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一体なぜ風力発電タービンのブレードは「3枚」なのか?


風力発電では風力タービン(風力原動機)という装置を用いて風力を電気に変換しており、そのタービンのブレードは「3枚」であることがほとんどです。一体なぜ風力発電のタービンには3枚のブレードが使われているのかについて、物理学系YouTubeチャンネルのminutephysicsが解説しました。

Why do wind turbines have three blades? | The Kid Should See This
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Why Do Wind Turbines Have Three Blades? - YouTube


風力発電のタービンのブレードは、必ずしも3枚でなければいけないというわけではありません。世の中にはブレードが2枚だったり、5枚だったり、中には1枚だったりするタービンも存在します。


しかし、現代におけるタービンのブレードはほとんどが3枚です。タービンのブレードが3枚なのには「3つの理由」があるとのこと。


1つ目は「物理学的」な理由です。


他のすべての条件が同じであれば、ブレードの枚数が多いほどより大きなトルクを生成できます。しかし一方で、タービンの回転速度が速まるほど、ブレードにかかる抗力も急速に増大します。


よって、多くのブレードを持つタービンは一般的に、風速に比べて回転速度が遅いほど効率的に機能します。反対に、ブレードの少ないタービンは回転速度が速いほど効率よく動作するとのこと。


このグラフは、異なる枚数のブレードを持つタービンの効率を示したものです。横軸が風に対するタービンの回転速度を、縦軸がタービンの効率性を表しています。


ブレード5枚のタービンは、回転速度が遅い時に効率が高くなります。


一方、ブレード1枚のタービンは、回転速度が速い時に効率が高くなります。


そしてブレードが3枚の場合、中間的な速度で最大限の効率が得られることがわかります。これが、タービンのブレードが3枚である物理学的な理由です。


2つ目は「工学的」な理由です。


タービンは動作に必要な曲げ、回転、振動といった力に耐えられる強度が求められます。


もしブレードが2枚だった場合、風の条件によっては不均衡なねじりの力が生じる可能性があります。これによってポールが前方または後方に曲がったり、左右にねじれたりするリスクがあるとのこと。


この問題はブレードが2枚の時に限定されず、他の偶数枚のブレードでも同様の危険があります。


また、ブレードの枚数が1枚だけの場合、ブレードの反対側にはカウンターウェイトしか存在せず、やはり不均衡な風の力を受け流すことができずに同様の問題が生じます。


これに対しブレードの枚数が3枚や5枚の場合、ブレードがペアになっていないため、風の力が表面全体で均等に分散されます。これによって曲げ力やねじりの力が大幅に軽減されるとのこと。


ブレードが2枚の場合でも、ポールやハブ、ブレードの材質や設計をより堅固にすれば不均衡な力に対処できますが、これには追加のコストがかかります。これは、ブレードの枚数を減らすことで得られるコスト上のメリットを相殺してしまいます。


また、ブレードが3枚または5枚の場合は回転速度も遅くなるため、可動部品の経時的な摩耗が少なくなるというメリットもあります。


つまり、風による望ましくない力を軽減するにはブレードが奇数枚の方がよく、さらにブレードが多いほどコストも高くなるため、ブレードが3枚のタービンが工学的に最も優れているというわけです。


3つ目は「人間の快適性」が理由です。


風力発電所を建設する際には、近隣住民の理解を得ることが必要です。したがって、タービンの見た目と音も大事な要素となります。


一般的に、ブレードが3枚のタービンは2枚のタービンよりも見た目が美しいと考えられています。


3枚ブレードのタービンは水平方向と垂直方向に占める空間割合の変化が少ない一方で、2枚ブレードのタービンは水平方向と垂直方向の間を行き来し、どこか途切れ途切れに動いているような印象を与えるとのこと。


静止状態であっても、人々は2枚ブレードよりも3枚ブレードの対称性を好む傾向があるそうです。


また、タービンが発する騒音は基本的に、ブレードが空気を切り裂くことで生じる乱流が原因です。そのため、タービンの回転速度が遅いほど騒音も少なくなります。


タービンの回転速度と効率性のグラフを見ると、3枚ブレードのタービンは2枚ブレードのタービンよりも低い回転速度で、同等かそれ以上の効率を達成できることがわかります。


つまり特定の環境では、3枚ブレードのタービンはより静かに可動するというわけです。


これら3つの理由が重なりあい、世の中の風力発電タービンは3枚ブレードのものが主流となっていると、minutephysicsは解説しました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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