わずか半年で4000人もの職員が去ったNASAの頭脳流出の内幕とは?

by My Rotherham & Countryside.and worldwide.
アメリカでは2025年1月に就任したドナルド・トランプ大統領の下、科学研究に対する資金の大幅な削減や方針の変更が続いており、アメリカ航空宇宙局(NASA)ではわずか半年で全職員の20%以上に相当する約4000人が退職しました。そんなNASAの元科学者4人に対し、「NASAで何が起きていたのか」「どのような影響が出るのか」などを尋ねたインタビューを、アメリカの非営利宇宙団体であるThe Planetary Societyが公開しました。
4,000 gone: Inside NASA’s brain drain | The Planetary Society
https://www.planetary.org/articles/4000-gone-inside-nasas-brain-drain

◆ロナルド・ギャンブル氏(学生向けプログラムCosmic Pathfinders Programの創設者兼ディレクター)
ギャンブル氏はブラックホールを専門とする理論天体物理学者で、次世代の科学者育成を目指すCosmic Pathfinders Programの創設者兼ディレクターでもあります。厳密に言えばギャンブル氏の所属はメリーランド大学カレッジパーク校であり、NASAとの関係は「共同研究者」となっていますが、研究資金はすべてNASAによってまかなわれているとのこと。
ところが2025年6月27日、ギャンブル氏は「10月1日で資金援助を打ち切る」という通知を受け取りました。その後、打ち切り日は12月31日に延期されましたが、いずれにせよ資金援助が打ち切られればNASAを辞職せざるを得なくなります。ギャンブル氏はNASAからの資金援助打ち切りについて、「ショックでした。これは私にとって夢の仕事だったのです。次に何をすればいいのでしょう?」とコメントしています。
「これらの退職がNASAに与えている影響についてどう考えますか?」と尋ねられたギャンブル氏は、「壊滅的です。ステージ5のハリケーンのようなものです」と回答。NASAは単なる研究所ではなく大勢の科学者が集まったコミュニティでもあったため、ちょっとしたメモや廊下での会話、ナプキンの裏に書いた計算などが重要な理論につながることもあったそうです。しかし、NASAから多くの研究者が離れれば、こうした予想外のコラボレーションは失われてしまうとのこと。
ギャンブル氏はアメリカ政府によるさまざまな決定にかなり混乱しているとのことで、「来る日も来る日もまったく意味不明なニュースばかり耳にします。彼らはなぜこんなことをするのでしょう?」とコメント。また、本来であれば天文学者を志したであろう若者の一部が、機械学習や金融業界といった別の道を目指すであろうことに懸念を表明しました。

◆デヴィッド・ドレイパー氏(元副主任科学者)
ドレイパー氏はNASAで26年間勤めたベテランで、副主任科学者として上級幹部に公平な評価を行い、部署間の連携にも協力してきた人物です。トランプ大統領の就任後に事態の悪化を察知したドレイパー氏は、1月28日に早くも退職を申請。退職数週間前の3月10日には、ドレイパー氏が所属する主任科学者のオフィス全体が廃止されましたが、他の同僚とは異なり自主的な退職が認められていたとのこと。
ドレイパー氏はNASAの変化があまりにも素早く起きたことに驚くと共に、次世代のリーダーとなるべき人材が一斉にNASAを離れたことは大きな痛手だと指摘。「NASAに残った若い者たちには経験がありません。彼らを次のレベルに引き上げてくれる人々が必要だったのです。NASAの根本的なアイデンティティは剥奪され、秘伝のソースは水に流されてしまいました」と述べています。
さらにドレイパー氏は、一連の出来事はアメリカに対して壊滅的な影響を与えるだろうと考えています。なぜなら、NASAは世界最高のブランドのひとつであり、アメリカが掲げる民主主義の価値や自由、そして権利を体現する存在だったためです。ドレイパー氏は、「率直に言って、NASAに起きていることに対して絶望以外の感情を抱かないのは難しいです」とコメントしました。
その上でドレイパー氏は、NASAが崩壊するのをただ待っているつもりはないとのこと。「私は諦めません。NASAを崖っぷちから引き戻すために、私はあらゆる手を尽くすつもりです。私たち国民が自ら行動を起こし、この国を正しい方向に導かなくてはならないのです」と、ドレイパー氏は呼びかけました。

◆ダニエル・シムカス氏(元OSIRIS-REx科学チームメンバー)
シムカス氏はゴダード宇宙飛行センターに7年間勤務した科学者であり、アポロ計画や小惑星探査機のOSIRIS-RExなどが持ち帰った岩石を分析し、生命の構成要素を探す研究を行っていました。シムカス氏は7月15日に退職し、国籍を有するカナダに戻りました。
「NASAに残っていたら資金を失っていたと思いますか?」という質問に対し、シムカス氏は「もしカナダに行く選択肢がなかったら、先の見えない状況にすごく不安になり、数カ月先の資金が確保できないのではないかと心配していたでしょう。誰もが『来年の仕事はあるだろうか?それどころか2025年末はどうだろう?』と不安を抱えながら、不安定な状態で生きていたように感じます」とコメント。
もともと、NASAは非常に協力的かつ人を喜んで受け入れる環境でしたが、政権交代によって特定のことを言うことが禁じられたり、自由に働くことができなくなったりしたとのこと。そのため、シムカス氏自身はNASAを離れるという決断は正しかったと確信しており、今でも毎週のように元同僚から辞めるという連絡があるそうです。
シムカス氏は、「多くの主要な科学者や研究者、そして管理職レベルの人材が去っています。専門知識を持つ人材もすべて去っていくのです。若手研究者たちは行き詰まって途方に暮れています」と述べました。

◆マイケル・ガルシア氏(元ハッブル宇宙望遠鏡プロジェクト科学者)
ガルシア氏はスミソニアン協会から、NASAに対する事実上の「出向」として13年間にわたり勤務した人物です。ハッブル宇宙望遠鏡のプロジェクト科学者を務めた後、低コストながら影響力の大きいミッションに焦点を当てた天体物理学パイオニア・プログラムを率いていましたが、「雇用を継続するために必要な書類を処理する人員が不足していた」ため、結果的に退職することになったそうです。
「退職に関して何か驚いたことはありますか?」という質問に対し、ガルシア氏は特にアメリカ政府の予算要求が驚くべきものだったと語っています。ガルシア氏はあまりに極端な予算要求から、「アメリカ政府は今後二度と宇宙望遠鏡を打ち上げるつもりはなく、軌道上にある宇宙望遠鏡の95%を停止し、宇宙望遠鏡事業から完全に撤退する」というメッセージを読み取ったとのこと。
現在、NASAの士気は信じられないほど低くなっており、ガルシア氏が在籍した13年間でも最低だとのこと。また、経験豊富なベテランほどNASAから離れる傾向にあるそうです。キャリア初期の天文学者らには「選択肢を広く保っておくべきだと思います。あるいはカナダやフランス、イギリスに移住するのもいいでしょう。今のところ、アメリカはこの事業から撤退しつつあるようです」とアドバイスしました。

by Chad Davis
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in メモ, Posted by log1h_ik
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