「火星に生命が存在した可能性が非常に高いことを示す証拠」を発見したとNASAが発表

NASAの火星探査車「パーサヴィアランス」が2024年に発見した鉱物から過去に生命が存在した可能性が示唆された件について、NASAは過去の生命の痕跡である可能性を示す「潜在的生命指標(potential biosignature)」であるという評価を下したと発表しました。分析結果をまとめた論文は、2025年9月10日に科学雑誌のNatureで発表されました。
NASA Says Mars Rover Discovered Potential Biosignature Last Year - NASA
https://www.nasa.gov/news-release/nasa-says-mars-rover-discovered-potential-biosignature-last-year/
Redox-driven mineral and organic associations in Jezero Crater, Mars | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-025-09413-0
Researchers uncover potential biosignatures on Mars – Texas A&M Stories
https://stories.tamu.edu/news/2025/09/10/researchers-uncover-potential-biosignatures-on-mars/
2024年にパーサヴィアランスが発見した鉱物については、以下の記事を読むとよくわかります。
NASAの火星探査機パーサヴィアランスが「生命の痕跡」を示唆する岩石を発見 - GIGAZINE

今回の論文で新たに明らかになったのは、有機炭素を含む泥岩の中に、酸化還元反応によって生成されたと考えられる特定の鉱物の集合体を発見した点です。パーサヴィアランスは、ジェゼロクレーターの西端にあるネレトヴァ渓谷の「ブライトエンジェル(Bright Angel)」と呼ばれる地層で調査を行いました。ここでパーサヴィアランスに搭載された分析装置が、鉄やリン、硫黄を豊富に含む泥岩を発見しました。
特に重要視されているのは、この泥岩の中で見つかった2種類の特徴的な構造です。一つは「ポピーシード(poppy seeds)」と名付けられた直径1mm未満の団塊で、もう一つは「ヒョウ柄の斑点(leopard spots)」と呼ばれる直径数mmの反応面です。詳細な分析の結果、これらには第二鉄リン酸塩と硫化鉄という鉱物が豊富に存在することがわかりました。

地球上では、多くの微生物がエネルギーを得るために、酸素の代わりに酸化鉄(錆)や硫酸塩を利用することが知られています。鉄を利用する微生物は第二鉄リン酸塩を、硫酸塩を呼吸する微生物は硫化鉄を副産物として生成することがあります。
今回発見された鉱物は、有機炭素やリン、硫黄が豊富な泥岩の中に存在していました。これらは微生物にとって格好のエネルギー源となり得ます。さらに、鉱物の分布や形状は、それらが周囲の有機物を利用した化学反応によってその場で生成されたことを示唆しており、微生物がエネルギーを得る代謝活動とも一致します。
さらに、生命の痕跡説を強力に裏付けているのが、これらの反応が起きた環境です。岩石の分析から、鉱物が発見された場所には高温にさらされた形跡がないことがわかりました。仮に非生物的なプロセスで硫化鉄を生成する反応だった場合、150℃から200℃といった高温を必要とします。低温環境下でこれらの鉱物が生成されたことを非生物的なプロセスだけで説明するのは困難だとNASAは述べています。
NASAジェット推進研究所(JPL)の研究者であるケイティ・スタック・モーガン氏は「宇宙生物学的主張、特に過去の地球外生命の発見の可能性に関連するものには、並外れた証拠が必要です。火星で潜在的な生命指標というこれほど重要な発見を査読済みの論文で発表することは、我々の結果の厳密性、妥当性、そして重要性を保証するため、科学的なプロセスにおいて極めて重要なステップです」とコメントしました。
今回発見された鉱物は、科学的信頼度を評価する生命検出信頼度(CoLD)スケールにおいて「その環境において、信号を生成しうる既知の非生物学的な原因がすべてもっともらしくないことが示された」に当たるレベル4に近いものといえます。ただし、非生物学的な原因が完全に排除されたわけではないので、今後の研究はCoLDスケールレベル4の確信度を固めることが目標となります。

モーガン氏は「論文の調査結果を踏まえると、ブライトエンジェルで観測された事象に対して生命が介在しない可能性は低いものの、それを排除することはできません」と語っています。テキサスA&M大学の地質学者で論文の共著者でもあるマイケル・タイス氏も、「今回発見された鉱物が非生命的に成立したという可能性を完全に排除するために、地球上での実験、そして最終的には実験室でのサンプル研究を必要とします」と語りました。
なお、パーサヴィアランスはこのブライトエンジェル地層の「シェヤバフォールズ(Cheyava Falls)」と呼ばれる岩石から「サファイアキャニオン(Sapphire Canyon)」と名付けられたコアサンプルを採取済み。このサンプルを将来のミッションで地球に持ち帰り、より高性能な装置で分析することで、生命の痕跡であるかどうかの最終的な結論に近づくことが期待されています。
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in サイエンス, Posted by log1i_yk
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