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妊娠までの身体の仕組みを詳細かつ科学的にアニメーションでわかりやすく解説する動画


人類の営みにおいて欠かせない「妊娠」のメカニズムを科学的に解説する動画を、登録者数2450万人超のサイエンス系YouTubeチャンネル・Kurzgesagtが公開しています。

Pregnancy is Insane - YouTube


赤ちゃんは、別の人間の体内で完全に新しい臓器を育てる腫瘍のようなものです。


母親の身体はそれを許容しますが、新しい命は母親の体力を消耗させ、何カ月もの間、母親の免疫システムを限界まで追い込みます。この妊娠のメカニズムを科学的に解説するのがこの動画です。


妊娠・出産は、死に直面する数千万の精子の軍隊から始まります。


精子のエネルギーが尽きて死ぬまでの時間は非常に限られています。


あらゆる体の開口部と同様に、女性の生殖器官は外部の侵入者にとって要塞のようなものです。


子宮は致死的なバリアを設置することで精子をふるいにかけ、ほとんどを殺します。これにより、理想的には「最も強くて健康な精子」を残そうとするわけです。


精子にとって最初の障害は数十万の細胞によって守られた非常に酸性度の高い環境です。この酸性環境は最初の30分以内に特に弱い精子を中心に、何百万もの精子を死滅させます。ただし、精子はアルカリ性であるため若干の防御作用を備えていると言えます。


次の障害が、タンパク質のネットで満たされた危険な迷路です。何百万もの精子がこのネットに捕まり動けなくなり、最終的に死を迎えます。


女性の月経周期が排卵期にある場合、女性の身体は精子を誘導する化学物質を放出し、精子に対する攻撃性を少し和らげます。


こうして、精子の0.0001%未満に相当する数百の精子のみが子宮腔を通過。


そこから経路は2つに分岐します。


この時、母親の免疫細胞は間違った方向に進む精子などをすべてからめとってしまうそうです。


これらの障壁を乗り越えたわずか数十の精子が、母体の卵子にたどり着きます。卵子は精子よりも1万倍も大きく、栄養素と細胞の原動力であるミトコンドリアを約10万個(平均的な細胞の50倍)も保有しています。


簡単に精子と卵子が受精するわけではありませんが、最終的に卵子は精子のひとつを受け入れます。


これにより父親と母親の遺伝子が融合。卵子は母親の一部ではなくなり、別の何かになります。独自の目的を持った新しい存在ですが、これはまだ人間とは言えません。


精子が卵子と受精してから数日間で、卵子は急速に分裂して数百の細胞に成長します。


その後、女性の生殖器系の一部である子宮まで移動し、そこに新しい住処を作るべく挑戦するそうです。


受精卵は細胞分裂を経て胚盤胞になり、2つの別個の存在に分裂し始めます。ひとつは最終的に赤ちゃんになる内部細胞塊(黄色)で、残りは栄養外胚葉(緑色)です。栄養外胚葉は母親の胎内で一時的な臓器、つまりは胎盤に変化します。


胎盤は妊娠を可能にしますが、最終的に死滅してしまいます。そのため、Kurzgesagtは「あなたが胎児だった時、あなたには双子よりももっと近い、クローンの守護天使のような別の存在がいたというわけです」と表現しました。


ここから数日間は、新しい命にとって最も危険な日々となります。シロップの中を転がるテニスボールのように、胚は子宮の中を流れます。


胎児と母体の間で激しい反応対話が始まり、胚は自身の存在を知らせるために数十種類の化学物質を放出。この化学物質を通し、胚は子宮壁の細胞に「生き残るために子宮に接着させて欲しい」と頼み込むわけです。


子宮側は数十種類のホルモンと免疫シグナルでこれに反応。化学反応の質に満足すれば細胞はこれを許容。そうでない場合、胚は拒絶され着床できず死を迎えます。


妊娠には膨大なエネルギーが必要なため、母親の身体が「胎児は生存可能ではない」と判断した場合も、胚は排出されます。一方で、胎児は生死の危機に直面しながら、いかなる犠牲を払ってでも生き続けようとします。丁寧にやり取りするわけではなく、何千もの侵入ユニットを展開し、生存の道を模索することもあるわけです。


この侵入ユニットとは、遺伝物質で満たされた泡のようなものです。これは人間の発するウイルスのようなもので、子宮細胞を洗脳することで、子宮細胞が胚を拒絶するのではなく受け入れるようにします。


この時期に妊娠の最も奇妙な特徴のひとつ、子宮乳の排出が起こります。子宮乳は子宮から分泌されるもので、本物の乳ではなく、栄養素とホルモンに満ちた透明な液体です。


胚は体内に入るための追加のエネルギーを得るため、貪欲に子宮乳を吸い上げます。胚が子宮に付着することに成功(着床)するまでが、最初の大きな障害であるためです。


次のステップは母親の血管に到達することです。飢えたくないのであれば、それが生き残る唯一の方法と言えます。


栄養外胚葉は大規模に自分自身を複製し始め、さまざまな専門家に変化します。そのうちのひとつは凶暴な侵入者となり、たくさんの腕を持つ小さな寄生タコのように子宮組織に穴を開け、広がり、成長します。これは残酷なプロセスで、母親の子宮細胞に自己破壊を命じ、他の細胞を直接殺したり、一部の細胞を丸ごと食べてしまったりすることもあるそうです。ただし、このプロセスは厳しく規制されているため、母親に害はありません。


母親の身体は胎児が急速に成長しているか、落ち着いているかなどを注意深く監視します。胚に遺伝子損傷や染色体異常がある場合、自己修復に多大なエネルギーを費やすこととなるため、成長が不規則になる可能性があるそうです。


これにより代謝が活発になり、母親から免疫細胞が受け取る化学物質が大量に放出されます。これにより受精卵が破壊される可能性が高くなり、胎児が弱い場合は実際に死んでしまうそうです。


ここまで説明したように、母親の身体は胚を助け、成長をサポートし、免疫システムを活性化するために、さまざまな化学物質を大量に放出します。通常、これは体内に入り込んだ母体とは関係のない細胞にとっては悪いことです。理由は、免疫系は母親の身体の一部ではないものをすべて殺してしまうためです。


胎児は明らかに母親の一部ではありませんが、子宮の免疫細胞は胚を取り囲み、T細胞などの危険な免疫細胞が近づけないように物理的および化学的に安全ゾーンを作成します。


胎児側も母親の善意に頼りきるわけではありません。防御的な栄養外胚葉は、胎児に近づいて攻撃を始める可能性がある母親の免疫細胞を殺すための信号を送ります。


さらに、胚からは何百もの細胞が放出されます。この胚を離れた細胞は、母親の身体中に広がり、臓器、脳にまで入り込みます。


これらの細胞が一体何をしているのかは明らかになっていませんが、母親の免疫系に「胎児は攻撃されてはいけない」と伝えているのではないかと考えられています。これらの細胞は母親の体内で何年も、あるいは何十年も留まることがあるそうです。


卵子が受精してから約8週間後、胚から胎児への移行が始まります。初め、胎児はオリーブの実ほどのサイズで、臓器が形成され始め、「細胞の塊」から「人間のようなもの」に変わるそうです。


細胞の塊が人間になる明確なタイミングはなく、流動的な移行であるとKurzgesagtは説明しました。


栄養外胚葉は子宮の奥深くまで広がるスポンジ状の指のような構造となっており、胎盤の構築にせわしなく取り組みます。


胎盤は母体で成長したあと、胎児が生まれると体外に排出されます。それ以前、胎盤は胎児の新しい住処あるいは要塞として機能します。また、胎児を死に至らしめる可能性のある微生物から守るための役割も担います。


胎盤には独自の小さな免疫システムすらあります。他の胎盤細胞は母親の血管の内側に沿って進み、血管を伸ばして反対側の臍帯を通して胎児をつなぎます。胎盤は胎児にブドウ糖を直接送り込むホルモンを放出し、母親からエネルギーを奪います。胎児がエネルギーを過剰に要求すると、妊娠中の母親の身体がエネルギー不足に陥り、妊娠糖尿病を引き起こすことがあるそうです。


母親の身体は新しい命を支えようとしますが、自分自身の生存を犠牲にするわけではありません。胎児の中の母親の遺伝子は、胎児よりも母親に対してより強い忠誠心を持っているというわけです。一方、父親の遺伝子はそうではありません。どんな犠牲を払ってでも胎児が生き残ることを望んでいます。そのため、胎児の中の遺伝子は、双方がそれぞれ適切な対処を求めているとKurzgesagtは説明しました。


これらのプロセスを経て赤ちゃんは誕生するため、Kurzgesagtは「生きた人間は、驚くほど過酷な選別プロセスを経験したことになる」と表現しています。

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in 動画,   サイエンス, Posted by logu_ii

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