サイエンス

性的暴行事件では被害者と容疑者は同じくらい「記憶の混同」を起こしやすい


性的暴行事件では、目撃証言や容疑者および被害者の証言が有力な証拠と見なされることがあります。ところが、こうした記憶は外部からの情報で簡単にゆがめられてしまい、被害者と容疑者の双方で同じレベルの記憶の混同が起こりやすいことが明らかになりました。

He said, she said: the “accused” and “complainant” in a sexual assault scenario are equally susceptible to misinformation | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-025-13587-y


Defendants in sexual assault cases are just as likely to misremember the event as alleged victims – new study
https://theconversation.com/defendants-in-sexual-assault-cases-are-just-as-likely-to-misremember-the-event-as-alleged-victims-new-study-262841

ダブリン大学のシアラ・グリーン氏らは、一人称視点で撮影されたデートの場面を収めた動画を被験者に視聴させ、デートを疑似体験させるという実験を行いました。


動画視聴後、被験者に「性的暴行の告発があった」と伝え、被害者と容疑者の役割を無作為に割り当てた上、第三者の目撃証言をいくつか提示しました。この目撃証言の一部には意図的に誤情報が加えられました。例えば、「警備員、バーテンダー、タクシー運転手によると、容疑者が被害者へ無理に酒を勧めていたそうだ、あるいは被害者が性に奔放だったそうだ」といった内容です。

その後アンケートを実施し、被験者がどれくらいデートの場面を覚えているのか、また第三者の目撃証言にどれくらい影響されるのかといった点を調べ、被害者と容疑者双方で記憶の誤差を測定しました。

その結果、被害者の役割を与えられた人と、容疑者の役割を与えられた人の両方が、誤情報の影響を等しく受けやすいということが判明しました。


グリーン氏は「多くの人は、記憶はコンピューターのファイルにアクセスするように単純なものだと考えていますが、私たちはレゴの塔を組み立てるように記憶を再構築しているのです。つまり出来事全体をそのまま思い出すわけではありません。この再構築は誤りが生じやすく、時には誤った情報を記憶に取り込んでしまいます」と指摘しています。

グリーン氏によると、裁判が被害者や目撃者の記憶に依存して行われる場合、記憶の信ぴょう性を陪審員に説明するため専門家が呼ばれることがあるそうです。性的暴行事件ではこうした専門家が検察側ではなくほぼ常に弁護側によって召喚されるという傾向にあり、目撃者誤認を減らし冤罪を回避したいという動機から、目撃者や被害者の記憶が間違っているのではないか、と指摘されることが多いとのこと。


グリーン氏は「これでは、証人や被害者は記憶の誤りに陥りやすい一方で、容疑者の記憶は絶対的であるかのような印象を与えかねません。目撃証言の記憶については他の証拠と同様に扱うべきですが、簡単に汚染される可能性も理解する必要があります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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