サイエンス

アイアンマンや鉄腕アトムっぽく空を飛ぶ人型災害対応ロボット「iRonCub3」


イタリア・ジェノバにあるイタリア工科大学人工知能・機械知能研究所の研究員であるダニエレ・プッチ氏らが開発を進めている「iRonCub」は、災害対応用として開発が進められている「空飛ぶロボット」です。アメリカ電気電子学会(IEEE)が、iRonCubについて解説しています。

iRonCub: A Humanoid Robot Designed to Fly Like Iron Man - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/ironcub-jet-powered-flying-robot

記事作成時点で最新バージョンとなる「iRonCub3」が実際に空を飛ぶところは以下のムービーで見ることができます。

iRonCub3: First Liftoff of a Jet-Powered Humanoid Robot - YouTube


iRonCubは4基のジェットエンジンを搭載しており、約10年の開発期間を経て初めて離陸と安定飛行を達成した全身可動型の人型ロボットです。


テストでは、地面から50cmの高さを数秒間維持することに成功しました。


プッチ氏は、洪水や火災などの緊急事態で障害物を気にすることなく迅速に現場に到着し、着陸後は効率よく歩行を開始し、手や腕を使って瓦礫(がれき)を移動したりドアを開けたりすることができる災害対応プラットフォームとして運用することが長期的な目標と語ります。

人型ロボットを飛行可能にするのはかなりの難題です。iRonCubの背中と腕に搭載されたジェットタービンは合計で1000N以上の推力を生み出しますが、エンジンの回転数を上げたり下げたりするには時間がかかるため、ロボット自身で腕のエンジンを動かして安定性を維持する必要があります。


また、ジェットタービンからの排気は約800℃で、ほぼ超音速で噴射されるとのこと。この排気がロボットに当たるのを避けるためには、どのように排気が生成されるかを計算に入れなければなりません。


「自由自在に空を飛ぶ人型ロボット」の完成にはまだ時間がかかりそうですが、ここまでの研究はiRonCub開発以外にも応用されます。例えば、ジェットエンジンの推力推定アルゴリズムは、VTOL(垂直離着陸)機の開発にも活用できます。

また、ジェットタービンのダイナミクス制御は、空気圧でものをつかむグリッパーにも応用できるそうで、開発チームは空気圧グリッパーを開発している産業企業とも協業しているとのこと。


プッチ氏は「ある時、グリッパーの制御に必要な力を推定する必要がありました。すると、そのダイナミクスがジェットタービンとよく似ていることに気づき、同じツールを使用できるようになりました。これは私たちにとってまさに『ひらめき』の瞬間でした。最初はクレイジーなことをやっていても、その後ツールと手法を構築し、実際にそれらのツールが産業現場で使えるようになるのです。これこそがイノベーションを推進する方法なのです」と述べています。

そして、iRonCubの開発プロジェクトを続けている理由について、プッチ氏は「本当にクールだから」と語っています。iRonCubの開発プロジェクトは学生や開発者からの注目も集めており、プッチ氏の研究室に才能が集まるきっかけになっているとのこと。


プッチ氏は、より自由度の高いジェットパックを開発したり、効率的に長距離飛行を行うための翼をiRonCub用に設計したりすることを考えているとのこと。ただし、iRonCubの開発が進むにつれてロボット本体は複雑になり、テストの難度も高くなっていくため、今後は新たな試験場を用意したり、空港と連携を図ったりする必要も出てくると予想されます。

iRonCubが理想に近づくのは決して簡単なことではありませんが、プッチ氏は「これは冗談ではありません。私たちが信じていることなのです。何か特別なこと、あるいは歴史的なこと、人々の記憶に残るようなことを成し遂げるという思いが、私たちのモチベーションを支えてきました。そして、私たちはまだ始まったばかりなのです」と語りました。

なお、ロボットではなく人間が装着するジェットパックはすでに実用化されており、移動が難しい場所に救急が向かうような現場で実際に運用されています。

Jet Suit Medics: Rapid Water Response Ex - YouTube

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article 'iRonCub3' is a flying humanoid disaster….