手首が痛くなりにくい新形状のマウスが開発される

PC操作に欠かせないマウスは、手首を支点にして動かすことが多いため、長時間使用していると手首に違和感が生じたり、腱鞘(けんしょう)炎になったりと手首を痛めてしまう場合があります。トラックボール式のマウスや、人間工学に基づいたデザインのマウスもありますが、手首の動きを軽減する設計としては根本の問題が解決していません。スウェーデンのロイヤル工科大学のホセ・ベレンゲレス氏が発表した論文では、徹底的に手首の痛みを解決するための新しいマウスデザインが開発されています。
Flexible Ergonomics: Can a Flexible Mouse Fix That Wrist Pain? | ACM Interactions
https://interactions.acm.org/archive/view/september-october-2025/flexible-ergonomics-can-a-flexible-mouse-fix-that-wrist-pain

Farewell to the computer mouse? Bizarre new designs could reduce wrist injuries, scientists say. | Live Science
https://www.livescience.com/technology/computing/farewell-to-the-computer-mouse-bizarre-new-designs-could-reduce-wrist-injuries-scientists-say
PCをよく使う人は、マウスを動かしている時間が特に長くなっており、「キーボードよりマウスを触っている時間の方が3倍長い」という研究もあります。マウスを使っている時の痛みは、手首や指など特定の部位の反復的な動きが筋肉や腱(けん)、神経にダメージを与えて痛みやしびれを生じさせる「反復性運動障害」に関連していることが多いとされています。研究者たちによると、人間工学に基づいたマウスやトラックボールは、反復運動性運動障害の問題が解決されていないとのこと。

そこでベレンゲレス氏らは、一般的なマウスの形状から大きく逸脱した2つのマウスデザインを提案しました。
ひとつめは、本体がメッシュになった以下のマウス「Fleximouse」。研究者らは、マウス使用時の痛みや不快感の主な原因は、ほとんどのマウスの設計が「硬い外殻を備えている」という点にあると指摘しており、Fleximouseは柔らかく変形する素材になっています。

Fleximouseの使用イメージは以下の通り。柔らかいメッシュ部分を指先でぐにぐに動かすことで、光学式トラッキングヘッド部分が動いて、手首を固定したままポインタを動かすことができるという仕組み。Fleximouseは手首をまったく動かさないというわけではありませんが、手首を動かさずにカーソルを動かせる範囲が通常のマウスより拡大していることで、手首の位置を調整したり持ち上げたりする回数を大幅に減らしています。

Fleximouseは手首への負担を減らす代わりに、可動部分が多いことで壊れやすいほか、通常はマウスの裏面にある光学式トラッキングヘッドが前方に飛び出しているため、サイズが大きくなっているという問題がありました。そこでベレンゲレス氏は、オーストラリアの建築や建設系の研究機関であるメルボルン・スクール・オブ・デザインのトニー・ユー氏と協力し、実際に製造することを考慮した設計に進化させました。
そうして完成した試作機が「A-frame hinge mouse(Aフレームヒンジ式マウス)」です。Aフレームヒンジ式マウスは一般的な机に寝かせる形ではなく、A字型に立ちあがったフレーム構造です。平らな姿勢から立った姿勢になることで、占有面積を減らせているだけではなく、マウスを使う時に前腕にある2つの骨が交差する状態が改善され、痛みが生じにくくなっているそうです。

FleximouseとAフレームヒンジ式マウスは、マウスを頻繁に使用するゲーマーを含むスウェーデン王立工科大学の学生28人によってテストされ、フィードバックが集められました。フィードバックは賛否両論で、手首を頻繁に動かさなくていいことを実感してFleximouseを「遊び心のある新しいマウス」と評価した学生がいた一方で、操作スピードが25%ほど低下するという問題や、スクロールホイールなど使い慣れたマウスの機能がないのは物足りないという意見も挙がりました。また、Aフレームヒンジ式マウスはフィット感にも問題があり、手の大きさのわずかな違いがグリップの快適さや自然さに影響を与えることを研究者たちは発見しています。
新しいマウスデザインは痛みや不快感の主な要因である「手首の動作」を大幅に軽減したことが認められた一方で、握りやすく調整可能にするなど柔軟なデザインを微調整する方法がさらなる課題として求められています。研究チームは「PCのマウスを、衣服と同じようにカスタマイズしてパーソナライズするというアイデアが、現実に近づいています」と語りました。
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in ハードウェア, サイエンス, Posted by log1e_dh
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