セキュリティ

Amazon Web Services(AWS)障害が大規模化したのは「us-east-1」リージョンがSPOF化していることに起因している

by Tony Webster from Minneapolis, Minnesota, United States

日本時間の2025年10月20日(月)15時49分頃から、Amazon Web Services(AWS)のus-east(アメリカ東部)-1リージョンで大規模な障害が発生しました。この影響でAmazonのほか、クラウドベースのサーバーでデータをホストしている世界中のアプリやネットサービス、任天堂のNintendo Switch Onlineなどのオンラインゲームシステムなど、多数のサービスが停止を余儀なくされました。記事作成時点ではすでに復旧し、原因特定が進められています。

Service health - Oct 21, 2025 | AWS Health Dashboard | Global
https://health.aws.amazon.com/health/status?ts=20251020

Amazon Web Services event: Follow live updates on AWS Health Dashboard
https://www.aboutamazon.com/news/aws/aws-service-disruptions-outage-update

Amazonのus-east-1リージョンはアメリカ北バージニア州ローダウン郡のにある世界最大規模のデータセンター集積地、データセンター・アレイ(Data Center Alley)に位置します。この地域にデータセンターが集中する理由は、連邦政府への近接性と税制優遇措置があり、特に一定の投資額と雇用を条件に機器・ソフトウェアの販売税免除が受けられる制度が、AWSなどの急速な拡大を後押ししています。

AWSによると、日本時間の10月20日15時49分から18時24分までの間、us-east-1リージョンのエラー率とレイテンシーが増加したとのこと。この障害はAmazon.comや関連子会社、さらにAWSサポートセンターのケース作成機能にも影響し、顧客がサポートチケットを作成できない状況となりました。また、AmazonやAmazon Primeビデオ、Amazonの防犯カメラサービス「Ring」、AmazonのAIアシスタント「Alexa」がダウンする事態に発展しました。


さらに、AWSにデータベースを置くサービスは軒並みこの障害の影響を受け、一時停止に追い込まれました。例えば、AppleのApp Storeがダウン。


イギリス政府の公式サイトも接続できない状態に。


イギリス大手金融のロイズ銀行もサービスの大部分が障害の影響を受け、ダウンしてしまった模様。


日本郵便のクリックポストでも、Amazon Payが使えなくなった事象が確認されています。

クリックポスト|日本郵便
https://clickpost.jp/

2025/10/20 Amazon Payでのお支払いができない状況について
10月20日(月)16時15分頃から、Amazon Payにてお支払い手続きができない事象が発生しております。
ご利用の皆様には多大なご迷惑をお掛け致しておりますこと、深くお詫び申し上げます。
なお、本件に関しまして、現在確認中ではございますが、復旧または進捗があり次第こちらにて再度ご案内させていただきます。


ゲームの『フォートナイト』はログインができない状態になってしまったとのこと。


『パルワールド』はマルチプレイ接続に障害発生。


任天堂はネットワークサービス全般がストップ。


フロムソフトウェアの『ELDEN RING NIGHTREIGN』も影響を受けています。


Cloudflare Radarでは、このAWS us-east-1リージョンの障害の影響でトラフィックが通常時よりも約71%減少したと報告されています。


一方、X(旧Twitter)はダウンを回避していました。Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は「Xは機能しています」とポスト。


さらに「(X Chatの)メッセージは完全に暗号化されており、広告や変な『AWS依存関係』が一切なく、たとえ誰かが私の頭に銃を突きつけたとしても、あなたのメッセージを読むことができません」と述べ、ここぞとばかりにX Chatをアピールしました。


また、経済紙のBloombergは独自のデータセンターを有しているため、障害の影響を回避したとのこと。


10月20日17時26分、問題の発生源がDynamoDBのリージョンエンドポイントにおけるDNS解決の不具合であると特定されました。AWSのエンジニアが同時に複数の経路で復旧作業を進め、18時24分までにDNSの障害を解消され、この時点で各サービスは回復を開始しました。

ただし、DNS障害の解消後も、DynamoDBに依存するEC2の内部サブシステムに障害が残り、新規インスタンス起動に失敗する事象が継続したとのこと。これが派生的にNetwork Load Balancer(NLB)のヘルスチェック機構に支障を与え、Lambda、DynamoDB、CloudWatchなどのネットワーク接続に広範な影響が発生しました。AWSは復旧を円滑に進めるため、EC2の新規起動やSQSキュー経由のLambdaイベント処理、非同期Lambda呼び出しなど一部の操作を一時的に制限しています。

17時38分にはNetwork Load Balancerのヘルスチェック機構が回復し、ネットワークの接続性が改善。23時台から翌21日4時にかけてEC2インスタンス起動成功率が上昇し、Lambda関数呼び出しエラーも順次解消されました。21日午前4時〜6時にはRedshiftやECS、GlueなどEC2依存サービスも正常化に向かい、制限が段階的に解除されました。

そして、10月21日7時1分にはすべてのAWSサービスが正常稼働に戻りました。AWS Config、Redshift、Connectなど一部のサービスでは、バックログ処理が数時間続いたものの、全体としては完全復旧とされました。

Amazonは、「今回の障害は、us-east-1リージョンにおけるDynamoDBサービスエンドポイントのDNS解決エラーが主因」としており、この障害が依存関係を通じてEC2内部サブシステムやネットワークロードバランサーのヘルスチェック機構に波及したことが原因だと述べています。AWSはこの問題を「regional DynamoDB service endpointsのDNS resolution issue」と明記し、今後詳細な事後報告書(post-event summary)を公表予定としています。

今回の障害は、AWSが多数のデータセンターを世界に展開しているにもかかわらず、多くの企業がデフォルトでus-east-1リージョンを利用する設計にしていたため、us-east-1リージョンがSPOF化してしまったことにあります。

us-east-1はAWS初期から稼働している最古のリージョンであり、Route 53やCloudFrontなどインターネット全体の基幹インフラもこのリージョンを経由しています。そのため、一部の顧客が他リージョンを指定していても、間接的にus-east-1経由の通信を利用しているケースが多くあります。AWSのus-east-1リージョンが「実質的なインターネットの中枢」になっている状態が、短時間の障害であっても世界規模の混乱を引き起こすことに至ったといえます。

なお、GIGAZINEはメインのサーバーは自社内設置のデータセンターにあるため、AWS障害の影響は免れました。サーバー運営費用の寄付をしてもらえるとより盤石なバックアップ体制の構築が可能になり、こういう世界的な障害発生時にも対応できるようになるので支援をお願いします!

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・つづき
AWS大規模障害の原因は「DNS管理システム」に潜んでいた設計上の欠陥だったことが判明 - GIGAZINE

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in ネットサービス,   セキュリティ, Posted by log1i_yk

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