「排水溝にコーヒーを流すべきではない」と科学者が呼びかける理由とは?

街中でコーヒーを買ったもののどうしても飲みきれなかったり、緊急事態でコーヒーを持っている手を空ける必要が生じたりした場合、やむを得ずコーヒーを排水溝に捨てたことがある人もいるかもしれません。ところが、イギリスのオープン大学で環境システムの上級講師を務めるケビン・コリンズ氏は、コーヒーを排水溝に捨てるべきではないとして、その理由を解説しています。
Should you pour coffee down the drain? An environmental scientist explains
https://theconversation.com/should-you-pour-coffee-down-the-drain-an-environmental-scientist-explains-268236

◆コーヒーを排水溝に流してはいけないのか?
2025年のある日、ロンドンに住む女性がバスに乗る前にコーヒーを排水溝に捨てたところ、150ポンド(約3万円)の罰金が科される事態が発生しました。後に罰金は取り消されましたが、これをきっかけに「コーヒーを捨てることは環境破壊になるのか?」という議論が巻き起こったとのこと。
イギリスでは1日あたり約9800万杯、世界全体では約20億杯ものコーヒーが消費されているそうです。これらのコーヒーに含まれるカフェインは、眠気を吹き飛ばしてシャキッとしたい人にとってありがたい覚醒効果をもたらしますが、飲み残しを捨てると河川や水路に問題を引き起こす可能性があるとコリンズ氏は指摘しています。
コーヒーを排水溝に捨てる上でネックになるのが、1本のパイプで街路からの雨水と家庭排水を下水処理場に送り込む合流式下水道の存在です。イギリスの大部分では合流式下水道が採用されており、このパイプに流れ込むコーヒーの量が増えれば、カフェインやその他の化学物質が十分に処理されず、河川に流れ込む可能性が高くなります。特にカフェインは分解が難しいため、新興汚染物質とみなされており、2003年の時点でカフェインがスイスの湖や川を汚染していることが示されています。
また、仮にカフェインレスであってもコーヒーは排水溝に流すべきではないとのこと。コーヒーはすべての水の水素イオン指数(pH)を下げるほか、分解される際に水から酸素を奪う化合物も含まれています。さらにコーヒーに含まれる栄養素が藻類の増殖を促し、川や湖の酸素欠乏を加速させてしまう場合もあるとコリンズ氏は述べました。

◆なぜカフェインが問題なのか?
コーヒーを排水溝に流したとしても、それが最終的に下水処理場に送られるなら、問題はないと考える人もいるかもしれません。しかし、下水処理場のカフェイン処理能力は処理施設の種類や設計、季節、気温、その他の要素によって変動し、60~100%の幅があるとのこと。つまり、下水処理場に送られたすべてのカフェインが処理されるとは限らず、ある程度は未処理のまま河川や海に排出されてしまうというわけです。
さらに合流式下水道の場合、大雨などで下水管の容量が限界に達すると、下水が住宅や施設に浸水するのを防ぐため、未処理の汚水をそのまま河川や水路に流すように設計されています。これにより、コーヒーを捨てたのが街中の排水溝だろうとキッチンのシンクだろうと関係なく、カフェインの一部は河川や海に流れ込んでしまうとのこと。
すでに水域のカフェイン汚染は世界各地で問題となっており、104カ国にある258の河川を調査した2021年の研究では、サンプル採取地点の50%以上でカフェインが検出されました。近年はカフェインが一部の淡水藻類や植物、水生昆虫の代謝や成長、運動性に影響を及ぼして死に至らしめるという研究結果や、カフェインが海洋生物に影響を与えるといった研究結果が報告されています。

◆排水溝に捨ててはいけないものとは?
仮にその地域が合流式下水道ではなく、汚水用パイプと雨水用パイプが分けられている分流式下水道が整備されているのであれば、シンクに流した液体は下水処理場に送り込まれます。しかし、合流式下水道の地域では液体をシンクに流しても排水溝に流しても、大して違いはないとのこと。
そのためコリンズ氏は、「排水溝は水道システムの一部です。川や湖、海岸、海に流れてほしくないものは、排水溝に流さないでください。つまりコーヒーやコーヒーかす、食品由来の液体、油、塗料、高温の油脂、洗剤、漂白剤、建築工事で発生した液体などは流さずに、適切な家庭用ゴミ箱または廃棄物収集センターに廃棄してください」と呼びかけています。
もし、いつも余ったコーヒーを捨てているのであれば、そもそも作るコーヒーの量を減らすといった対策が考えられます。また、ミルクや砂糖が入っていないコーヒーであれば、薄めて植物の栄養剤として使用することも可能なほか、コーヒーかすは土壌の有機物含有量を増やす肥料としても活用できるとのことです。
なお、自治体によってはコーヒーかすをシンクに流してもOKな場合があります。例えば富山県黒部市では下水に含まれるコーヒーかすを発電燃料へと作り替える仕組みが整っており、市の公式サイトで「黒部市民のみなさん!ご家庭からのコーヒー粕を、シンク等から下水道へ流してみませんか?」と呼びかけています。
コーヒー粕は下水へ(脱炭素の取組)|黒部市
https://www.city.kurobe.toyama.jp/news/detail.aspx?servno=32618
・関連記事
コーヒーは周囲の生物多様性に良い影響を与えているという研究報告 - GIGAZINE
コーヒーの出がらしでコンクリートの強度が30%向上する - GIGAZINE
コーヒーが体に与える良い影響と悪い影響 - GIGAZINE
コーヒーを1日3杯飲む人は寿命が約2年長くなる可能性 - GIGAZINE
コーヒー中毒者がコーヒーをやめて分かった「コーヒーのメリット/デメリット」とは? - GIGAZINE
気候変動でコーヒーはまずくなる - GIGAZINE
気候変動で「コーヒー豆」の生産が危機的状況に陥っている - GIGAZINE
裕福な地域と貧しい地域の違いが「下水に含まれる物質」から判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, 食, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Why scientists say you shouldn't pou….







