ミツバチの飛行距離を伸ばすウイルスとは?

ミツバチのコロニーは、しばしばウイルスによって壊滅してしまうことがあります。このウイルスを調査した研究で、ミツバチの飛行距離を伸ばすようなウイルスが存在することが明らかになりました。
Inapparent virus infections differentially affect honey bee flight | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adw8382

Hidden honey bee viruses alter flight distance and speed in different ways
https://phys.org/news/2025-08-hidden-honey-bee-viruses-flight.html
ミツバチに感染するウイルスのほとんどはピコルナウイルス科と呼ばれる科に属するウイルスです。口蹄疫ウイルスやA型肝炎ウイルスなど、日々のニュースでよく聞くウイルスもこの科に分類されます。
特にミツバチに感染しやすいものとして、感染することで羽根が変形してしまうチヂレバネウイルス(DWV)や、幼虫に感染して体と表皮の間に液体を生じさせてしまうサックブルードウイルス(SBV)などが挙げられます。こうしたウイルスの影響で、しばしばコロニーが壊滅してしまいます。

こうしたウイルスは、目に見える変化を宿主に与えないまま感染が拡大することがあり、気づいたときには手遅れになってしまうことがあるそうです。そこで、モンタナ州立大学のナオミ・G・カク氏らは、「ウイルス負荷の高いミツバチは一見無症状に見えても生理学的に悪影響が及んでおり、個体の飛行距離がミツバチの健康状態を示す指標となる可能性がある」という仮説を立てて調査を行いました。
カク氏らは、DWVやSBVに感染したミツバチと、意図的にウイルスに感染させたミツバチを集め、それぞれのウイルスに感染したミツバチの飛行距離が異なるのかどうかを測定。その結果、DWVに感染したミツバチは感染していないミツバチよりも飛行距離が短くなり、SBVに感染したミツバチはより高速で長距離を飛行することが判明しました。
実験から得られたデータで予測すると、DWVのレベルが高いミツバチの飛行距離は平均49%短くなり、SBVのレベルが高いミツバチの飛行距離は53%長くなるとのこと。また、DWVとSBVの両方に感染したミツバチは、何も感染していないミツバチに比べて飛行距離が短くなるものの、DWVのみに感染したミツバチよりは長く飛行することが分かったそうです。

飛翔はミツバチにとって最も代謝コストのかかる行動であることから、DWVに感染するとエネルギー負担が大きくなって採餌能力が低下してしまう可能性があるとのこと。これにより、特定の規模のコロニーでは餌が減少し、栄養ストレスからコロニーが崩壊するおそれがあるとのことです。一方でSBVに感染したミツバチは活動範囲が広がり、感染が拡大する可能性があります。
カク氏らは「個体の行動や健康に影響を与えるウイルスが、コロニーだけでなく生態系レベルに影響を及ぼす可能性があることを示しています」と述べました。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1p_kr
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