サイエンス

AIでメールを書く上司は誠実さ・思いやり・自信に欠けると見なされてしまうことが判明


ChatGPTのような生成AIが普及したことにより、メールの文面や議事録、社内メモなどの作成にAIを活用する労働者が増えています。しかし、主にコンピューターを使用している1000人以上のフルタイム労働者を対象にした研究では、日常的なメール作成にAIを使う管理職は誠実さや思いやり、自信に欠けると評価されてしまうことが判明しました。

Professionalism and Trustworthiness in AI-Assisted Workplace Writing: The Benefits and Drawbacks of Writing With AI - Peter W. Cardon, Anthony W. Coman, 2025
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/23294884251350599


Managers who use AI to write emails seen as less sincere, caring, and confident
https://www.psypost.org/managers-who-use-ai-to-write-emails-seen-as-less-sincere-caring-and-confident/

一般にAIを活用したライティングはメッセージの明瞭性や正確性を高めると評価されていますが、「AIを使ってメールやメッセージを作成する人」が他者からどのように認識されるのかについては、まだよくわかっていません。そこで、南カリフォルニア大学でビジネスコミュニケーション学教授を務めるピーター・カードン氏らの研究チームは、日常的なコミュニケーションにおけるAIの使用が、その人の評価にどのような影響を与えるのかを調べる実験を行いました。

カードン氏は、「AIは私たちの人間関係に大きな影響を与えると考えています。人々はコミュニケーションを支援するためにAIを多用するようになるでしょう。これはすでに職場で起こっています。AIを介したコミュニケーションの影響を人々に認識してもらいたいのです」と語っています。


研究チームは、勤務時間の少なくとも半分以上でコンピューターを使っているアメリカのフルタイム労働者1158人を対象に、「チームの目標達成を祝うメッセージ」に関するさまざまなシナリオを提示しました。

シナリオには「上司がメッセージの作成にAIを使用したパターン」と「自分がメッセージの作成にAIを使用したパターン」が存在し、AIの貢献度合いについても「AIがメッセージの軽微な編集を行ったパターン」と「AIがプロンプトに基づいてメッセージのほぼすべてを生成したパターン」がありました。また、AIに入力したプロンプトが被験者に提示されたケースと、プロンプトが開示されなかったケースについてそれぞれ実験したとのこと。


被験者は割り当てられたシナリオやプロンプトを読んだ後、メッセージの作成者がAIなのか上司/被験者本人なのかについての考えや、メッセージがもたらした効果、作成者のプロフェッショナリズム・誠実さ・思いやり・自信、AIの使用に対する安心感などに関する一連の質問に回答しました。質問には数値的な評価に加え、「職場のコミュニケーションにおいて作成者が重要だと考える理由、あるいは重要ではないと考える理由」を尋ねる自由回答形式のものも含まれていました。

実験の結果、メッセージがAIの支援を受けて作成された場合、メッセージの送信者に対する信頼性が低下することが判明。特にメッセージのほとんどをAIが生成した場合は信頼性の低下が強く、メッセージを作成した当事者が上司であると見なす傾向が低くなりました。つまり、メッセージの作成においてAIが寄与する部分が大きい場合、「メッセージは上司が作成したもの」ではなく、「メッセージはAIが作成したもの」と認識していたわけです。

AIによる支援が少なかったケースでは、93%が「メッセージを作成したのは上司である」と見なしていたのに対し、AIによる支援が多くプロンプトも提示されなかったケースでは、なんと25%しか「メッセージの作成者は上司である」と考えておらず、多くは「メッセージの作成者はAIである」と認識していました。

それにもかかわらず、AIの活用度が高いメッセージはチームにとって効果的であると評価されていました。また、多くの被験者はAIを「文法やトーン、構成の改善に役立つツール」だと認識しており、メッセージの内容が作成者自身の考えを反映している限り、文章を洗練させるためにAIが使われていても構わないと回答しました。

AIを活用したメッセージは効果的だと見なされる一方、メッセージの送信者についての評価は低下しました。メッセージのほとんどをAIに生成させた上司は、一貫して誠実さや思いやり、自信に欠けると評価されていたと報告されています。

その背景にある理由は、自由回答形式の質問から明らかになっています。多くの被験者は、お祝いのメッセージのほとんどがAIによって生成されていたことを知ると、失望感やいらだちを表明しました。中には上司を「怠惰」「不誠実」と評する人もいたほか、「上司が個人的なメッセージを書くほどチームを気に留めていない」「チームの成功に対する投資が不足している」と感じる人もいました。カードン氏は、「一番驚いたのは感情の激しさでした。多くの回答者が、上司がメール作成にAIを使うことに憤慨していました」と述べました。


被験者の中には、AIに大きく依存する上司の能力にも疑問を呈しており、多くの被験者は「管理職は外部からの支援なしで簡単なメールを書ける能力が求められており、そのような目的でAIを使用することはリーダーシップやコミュニケーション能力の欠如を示している可能性がある」と回答しました。

一方、AIを活用してメッセージを作成したのが上司ではなく被験者自身だった場合、そのメッセージをより好意的に捉え、AIを役に立つ支援ツールと見なす傾向が強まりました。また、被験者の大多数は「事実に基づく最新情報」や「日常のリマインダー」といったメッセージの作成において、AIが使用されること自体には抵抗がないと回答しています。

さらに一部の被験者は、職場のコミュニケーションにおいてAIが繰り返し使用されることについて、「人間同士のつながりを失わせる」「チームの結束を弱める可能性がある」「職場が非人間的な雰囲気になる」といった懸念も表明しています。

カードン氏は、「専門家はビジネスコミュニケーションでAIを過度に使用することで、評判や人間関係のリスクが生じることを認識する必要があります」「この情報によって、人々がAIを活用して生活や人間関係を改善できるようになることを願っています。私たちは今まさにAIの道を歩んでいます。AIについて議論し、思慮深く、目的を持って活用していくべきです」と述べました。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article It turns out that bosses who write email….