セキュリティ

世界中のあらゆる人物の居場所を特定できる高度な電話追跡ソフトウェア「Altamides」の実態が潜入取材で明らかに


世界中で元首相や有力政治家、Netflixのプロデューサー、ノーベル平和賞候補、ジャーナリスト、シリコンバレーの大物などを追跡していた電話追跡ソフトウェア「Altamides」の知られざる実態について、非営利の報道団体であるLighthouse Reportsが綿密な調査と潜入取材で明らかにしました。

Surveillance Secrets - Lighthouse Reports
https://www.lighthousereports.com/investigation/surveillance-secrets/


Lighthouse Reportsの記者はある日、ディープウェブで膨大なデータアーカイブを発見しました。このアーカイブには、世界中で膨大な人々の位置情報をリアルタイムで取得しようとする合計100万件以上の追跡活動が含まれており、このアーカイブについて調査するために14のメディアから70人以上のジャーナリストが集結したとのこと。

綿密な調査により、このアーカイブがインドネシアのジャカルタに本拠を置く「FIRST WAP」という企業が提供する電話追跡ソフトウェア「Altamides」のものであることが判明。アーカイブに含まれている電話番号は1万4000件以上で、監視対象となった人々は160以上の国々にまたがっていました。

監視対象となった人々を突き止める唯一の手がかりは電話番号であり、ジャーナリストのチームは数カ月かけて電話番号の所有者を特定しました。また、データをより深く掘り下げて理解するために、監視対象を時間的または空間的なつながりに基づいてマッピングしたとのこと。


調査の結果、Altamidesの監視対象には「カタールの元首相」「シリアの元独裁者であるバッシャール・アル=アサド氏の妻」「Netflixプロデューサーのアダム・シラルスキー氏」「民間軍事会社創業者のエリック・プリンス氏」「ノーベル平和賞候補のベニー・ウェンダ氏」「オーストリアの大物ミュージシャンであるヴォルフガング・アンブロス氏」「テルアビブの地方検事」など、実にさまざまな人々が含まれていることがわかりました。

イタリアでは、ジャーナリストのジャンルイジ・ヌッツィ氏がバチカン市国の汚職について報じた数日後、警察による情報源の追及が進む中でAltamidesの追跡を受けていました。また、アメリカではGoogle共同創業者のセルゲイ・ブリン氏の元妻でありDNA鑑定企業23andMeの創業者でもあるアン・ウォジツキ氏が、シリコンバレーを移動するたびに1000回以上も追跡されていたとのこと。

さらに、ルワンダの元情報機関トップであり南アフリカに亡命していたパトリック・カレゲヤ氏は、2013年にヨハネスブルグのホテルで殺害されましたが、なんと暗殺の前にカレゲヤ氏の側近がAltamidesによる追跡を受けていたことも判明しています。

ジャーナリストらの問い合わせに対しFIRST WAPは、いかなる違法行為や人権侵害にも反対しているものの、顧客の識別を可能にしうる具体的な申し立てにはコメントできないと返答しました。また、同社はユーザーにAltamidesという追跡ソフトウェアを提供するだけであり、自ら追跡活動を行っているのではないとして、ユーザーがどのようにAltamidesを使用しているのかは把握していないと主張。その上で、同社の技術は法執行機関による「組織犯罪やテロリズム、汚職との戦い」に利用されていると強調しました。


Lighthouse Reportsの調査では、2012年にソフィア(仮名)という女性がインドの海岸を歩いている際、Altamidesによる追跡を受けていたこともわかっています。しかし、この女性を追跡していたのは諜報機関や法執行機関ではなく、ただのストーカー男だったとのこと。

このケースからは、Altamidesが政府の管理下を超えて非政府機関や個人にまで拡散し、商業目的や個人的な欲望のために利用されていることがうかがえます。Lighthouse Reportsが入手したアーカイブには、ビジネスリーダーや政治的影響力を持つ人々だけでなく、教師やセラピスト、タトゥーアーティストを含む数百人もの一般人の追跡履歴も含まれていたそうです。


Altamidesは、世界中の顧客に監視システムを転売する「闇の仲介業者ネットワーク」を通じて販売されていました。Lighthouse Reportsが入手した機密文書では、イギリスの企業調査会社であるKCSグループが、アラブの春が中東や北アフリカで広まった時期に、Altamidesを各国政府に販売しようと試みていたことがわかっています。それと同時にKCSグループは、顧客の敵対勢力の汚点を探る目的でもAltamidesを使っていたと報じられています。

FIRST WAPの創業者であるヨーゼフ・フックス氏は2000年代初頭、世界の通信ネットワークに時代遅れな共通線信号No.7(SS7)というプロトコルが使われており、これを悪用してユーザーの位置情報を突き止められることに気付いたとのこと。これを商機と見たフックス氏は、FIRST WAPを当初のマーケティング企業から電話追跡企業へと方針転換し、「電話番号を入力すれば数秒以内にユーザーの位置情報を特定できるサービス」を展開しました。

それ以来、FIRST WAPは世界規模の電話追跡企業を築き上げましたが、20年以上にわたって大きな注目を浴びることはありませんでした。また、時間と共に監視手段も拡充しており、Altamidesには位置情報の追跡だけでなくSMSメッセージの傍受や通話の盗聴、WhatsAppなどの暗号化メッセージアプリへ侵入する機能なども搭載されているとのこと。


Lighthouse Reportsは、FIRST WAPがAltamidesを売り込む際にどのような基準を設けていたのかを理解するために潜入取材も行いました。Lighthouse Reportsの記者は潜入取材のために、「南アフリカを拠点としてイギリス領ヴァージン諸島に登録された調査コンサルタント会社を経営するビジネスマン」という架空の設定を作り上げ、LinkedInのページなどを作成した上でこの人物になりすましました。また、同僚には「西アフリカ全土に政治的なコネを持つ有力者」という設定の同行者を演じてもらい、チェコの首都プラハで開催された世界最大の監視技術見本市・ISS Worldに乗り込みました。

記者らはISS Worldのブースで、FIRST WAPの営業部長であるギュンター・ルドルフ氏と接触することに成功。その後、プラハのホテルの一室に場所を移し、Altamidesについて話し合いました。その中で記者らは「FIRST WAPは政府による海外の反対派監視を支援できるのか?」「暗号化されたWhatsAppチャットを解読できるのか?」「鉱山会社のオーナーが環境保護活動家による抗議活動を阻止するのを支援できるか?」といったグレーな質問をぶつけたとのこと。

さらに話題は、「Altamidesの売却先候補にはEUやアメリカの制裁対象者もいる可能性があり、ルドルフ氏のようにヨーロッパの国籍を持つ人物がこの取引を仕組んだことが発覚すると、投獄されるリスクがある」という点が話題になりました。この問題についてルドルフ氏は、「だからこそ、このような取引はジャカルタ経由で行うのです」「グレーゾーンですが、必ず解決策は見つかります」と語りました。そして翌日、ルドルフ氏は「新しく設立したダミー会社を利用し、FIRST WAPと制裁対象の顧客とのつながりを文書記録から隠す」という解決策を提示してきました。

Lighthouse Reportsによる潜入取材について問いただされたFIRST WAPは、「明らかに誤解が生じました」と述べ、ルドルフ氏の発言は単に技術的な実現可能性について言及したものだったと弁明したとのことです。

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in ソフトウェア,   スマホ,   セキュリティ, Posted by log1h_ik

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