実はそんなに怖がる必要のない「よくある飛行機事故」4選

空の上で逃げ場がなく、事故が起きれば最悪の場合は死に至るという航空機内で、普段とは違う異常事態が発生すれば何でも怖く思えてしまうのは当然です。グリフィス大学航空学上級講師のグイド・カリム・ジュニア氏は、「怖く感じるものの、実際は想定された事故」を取り上げ、そうした事故が起きたときにどう対処されるかを解説しています。
These 4 aeroplane failures are more common than you think – and not as scary as they sound
https://theconversation.com/these-4-aeroplane-failures-are-more-common-than-you-think-and-not-as-scary-as-they-sound-265866

カリム・ジュニア氏は、「パイロットは事故に対処するため徹底的に訓練を受けており、チェックリストにはそれぞれの問題への対処法が詳細に記載されています。航空機は多重の冗長性を持って設計され、警告システムがパイロットに問題を知らせます。急降下や緊急着陸は必ずしも災害を意味しません。それは通常、安全システムが想定通りに機能している証なのです」と述べ、よくある一般的な事故として4つの事例を紹介しました。
◆1:空調・加圧システムの不具合
巡航高度では、エンジンから供給された空気を空調装置で調整し、機内を快適な気圧(客室高度)に保っています。この人工気圧により、機外の大気が人体に極めて有害な環境であるにもかかわらず、人間は快適に過ごすことができるのです。ところが、システムに異常が発生したり、何らかの理由で気圧が変化したりした場合、乗務員は潜在的な問題が発生したとみなして直ちに事故を防ぐためのプロトコルを開始します。
客室加圧に異常を感知すると、パイロットは直ちに自身の酸素マスクを着用し、緊急事態を宣言。緊急降下チェックリストに従い、航空機を可能な限り迅速に規定の高度まで降下させます。その後、通常は代替空港への着陸または出発空港への引き返しが行われます。
プロトコルが始まると、しばしば急激だと感じられる降下が始まったり、耳が詰まった感覚が表れたり、そして時には酸素マスクの装着を求められたりします。酸素マスクが展開されないまま急降下するのが最も一般的な措置です。

◆2:エンジン故障
エンジンが2基搭載されている旅客機は、片方のエンジンが停止しても安全に飛行できるという認証を受けています。とはいえ、1つでもエンジンが故障すると深刻な問題になるので、パイロットは少なくとも年1回は、フライトシミュレーターでエンジンが1基故障した想定で徹底的に訓練するとのことです。
2つのエンジンが両方とも故障する例は極めて珍しく、例えば「ハドソン川の奇跡」で知られるUSエアウェイズ1549便不時着水事故は、バードストライクによる両エンジンの故障が原因でした。
エンジンが故障すると、機内からは大きな爆発音が聞こえるほか、エンジンから火が出ているのが見え、振動、焦げ臭い匂い、あるいは突然の静寂を感じることがあります。
パイロットは、警告を受けた後に影響を受けたエンジンを特定し、チェックリストに従って対処します。通常、問題のあるエンジンを停止させ、適切な高度へ降下し、巡航中の場合は経路変更、離陸直後であれば出発空港への引き返しなどを行います。
エンジン故障が他のシステムに損傷を与えた場合は警告の連鎖が生じることになりますが、パイロットはこの訓練も受けています。
直近では、2025年9月10日にサンフランシスコ行きアメリカン航空2035便がバードストライクに遭い、エンジンから出火しましたが、無事着陸に成功しています。このときは機内で煙の匂いがし、何かが燃えているのが確認されたそうです。

◆3:油圧トラブルと飛行制御装置
飛行制御装置の多くは複数の油圧システムまたは電気システムによって作動します。これにより、いずれかのシステムに不具合が生じても他のシステムがそれを補完することになります。
仮にこうした装置にトラブルが発生した場合、パイロットは用意されたチェックリストを使用して、速度、距離、着陸構成を調整し、安全な着陸を試みます。2025年7月には、カンタス航空のメルボルン行きQF2079便が油圧系統の問題により緊急着陸を行いました。乗客らは機内で「フラップが動かなくなっているため引き返す」と説明されたといいます。
こうした対応が可能なのは、1989年のユナイテッド航空232便不時着事故における油圧システム全喪失など、過去の極限状態から得られた教訓が現代の航空機設計や訓練プログラムに反映されているためだそうです。
◆4:着陸装置とブレーキシステムの故障
旅客機には格納式着陸装置が装備されており、飛行中のほとんどは格納庫内に収められています。タイヤを着陸前に展開する光景はよく見られますが、こうした装置には可動部品が多いため、着陸装置が正常に展開・格納されない場合や、油圧システム喪失などブレーキシステムによって機能不全に陥ることがあります。
こうした場合、胴体着陸を余儀なくされることがあるため、機内では客室乗務員による「衝撃に備えて」という警告が発せられます。このような事態にも、正しい対処法が用意されており、乗務員はそれに従って行動します。

カリム・ジュニア氏は「チェックリスト、徹底した訓練、数十年にわたる専門知識、それに複数の冗長システムと堅牢な設計によって航空機の安全は支えられています。そしてこうしたフライトは、通常は無事に地上に着陸し、乗客が少し動揺する程度で終わるのです」と述べました。
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