脳内の特定のたんぱく質の増加が認知能力低下につながっている可能性

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームにより、脳の老化に特定のたんぱく質が重要な役割を果たしている可能性があることがわかりました。研究チームはこの研究の知見が、アルツハイマー病などの神経変性疾患に対する治療法の解明につながることを期待しているとのことです。
Targeting iron-associated protein Ftl1 in the brain of old mice improves age-related cognitive impairment | Nature Aging
https://www.nature.com/articles/s43587-025-00940-z

This Protein Slows the Aging Brain, and We Know How to Counter It | UC San Francisco
https://www.ucsf.edu/news/2025/08/430551/protein-slows-aging-brain-and-we-know-how-counter-it

Switching Off One Crucial Protein Appears to Reverse Brain Aging in Mice : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/switching-off-one-crucial-protein-appears-to-reverse-brain-aging-in-mice
脳の中で「海馬」と呼ばれる領域は、記憶と学習に関与していて、加齢に伴う能力の衰えが著しい領域の1つです。
研究チームは、マウスの海馬が加齢とともにどのように変化するかを調査。年を取り、海馬の脳細胞間の結合が減って認知能力が低下したマウスでは、若いマウスと比べ、「FLT1」というたんぱく質の量が増加していることを発見しました。「FLT1」は体内の鉄の貯蔵に関連していることが知られていますが、脳の老化との関係はまだ解明されていません。
研究者らが若いマウスの「FLT1」の量を人為的に増やすと、マウスの脳や振る舞いは年を取ったマウスに似ていったとのこと。
以下左の画像は、シャーレで人工ニューロンを成長させ、神経突起が分岐する様子を示したもの。しかし、ニューロンが「FLT1」を多く生成するよう操作を加えると、神経突起ははるかに単純な形状になり、分岐もほとんどしなくなった(右画像)とのこと。

一方、年を取ったマウスの「FLT1」の量を減らしたところ、若さを取り戻して、神経細胞間のつながりが増え、記憶力検査でも成績が向上しました。
研究の責任著者でベイカー加齢研究所副所長のサウル・ヴィレダ博士は「これはまさに、機能の逆転です。単なる症状の遅延や予防を、はるかに超えたものです」とコメントしています。
なお、年を取ったマウスの「FLT1」量を増やすと海馬の細胞内の代謝も遅くなりましたが、代謝を刺激する化合物で細胞を処理すると影響は防がれたとのこと。
ヴィレダ博士は、今回の研究が脳内の「FLT1」の効果をブロックする治療法につながる可能性があるという見方に楽観的で、「老化生物学の研究に携わるには、希望に満ちた時代です」と語っています。
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in サイエンス, Posted by logc_nt
You can read the machine translated English article Increased levels of certain brain protei….







