ハードウェア

東京エレクトロン・ASML・KLAなどが中国の半導体産業の構築を支援しているとアメリカ下院議員らが批判


アメリカ政府は中国への高性能半導体の輸出を制限しており、NVIDIAやAMDといった大手メーカーは制限にかからないよう性能を落としたチップを輸出しています。そのような中で、アメリカと中国共産党の戦略的競争に関する下院特別委員会は、数カ月に及ぶ調査を経て、アメリカ国内および同盟国であるオランダや日本のメーカーが、中国の半導体製造を活性化させるような機器を中国に販売していたという事実を指摘しました。

New Investigation Reveals American and Allied Companies Boosted the CCP's Semiconductor Industry, Fueled the PRC's Military Ambitions and Human Rights Abuses | Select Committee on the CCP
https://selectcommitteeontheccp.house.gov/media/press-releases/new-investigation-reveals-american-and-allied-companies-boosted-the-ccp-s-semiconductor-industry-fueled-the-prc-s-military-ambitions-and-human-rights-abuses


(PDFファイル)THE SELECT COMMITTEE ON THE STRATEGIC COMPETITION BETWEEN THE UNITED STATES AND THE CHINESE COMMUNIST PARTY | SELLING THE FORGES OF THE FUTURE
https://selectcommitteeontheccp.house.gov/sites/evo-subsites/selectcommitteeontheccp.house.gov/files/evo-media-document/selling-the-forges-of-the-future.pdf

US lawmakers call for broader bans on chipmaking tool sales to China | Reuters
https://www.reuters.com/world/china/chinas-chipmakers-bought-38-billion-us-allied-tools-sign-policy-is-failing-2025-10-07/

下院特別委員会の委員長を務めるジョン・ムーレナー氏は「委員会は、今回の調査対象企業が、中国が軍事的野心を高めるために利用している装備品の大規模製造業者であることを明らかにしました。彼らはアメリカの国家安全保障を犠牲にして利益を拡大しています。この重要な装備品を最大の敵国である中国に引き渡すことを決して許してはなりません。さもなければ、アメリカは技術軍拡競争に敗北することになるかもしれません」と強く批判しました。


下院特別委員会が「中国の国有企業や軍事関連企業に何らかの装置を販売している」と挙げたのは以下の企業。

・ASML(オランダ)
・東京エレクトロン(日本)
・アプライドマテリアルズ(アメリカ)
・KLA(アメリカ)
・ラムリサーチ(アメリカ)

下院特別委員会の調査によると、東京エレクトロンは収益の44%を中国から得ていることが判明したとのこと。そのほか、ラムリサーチは42%、KLAは41%、ASMLとアプライドマテリアルズは36%を中国からの収益が占めています。

下院特別委員会のラジャ・クリシュナムーティ筆頭委員は「軍事力の近代化に必要なチップを中国共産党に売り、人権を侵害するのはほとんど意味がありません。そして、中国共産党がそれらのチップを自ら製造するために必要な装置や工具を売るのは、さらに意味がありません。今回の調査により、オランダ、日本、アメリカの企業によるこれらの販売規模が、私たちが認識していた以上に膨大であることが明らかになりました。同盟国と共に、私たちは国家安全保障を守り、中小企業における世界をリードするイノベーターであり続ける必要があります」と語りました。


下院特別委員会の調査報告を受け、ASML、東京エレクトロン、KLA、アプライドマテリアルズ、ラムリサーチの株価は各取引所で軒並み急落しました。東京エレクトロンのアメリカ法人社長のマーク・ドハティ氏は、ロイターのインタビューに回答し「東京エレクトロンでは、新たな規制の影響もあり、今年の中国の売上高は減少し始めています。しかし、アメリカの観点からすれば、まだ達成されていない望ましい結果があることは明らかだと思います」とアメリカと日本の連携強化を認めつつも実現しきれていない現状を語りました。ロイターのコメント要請に対し、ASMLとKLAはコメントを控える旨を回答し、アプライドマテリアルズとラムリサーチは記事作成時点でコメント要請に応じていません。

今回の事態は、「規則の不一致」が原因であると下院特別委員会は指摘しています。そのため、下院特別委員会は、オランダや日本などの同盟国に「アメリカの規制と施行に連携させる」「すべての同盟国メーカーが追加の中国軍事組織に販売することを禁止する」「中小企業の生産に重要な部品の輸出を制限する」ことなどを求めています。さらに、アメリカの中小企業が世界トップクラスの人材を育成することを支援することで、アメリカと同盟国の中小企業におけるイノベーションとリーダーシップを確保することも目標として掲げています。


ドナルド・トランプ大統領は「アメリカは誰も考えられなかったレベルでAIを駆使して他国を上回っている」と主張している一方で、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「アメリカはAI開発において中国をそれほどリードしてはいない」と対称的な意見を述べています。フアンCEOによると、特にオープンソースAIモデルや消費者向けAI製品に関しては、中国が急速に進化してアメリカをはるかに上回っているとのこと。一方で、トランプ大統領とフアンCEOは「世界各国がアメリカの技術基盤と基準に基づいて開発を進めることで、アメリカがAI開発をリードしていく」という見解は一致しています。

また、アメリカでは最新鋭のAIチップが中国などの特定の国に提供される前にアメリカ企業に販売することを義務付ける「AIへのアクセスとイノベーション保証法(GAIN AI)」の法案を協議しています。NVIDIAや半導体工業会(SIA)はGAIN AI法案に強く反対するロビー活動を展開しており、NVIDIAの広報担当者は「『存在しない問題』を解決しようとするこの法案は、主流のコンピューティングチップを使用するあらゆる業界における世界的な競争を制限することになる」と批判しました。GAIN AI法案は記事作成時点で上院本議会で停滞しており、2025年末から2026年初頭に向けて審議される見込みです。

ムーレナー委員長とクリシュナムーティ筆頭委員は、調査報告書の中で「半導体関連企業は、中国共産党と中国国内大手企業を、大切な顧客としてではなく、自社の存続に対する脅威として扱い始めるべき時をとっくに過ぎている」と警告を述べています。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by log1e_dh

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