渉することで、3万7000ドル(約560万円)まで減額できた」という体験談が、短文投稿SNSのThreadsで報告されました。
Threadsユーザーであるマット・ローゼンバーグ(@nthmonkey)さんの義理の兄は、2025年6月に心臓発作で病院に運ばれ、4時間ほどで亡くなってしまいました。ところが、その後に病院から届いた請求書にはなんと19万5000ドルという法外な金額が記載されていたそうです。そこでローゼンバーグさんは、義理の姉の医療費交渉をサポートすることにしました。
まずローゼンバーグさんは、アメリカの公的医療保険制度であるメディケアに入っていたら支払ったであろう金額を推定し、交渉の基準額を把握することにしました。最初に受け取った請求書の区分が非常に大ざっぱだったため、さらに詳しい請求書を要求したものの、請求書に記されていた区分コードは病院独自のものであり、メディケアのデータベースとは一致しませんでした。
そのため、ローゼンバーグさんは標準の医師診療行為用語(CPT)コードを記載した請求書を要求しましたが返答はなく、再度問い合わせたところ「ああ、送るつもりだったんです。5カ月前にコンピューターをアップグレードしたら何も機能しなくなって」と言い訳されたそうです。
ようやくCPTコード記載の請求書を手に入れたローゼンバーグさんは、これをチャットAIのClaudeに読み込ませました。すると、Claudeはメディケアの「特定のCPTコードが適用されると、その診療中のその他の手技や消耗品はすべて請求不可になる」というルールを教えてくれたとのこと。しかし、病院は主要な項目のCPTコードについて請求した後、本来であれば請求されない小項目について個別にCPTコードを記載し、重複して請求していました。
こうして重複して請求された総額は10万ドル(約1500万円)以上に達し、これらはメディケアでも支払わないものでした。また、義理の兄は急患として病院に着いてすぐに亡くなったため、一瞬たりとも入院扱いになったことはありませんでしたが、請求書には入院患者のみに適用されるCPTコードも含まれていたそうです。
さらに請求書に記載されていた人工呼吸器サービスについても、メディケアによれば「集中治療と同日には請求できない」とされていたとのこと。また、その他の消耗品もメディケアの支払額の500%~2300%という法外な金額で請求されていました。ローゼンバーグさんは、「要するに病院は独自のルールと価格を設定し、知識のない人々からお金を搾り取れると考えたのです」と指摘しています。
ローゼンバーグさんが病院に請求額が法外だと伝えたところ、請求額を引き下げる代わりに「慈善援助」扱いにする申請をするように求めてきました。しかし、支払い義務を負った義理の姉は十分裕福であり、夫の死によって100万ドル(約1億5000万円)の生命保険金を受け取っているため、慈善の対象にはなりませんでした。このように、病院が請求額を引き下げる代わりに慈善援助申請を行うよう求めるのは、病院が免税資格を得るために慈善活動を提供する義務があるからだそうです。
ローゼンバーグさんは病院の要求について、そもそも不要な請求を帳消しにする代わりに、人々に善行を施しているかのように見せかけるめちゃくちゃなシステムだと批判しています。そのためローゼンバーグさんはClaudeの助言を得て病院の請求違反を指摘し、法的措置・悪評の拡散・議会への召喚を警告する書簡を作成。メディケアと同様の支払い金額を認めない場合、これらの措置をとると警告しました。
このように、請求額の交渉を行っていることや、慈善を求めているわけでもない点を書簡に明記して、病院を法廷や公の場で反論できない立場に追い込みました。実際にローゼンバーグさんは、病院が要求に応じない場合はこれらの措置をとる覚悟があったとも述べています。最終的に病院側が折れて、3万7000ドルという請求額で応じたとのことです。
ローゼンバーグさんは今回の交渉においてAIアシスタントをフル活用しましたが、それに依存することはせず、重要な発見についてはその都度自分で調べて、内容が正しいことを確認したとのこと。以前から使っていた月額20ドル(約3000円)のClaudeサブスクリプションに加え、ChatGPTのサブスクリプションにも1カ月加入したそうですが、その元は十分に取れたとローゼンバーグさんは述べています。
ローゼンバーグさんは、「病院は自らが犯罪者であると自覚しているため、しっかり指摘すれば引き下がります。大声で怒鳴るのではなく、弁護士が書くような文面で、適切な抑揚と口調、そして脅しを含めた手紙を送るのです」「結局のところ私が得た最大の教訓は、国内最大の医療保険支払機関(メディケア)が支払う金額を超えて支払うべきではないということです。私はその金額を導き出すツールを利用できましたが、道徳的な問題があるのは明らかです。誰一人として、メディケアが支払う額を超えた自己負担をするべきではありません。誰一人としてです。これ以上、病院側にこの行為を許してはなりません」と主張しました。
この体験談はソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも大きな話題となっており、似たような体験談も多数寄せられています。
Using AI to negotiate a $195k hospital bill down to $33k | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=45734582
あるユーザーは、「6歳の子どもの命に関わる手術の直前に保険会社が支払いを拒否したため、ChatGPTのアドバイスを受けながら交渉して支払いを認めさせることができた」とコメントしており、別のユーザーは「娘を医療機関に搬送した救急車の費用として4000ドル(約60万円)を請求され、たまたま勤務先の福利厚生で加入していた医療費交渉サービスを利用して、なんとか500ドル(約7万5000円)まで減額できた」と述べています。
また、アメリカにおける医療費請求の構造自体を非難する声も多く、「病院も保険会社も、大勢の人々が彼らを恐れて言われた金額を支払うことを承知の上で、要求できる最大限の金額を求めているのです」「保険会社も病院も、どちらも汚い金儲けの機械だ」と指摘するユーザーもいました。
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