なぜ男性よりも女性の方が片頭痛を起こしやすいのか?

男性と比べると、女性の方がはるかに片頭痛を起こしやすいことが明らかになっているのですが、なぜそのような違いが生じるのかについて、モナッシュ大学の研究者が解説しています。
Why is migraine more common in women than men?
https://theconversation.com/why-is-migraine-more-common-in-women-than-men-265293

子どもの頃は、男女ともに片頭痛を経験しますが、思春期以降は女性の方が片頭痛を経験する可能性が2~3倍も高くなるそうです。また、2025年にオーストラリアで行われた調査により、女性の3人に1人が片頭痛に悩まされていることが明らかになっています。これに対して、片頭痛に悩まされている男性はわずか15人に1人だそうです。
片頭痛は単なるひどい頭痛ではなく、脳が感覚情報を異常処理してしまうという複雑な障害です。そのため、片頭痛を起こすと五感の情報を処理するのが困難になり、以下のような症状を起こしてしまうケースがあります。
・視覚(光に対する過敏症やまぶしさの問題につながる)
・聴覚(騒音過敏症につながる)
・嗅覚(特定の匂いは頭痛を引き起こす可能性がある)
・触覚(顔や頭皮の痛みにつながる)
・味覚(味覚異常、吐き気、嘔吐を引き起こす)
片頭痛の発作は通常、4時間から3日間(72時間)続きますが、それ以上続くケースもある模様。上記の症状に加えて、ズキズキするような頭痛、めまい、倦怠感、集中力の低下などの症状が現れることもあります。片頭痛の診断では、「どこで頭痛がするか」や「頭痛の程度」以上に、付随する症状の有無が重要になるそうです。

思春期は男女の違いが顕著に現れる時期です。この時期、人間の身体は性ホルモンの分泌を大幅に増加させます。男性と女性の両方でエストロゲン・プロゲステロン・テストステロンが分泌されますが、男性は特にテストステロンの値が高く、女性はエストロゲンとプロゲステロンの値が高くなるそうです。
多くの女性は、思春期・月経・妊娠・閉経期といったホルモンが大きく変動するタイミングで片頭痛を悪化させます。例えば、女性の中には月経周期に関連してエストロゲンの値が低下するタイミングで、一緒に片頭痛を発症する人がいるそうです。通常、片頭痛の発作は出血の数日前に始まるため、片頭痛から月経のタイミングを予測できる場合もあるとのこと。
片頭痛に悩まされている女性は、ホルモンの変化に敏感になりやすい傾向があります。特にエストロゲンの急激な減少が顕著ですが、ホルモンの微妙な変化が片頭痛を引き起こすこともあるそうです。このような片頭痛が起きる前に発生するホルモンの変化は皮質拡延性抑制などの、片頭痛を引き起こす脳のプロセスを活性化させる可能性があります。これらは脳内に広がる非常にゆっくりとした電気活動の波のようなもので、それが通過した後、一部の領域の機能が他の領域よりも低下するそうです。
エストロゲンの減少は三叉神経を介した情報の受信と処理にも影響を与えます。これは片頭痛の発症と持続に重要な役割を果たしています

妊娠すると、それまで片頭痛がうまくコントロールできていたとしても、再び片頭痛が不安定になり、発作が起きやすくなることがよくあります。片頭痛の症状は、妊娠を維持するために必要な急激なホルモン変化により、特に妊娠初期にコントロール不能になることがあるそうです。ただし通常は、ホルモン変化が安定する妊娠中期から後期にかけて治まります。
しかし、妊娠後期になるとエストロゲンの値が妊娠前の30倍、プロゲステロンの値が妊娠前の20倍まで上昇することがあります。その後、出産してこれらのホルモンの値が急激に低下して正常値に戻ると、片頭痛発作が再び急激に悪化するケースがあるそうです。
卵巣は周期的にエストロゲンを生成していますが、閉経期になると卵巣内の卵子の数が減少するため、エストロゲンの生成が不規則に急増することがあります。この不規則なエストロゲンの生成により、片頭痛発作が不規則に急増し、更年期障害と併発することでより大きな問題になることもあるそうです。
ホルモン避妊薬や更年期のホルモン療法も片頭痛のコントロールに影響を及ぼす可能性があります。ホルモン補充療法を毎日定期的に行うと、ホルモン感受性頭痛などの症状をコントロールできる可能性がありますが、ホルモンを補充することで片頭痛が悪化してしまう可能性があるわけです。

片頭痛には遺伝も影響します。片頭痛は母方の家系から受け継がれるそうで、これは母親がミトコンドリアを子どもに受け継ぐためです。ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを制御する役割を担っていますが、片頭痛持ちのミトコンドリア内の酵素は減少しており、脳はエネルギー不足の状態にあるそうです。この状態で片頭痛の発作が起きると、脳へのストレスがさらに増し、状態はさらに悪化します。睡眠不足や空腹、精神的ストレスなどの余計なストレスが片頭痛を引き起こし、痛みを悪化させるのも同じメカニズムです。
女性の片頭痛と不安やうつ病の間にも強い関連があり、これらはストレスの多い生活上の出来事に反応して女性が発症する可能性が高い症状でもあります。
ホルモンが片頭痛の発作に影響を与えているのではないかと疑われる場合は、頭痛などの症状を記録しておくことが効果的です。毎月、片頭痛の症状が出る日と生理日を記録し、パターンを見つけることをモナッシュ大学研究チームは推奨しています。
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in サイエンス, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article Why are women more susceptible to migrai….







