オランダ政府が中国系半導体メーカーNexperiaの経営権を「異例の対応」で掌握

オランダに拠点を置く中国資本の半導体メーカー「Nexperia」の経営権を、オランダ政府が冷戦時代に制定された緊急法を用いて掌握したことが分かりました。オランダ政府によれば、この決定は緊急時にNexperiaの製品を確保するのが目的とのことです。中国側は「地政学的な偏見だ」と反発しています。
Minister of Economic Affairs invokes Goods Availability Act | News item | Government.nl
https://www.government.nl/latest/news/2025/10/12/minister-of-economic-affairs-invokes-goods-availability-act
Nederland grijpt hard in bij chipfabrikant Nexperia uit angst voor lekken chipkennis naar China - NRC
https://www.nrc.nl/nieuws/2025/10/12/nederland-grijpt-hard-in-bij-chipfabrikant-nexperia-uit-angst-voor-lekken-chipkennis-naar-china-a4909310
Nederlands kabinet gebruikt noodwet tegen Chinese bestuurder Nexperia - NRC
https://www.nrc.nl/nieuws/2025/10/13/waarom-schoof-nederland-de-chinese-topman-van-chipmaker-nexperia-opzij-a4909432
Dutch government takes control of Chinese-owned chipmaker Nexperia
https://www.ft.com/content/605e5456-9437-47ff-be6a-edc5c82810f2
China’s Wingtech Dives 10% After Dutch Take Control of Nexperia Chip Unit - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-10-13/china-s-wingtech-dives-10-after-dutch-take-control-of-chip-unit
Nexperiaはオランダに拠点を置く電気機器メーカーのフィリップスから分離した企業で、後に中国政府系投資コンソーシアムに買収され、2019年に中国企業Wingtechの手に渡りました。それ以来、Wingtechの子会社として自動車産業や民生用電子機器向けの半導体を生産しています。
2025年10月13日、Wingtechは「オランダ政府省庁と裁判所の介入を受けて、Nexperiaの経営権が事実上凍結された」と発表。オランダ政府から、Nexperia及びその全世界の子会社・支店・事務所に対し、最大1年間にわたり資産・知的財産・事業運営・人員に関する一切の調整を行わないよう命令が下ったことを明らかにしました。
この命令でNexperiaは一時的に政府管理下に置かれ、これまで通り業務を継続できるものの、政府がNexperia取締役会の決定を阻止または覆す権限を有することになります。

オランダ政府は、緊急時にNexperiaが生産する製品が入手不能となる事態を防ぐために、物品供給法を発令したと説明しています。物品供給法は1952年に制定された法律で、緊急事態に備えて重要物資の供給を確保するため、民間企業への政府介入を認めるもの。戦争などの災害を想定したこの法律が適用されるのは初めてのケースです。
オランダ政府は、「Nexperia社内で深刻なガバナンス上の欠陥と行動が見られた。これらの兆候は、オランダおよび欧州領域における技術的知識と能力、およびその保護に対する脅威となった。これらの能力を失うことは、オランダおよび欧州の経済的安全保障に対するリスクをもたらす可能性がある」と述べましたが、具体的にどの部分がリスクになるのかは説明しませんでした。
オランダメディアのNRCは、「関係者によると、Nexperiaが半導体に関する知識を中国に漏えいする兆候があったとのことだ」と伝えました。

オランダ経済省は2025年9月30日に今回の措置を実施しましたが、公表は10月12日まで行われませんでした。
Nexperia内では親会社Wingtechに対する反発があり、2025年10月1日、中国人取締役の張雪正(Zhang Xuezheng)氏を停職処分とし、Nexperiaの株式の支配権を中国人株主から剥奪した上で独立した第三者に譲渡することを求める緊急審理を、オランダとドイツ国籍を持つNexperiaの幹部3名がオランダの控訴院に提出したと伝えられています。
Wingtechによると、裁判官は審理を行わずに要請を認め、張氏のNexperiaにおける取締役職の停止に加え、Wingtechにおける非執行役取締役職の職務執行も停止したとのこと。さらに、裁判官は決定的な議決権を持ちNexperiaを代表する独立した非中国人取締役の任命をも命じたとのことです。NRCは「控訴院は、この件に関して異例にも非公開の姿勢をとっている」と伝えています。

Wingtechは「オランダ政府が『国家安全保障』を口実にNexperiaのグローバル事業を凍結する決定は、事実に基づくリスク評価ではなく、地政学的偏見に駆られた過剰な介入である」と指摘し、反発。さらに、「この措置は、市場経済原則、公正な競争、国際貿易規範を長年提唱してきた欧州連合の立場に著しく反する」と付け加えました。
中国外交部は「オランダは真に市場原則を順守し、経済貿易問題を政治化すべきではない」と述べ、国家安全保障という概念を乱用した中国企業に対する差別的措置に反対する立場を表明しました。
なお、アメリカ政府は2024年にWingtechを外国貿易の取引制限リスト「エンティティリスト」に追加しており、アメリカ企業は同社への製品販売にライセンスを申請する必要があります。2025年にはエンティティリスト掲載企業の子会社にも販売制限を拡大する新ルールが導入されており、Wingtechの子会社であるNexperiaも制限の対象となりました。
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