サイエンス

ランニングは膝に悪影響を与えるのか?ランニングを始める際の注意点は?


ランニングはカロリー消費心身の健康増進において非常に有益な運動ですが、「ランニングをすると膝を壊すリスクがある」と聞いて不安に思っている人もいるかもしれません。南オーストラリア大学で運動科学の講師を務めるハンター・ベネット氏が、「ランニングが膝に長期的なダメージを与えるというのは本当か?」という疑問について解説しています。

Does running ruin your knees? And how old is too old to start?
https://theconversation.com/does-running-ruin-your-knees-and-how-old-is-too-old-to-start-261575


ベネット氏は、「ランニングは比較的衝撃の大きい運動です。走っている時に足が地面に接触するたびに、体は体重の2~3倍に相当する力を吸収します。この負荷が膝に直接かかるのは容易に想像できますし、実際にその通りです。膝は歩く時よりも走る時の方が3倍もの負荷を吸収します」と述べています。

しかし、確かにランニングは膝に強い負荷をかける運動であるものの、それは決して悪いことではないとのこと。むしろランニングによって膝をより強く、より健康に保つことができるかもしれないそうです。


「人間の骨や軟骨は歩いたり走ったりして負荷がかかるほど消耗する」と考えている人もいるかもしれませんが、人間の体はそうではありません。むしろ、かかる負荷に応じて成長して適応する、生きたダイナミックなシステムであり、機能し続けるには負荷が必要だとベネット氏は主張しています。

もともと人間の膝関節は非常に強く設計されています。膝関節内部の軟骨は強くて柔軟性のある結合組織であり、一種のクッションとして機能して膝関節の骨を保護してくれます。長期間にわたってベッドで安静に、あるいは固定された状態で過ごすことで、軟骨が劣化し始めるという証拠もあります。


確かに、ランニングをすると一時的に膝の軟骨の厚みが減少することが示されていますが、ランニングを終えてから数時間後には軟骨の厚みは元に戻ります。研究者らはこのプロセスが軟骨への栄養素の取り込みを促進し、軟骨の適応と強化に寄与する可能性があると考えています。

この考えを裏付ける証拠としては、ランニングをする人はしない人と比べて膝の軟骨が厚い傾向があるとの研究結果や、ランニングをする人の方が骨密度が高いとの研究結果が挙げられます。また、走る量が多いほど変形性膝関節症の発症リスクが低くなる可能性も示唆されていますが、これを裏付けるにはさらなる研究が必要とのこと。

これらの研究結果は、いずれもランニングが膝の健康と寿命にとって好影響をもたらすことを示しています。ランニングは心血管系や代謝の健康にもいいことを考慮すれば、ランニングはした方がいいといえます。


中には、「ランニングを始めるには年をとりすぎているから」と考えて、ランニングに及び腰になっている人もいるかもしれません。しかし、2020年の研究では高強度ジャンプトレーニングを始めた65歳以上の高齢者で、筋力と機能の向上がみられるだけでなく安全で楽しいと感じることが示されました。

高強度ジャンプトレーニングはランニングよりもはるかに膝関節への負荷が高いことを考慮すると、高齢になってからランニングを始めても問題はなく、安全かつ効果的であると考えられます。とはいえ、他の新しい運動やスポーツを始める時と同様に、筋肉や関節は与えられる負荷に適応するのに時間がかかるため、まずはゆっくりとしたスピードでランニングを始めるべきです。

ベネット氏は、「これを念頭に置いて、最初は短い距離を歩き、次に短い距離をジョギングするインターバルトレーニングから始めるのが最適です。その後、徐々に走る距離を伸ばし、 体が慣れる時間を与えましょう」とアドバイスしました。
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ランニングが膝関節にダメージを与えるという悪評が消えないのは、実際に多くのランナーが何らかのケガを負っており、その中でも膝関節のケガが最も多いためだと考えられます。しかし、これらのケガはあくまで「オーバーユース(使い過ぎ)」によるものであり、ランニングそのものではなく、負荷を管理できずに走り過ぎてしまうことが原因です。そのため、適度な負荷でのランニングを心がけることでケガを防止できます。

ベネット氏は安全かつ効果的なランニングをするポイントとして、以下の3点を挙げています。

1:ゆっくりと走ることから始めて、急激に走る量や頻度を増やさない。走る距離を増やす際も、週に2km以上は増やさないようにする。

2:ランニングは多くのエネルギーを消費し、体の回復にもエネルギーが必要なため、十分な食事をとることを心がける。十分な炭水化物とタンパク質を摂取することは、疲労骨折などのケガの予防に役立つ可能性があるほか、十分なカルシウムとビタミンDを摂取することも同様の効果があると示唆されている。

3:芝生の上を走ると、コンクリートなどの硬い路面を走る時よりも衝撃が少ないため、ランニングを始めたばかりの頃は週に2、3回芝生の上を走ると負荷に慣れるのに役立つ。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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