スマホでの採用が広がっている「シリコンカーボンバッテリー」は何が優れているのか?

近年は一部のフラッグシップスマートフォンにおいて、「シリコンカーボンバッテリー」が採用されるケースが増えています。従来のリチウムイオンバッテリーとの違いは何なのか、シリコンカーボンバッテリーにはどういった利点があるのかといった疑問について、海外メディアのThe Vergeが解説しています。
Phone batteries are getting more compact, but the US is missing out | The Verge
https://www.theverge.com/the-stepback-newsletter/776517/silicon-carbon-batteries-phones

中国のスマートフォンメーカーであるHonorが2025年10月に発表したフラッグシップモデル「Magic 8」シリーズには、主流のスマートフォンとしては最大級となる7000mAh以上のバッテリーが搭載されています。このバッテリーの大容量化は、近年普及しつつある「シリコンカーボンバッテリー」の採用によって達成されたとのこと。
シリコンカーボンバッテリーの大きなメリットは、同じサイズのセルでより多くの電力を供給できるという点です。たとえばOppoの折りたたみ式スマートフォンである「Oppo Find N5」は、SamsungのGalaxy Z Fold 7と同じくらい薄型ですが、Galaxy Z fold 7のバッテリー容量が4400mAhなのに対し、Find N5のバッテリー容量は5600mAhとかなり多めになっています。
シリコンカーボンバッテリーを採用しているのはHonorやOppoだけでなく、HuaweiやXiaomi、Vivo、OnePlus、Nothingといったメーカーがシリコンカーボンバッテリー搭載スマートフォンを発売しています。その一方で、AppleやGoogle、Samsungといった大手メーカーは依然として、シリコンカーボンバッテリーを製品に採用していません。

シリコンカーボンバッテリーという名称から、リチウムではなくシリコンとカーボンを使っていると誤解されがちですが、実際のところはリチウムイオンバッテリーの仲間です。そもそもバッテリーは、カソード(正極)とアノード(負極)という2つの極で構成されており、これらの極の間でイオンが移動することで充電または放電が行われます。現代のバッテリーのほとんどはカソードにリチウムベースの素材を、アノードにグラファイト(黒鉛)を使用しています。
ところがシリコンカーボンバッテリーでは、アノードにシリコンとグラファイトの混合物を使用しています。シリコンのエネルギー密度はグラファイトの約10倍であるため、少量のシリコンを混合するだけでも大きな効果を発揮します。たとえばHonorの折りたたみ式スマートフォンであるMagic V5では、グラファイトの15%をシリコンに置き換えているとのこと。
シリコンを増やせば同じ面積でもバッテリー容量を増やせるため、バッテリーメーカーはシリコンの混合比率を上げるための競争を行っています。メーカーがアノードをすべてシリコンに置き換えないのは、シリコンには「グラファイトよりも寿命が短い」という欠点があるためです。
バッテリーの充電中、グラファイト製アノードはリチウムイオンを吸収してわずかに膨張しますが、シリコン製アノードはより膨張率が高くなります。バッテリーの充放電を繰り返すとアノードの膨張と収縮も繰り返され、結果としてバッテリー構造の損傷が引き起こされ、バッテリー寿命の低下につながるというわけです。シリコンカーボンバッテリーを搭載したスマートフォンが初めて登場したのは2023年であるため、シリコンの採用がバッテリー寿命に及ぼす影響はまだよくわかっていません。
The Vergeは、「AppleやSamsung、Googleがシリコンカーボンバッテリーに参入していない理由のひとつは、この点にあるのかもしれません。3社とも長期的な製品サポートをセールスポイントにしているため、早期に寿命を迎える可能性のあるバッテリーへの切り替えは、企業にとって好ましい状況とは言えません。さらにEUの規制では、スマートフォンのバッテリーは800回の充電サイクル後も、容量の80%を維持することが義務付けられています。シリコンバッテリーメーカーのGroup14は、自社のバッテリーがこの基準を満たしていると主張していますが、大手テクノロジー企業は慎重な姿勢を崩していません」と指摘しています。

The Vergeは今後の展望として、シリコンの含有割合は20%を超えて収穫逓減に達するまで上昇し続けると予測しています。その上で、「真の疑問はAppleやSamsung、Googleがこの技術に参入するのか、するとしたらいつなのかという点です。シリコンカーボンバッテリー開発を担う企業のうち、いくらかはシリコンの比率を高めることを目指しており、他の企業は欠点を軽減する方法を模索しています。3社は高速充電技術の導入を遅らせてきたように、妥協が最小限に抑えられるかどうかを見極めようとしているのでしょう」と述べました。
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